東京演劇アンサンブル創立60年記念公演Ⅱ
題名は、「無実」なり
20140911 19:00開演
デーア・ローアー/作 三輪玲子/訳 (論創社刊『無実・最後の炎』より)
公家義徳/構成・演出
音楽/坂上真清 熊地勇太
舞台美術/池田ともゆき
照明/大鷲良一
映像/高橋啓祐
衣裳/稲村朋子
音響/勝見淳一
振付/菊地尚子
宣伝美術/久保貴之 奥秋圭
舞台監督/入江龍太
制作/小森明子 太田昭
現代ドイツ語圏演劇を代表する劇作家
デーア・ローアーの日本初演。
2013年『忘却のキス』につづき、
公家義徳が挑む。
盲目のダンサー・アプゾルートと
不法入国者ファドゥールのラブ・ストーリー。
エリージオは友人ファドゥールとともに
砂の国からやって来た、不法入国者。
ふたりの目の前で、赤毛の女が海に入って自殺した。
盲目の両親は娘にも完璧な世界をプレゼントしたくて、
盲目のアプゾルートを産んだ。
アプゾルートは「ブルー・プラネット」で踊るダンサー。
通り魔事件の犯人の母を名乗るハーバーザットは、
被害者の家を訪ね歩く。
ローザとフランツの狭い部屋に、
ローザの母ツッカーが押しかける。
フランツがやっと見つけた仕事は遺体処理係。
ツッカーは糖尿病末期で、足を、視力を失いつつある。
フランツはローザを見ない。
哲学者エラはテレビの大統領を眺めながら、
夫のヘルムートに
「世界の不確実性」について語りつづける。
運命なんてない
私たち自身で決める以外に。
だけど決めるべき方向を、
私たちは知り得ないから、
私たちは盲人…
出演
エリージオ (黒人の不法入国者) 大多和民樹
ファドゥール(黒人の不法入国者) 小田勇輔
アプゾルート(盲目のダンサー) 永野愛理
ミセス・ハーバーザット(身寄りのない女) 志賀澤子
フランツ(遺体処理係) 尾崎太郎
ローザ (その妻) 奈須弘子
ミセス・ツッカー(ローザの母) 真野季節
エラ (老いゆく女性哲学者) 原口久美子
ヘルムート(その夫、金細工師) 篠澤寿樹
殺された少女の父 竹口範顕
殺された少女の母 町田聡子
自殺者1 篠原祐哉
自殺者2 志賀優寛
若い男の医者 三木元太
大統領 本多弘典
2014年9月11日(木)~21日(日) ブレヒトの芝居小屋(西武新宿線・武蔵関駅より6分)
■全席自由 (チケット申込・発売時に整理番号発行)
■開場は開演の30分前/整理番号順の入場
■料金 前売一般3800円 前売学生3000円 Low Price Day2500円
■チケット申込 東京演劇アンサンブル TEL:03-3920-5232 FAX:03-3920-4433 ticket@tee.co.jp
私のからだのなかの無数のひとりの人間が
いっせいにしゃべり始めるのを感じる ー
なぜ、「無実」UNSCHULD は海から始める必然性があったのか?おそらくこの作品において、作家デーア・ローアーDea Loher は、誰にも見られず聞かれなかった海の底に沈んでいた元々一つであった分割不可能な詩を、あえて、人間の声たちに配置して書いてみせたのではないだろうか。そんなことを考えた。(私のからだのなかの無数のひとりの人間がいっせいにしゃべり始めるのを感じる、と、小田実は自らの体験について語っていた。) 「無実」のテーマは人間である。ところで孤立した<われ>が中心となる資本主義のなかの闇であれ、<われわれ>を言い続けるコミュニズム(スターリニズム)の光のなかであれ、恒久的であると信じられる国家、家族、財産、地位、健康に、たえずまもられ眠らされ目をそらされている。しかしそれにもかかわらず、この意識の底にある不安とは、人間を窺い、人間を離そうとはしない。世界の不確実性にまき込まれて無力となった無数のひとりの人間が、巻き込まれることに歯止めをかけつつ、巻き込まれながらまき返す手立てを模索している。と、このデーア・ローアー の「無実」 を演出することになったのは、公家義徳氏。かれの「忘却のキス」から持続する一貫した問題意識があらたにどのような表現として構成されてくるのだろうか。東京演劇アンサンブルの待ち遠しい秋の公演。大いに期待している!(本多敬)