2020年3月20日金曜日

「天声人語」は挨拶なり


久しぶりに会った相手と、初めて会った相手との間でなす最初の手順は、取りあえず挨拶することだろう。
そして、その挨拶する際になされるのが、天候やお互いの体と世の中の様子を含めて、一般的には握手だ。
互いに手を握りあって、目を見つめ合う。
そのことについて、下の「天声人語」ではあれよこれよと著している。
この天声人語にある挨拶で、私には想像もつかないものが含まれているが、それはそれで楽しくさせてもらおう。
そして、ネットでもその類の事に触れたものを見つけ列挙してみた。
決して、この文章だけでは事を為(な)していないことは十分理解のうえだ。

・ハグ(抱擁)とは、互いに腕で抱きしめ合うこと。
ハグは典型的には、愛情の表現として行われる。
また、親密さ、友情などを表し伝える手段である。
喜びで心が温まってハグをする場合も、辛い悲しみに打ちひしがれてハグする場合もある。
・お辞儀は、相手が離れた位置なので、頭を前方下に傾けたり、上半身を前に傾ける。
・額や頬を相手のそれに合わせる。
外国ではよく行われることだ。
私のような大学でのクラブ活動の部友に久しぶりに会ったときには、まるで恋人たちのように、顔をぶつけ合うほどに近づいて挨拶する。
・唇を相手の体に触れさせる、一般的には接吻のことだ。
その触れさせる場所によって意味が異なり、顔であれば抱擁の上で行われる。
・挙手、これは遠くの相手に対して合図や意思表示のために手を挙げること。
右手を開いて指をそろえ、帽子のひさしの右端にあげて、相手に注目する。
帽子、ヘルメットをしている際に行う。
・警察や軍隊では「敬礼」と呼ばれる特殊な挨拶。
一般的には下位の者が上位の者に対して行う動作を指し、受礼者たる上位の者はこの「敬礼」に対し「答礼」で応え、また同位の者でも相互に「敬礼」を交換し合う。
拱手(きょうしゅ)中国での敬礼。
中国の敬礼で、両手の指を胸の前で組み合わせてお辞儀する。
「拱手傍観(きょうしゅぼうかん)」という言い方があるので、その意味を書く。
重大な事態に当然なすべきことがあるのに、何もしないことに批判を込めて用いることが多い。



20200307
朝日新聞の天声人語より

英国への留学を控えた夏目漱石は、手のあぶらを取るための白い粉を持っていた。
西洋に行くとそんなものが必要なのかと友人の高浜虚子に聞かれ、こう答えた。
「貴婦人と握手するなどする時には膏(あぶら)手では困りますからね」

虚子の『漱石と私』に出てくる逸話からは、洋行に気負い、西洋の習慣を強く意識する姿が伝わってくる。
漱石の時代もいまも、握手の習慣は欧州で根強いものの、最近は新型コロナウイルスに揺れているようだ。

握手、さらには親しい人とのハグなどを法律で禁じる。
そんな方針をイタリアの首相が決めたという。
感染者がにわかに増えたこの国では、日常のふるまいで放っておけなくなったようだ。

握手に代わる挨拶をどうするかは欧米全体で話題になっている。
米誌ニューズウィークのウェブ記事がSNSでの声をまとめていた。
「胸に手をあててほほえむ」「お互いの足を優しく蹴り合う」など色々知恵がある。

お辞儀も提案されていた。
ただし日本式でなく「ナマステ(こんにちわ)」と言いながらのインド式である。
異文化も含め、親愛を示すのに良いしぐさはないかと探すのは、人がつながりを求める生き物いだからだろう。
それを断ち切ろうとするウイルスの酷薄である。

日本で握手の習慣といえば選挙であろう。
始まったばかりの熊本県知事選では、候補者による握手が影を潜めるという異変が起きている。
まさか漱石のあぶら取りならぬ手の消毒を、1回ごとにするわけにもいかないし。