2020年6月19日金曜日

新入生に贈る挨拶

新入生の皆さんへ  


   早稲田大学・田中愛治

「早稲田学報」は早稲田大学校友会が、毎奇数月の15日、年6回発行されるコミュニケーション誌である。
その本のなかで、早稲田大学の総長の入学生に対する挨拶があった。
その総長の挨拶で私は、不思議なことに深く感動してしまったことが、この文章を書くことになった理由です。

早稲田大学の総長として、大学の新入生に向かって話したいことを文章にしていた。
早稲田大学が担っている使命とは何でしょうか。
早稲田大学には、三つの重要な使命があります。
第一は、皆さんに質の高い教育を提供することです。
これは、本学の最も基本となる使命です。
第二は、教育を支えるために必要な、高いレベルの研究を維持することです。
それは、今日のような厳しい環境でも、継続すべき使命なのです。
第三は、学生の皆さんが安全に安心して学べる環境を提供することです。

そのため早稲田大学では、教育の柱に、「たくましい知性」を育み、「しなやかな感性」を養う、という二つの指針を据えております。

★「たくましい知性」とは、一言で言えば「正解のない問題に」挑戦していく知性です。
今日、世界でも日本でも、人類が直面している問題の多くには、正解がありません。
たとえば、現在、世界中を混乱に陥れている新型コロナウイルス、あるいは地球温暖化による集中豪雨や洪水、世界中で起こっている民族紛争など、これらをどのように解決すべきか。
多くの問題には、正解がありません。
したがって、今日では、こうした正解のない問題に対しても、自分なりの解決策を考え出す知性が必要になっている。
早稲田大学は、皆さんに、人類の未解決な問題に対しても、自分の頭で考え抜き、自分なりの解決策を打ち出す力を、養ってもらいたいのです。
私は、この力を「たくましい知性」と呼び、それを育む教育と研究を目指しています。

もう一つ大切なことは、「しなやかな感性」を養うことです。
今日では、日本のどんな地域に住んでも、どんな仕事に就いても、グローバル化の波に対応できるような、多様な視点を持つことが不可欠です。
日本で住んでも、海外で住んでも、異なる国籍、民族、言語、宗教、文化、性別、性的指向性、価値観を持つ人々の考え方を理解したうえで、人類社会が直面している問題の解決策を考えなければ、視野が狭くなります。
視野を広げるためには、異なる文化や価値観を持つ人々に接し、「しなやかな感性」を養う必要があります。
多くの留学生が学ぶ早稲田大学は、皆さんに「しなやかな感性」を養う環境を提供しています。
しかし、そのために最も効果的なことは、一度は自分の生まれ育った国の外に住み、異なる言語、文化、価値観を持つ人々と接することです。
種々の留学制度を持ち早稲田大学は、そうした環境を日本で最も整えている大学なのです。