2008年7月14日月曜日

「ピック病」って知ってました?

私の女房が興奮して、私に食って掛かった。「アパートに住んでいる南海さんね、あの人、ピック病じゃないの?」。
「ピック病? そりゃ、なんじゃ」。病名の差別的表現は慎まなくてはなりません。
この会話の発端は、どこにもある、ゴミ問題からなのです。
我が家の敷地は、東道路と南道路の角地です。私の家も、東向かいにある我社のアパートも、家庭ゴミを出す場所は決められていて同じ場所なのです。長年ゴミ置き場は、私の家の前の道路の南向かい側、Yさんの敷地に接している道路部分に設けられていた。
四つ角になっていて、誰もが利用しやすくて、格好のゴミ置き場だった。昼間、我が家の庭には今は亡き賢犬ゴンが居て、ゴミを襲うカラスに吼えては、追い散らして、周辺住民からは大層喜ばれたのです。他の地域のゴミ置き場がカラスや猫で荒らされても、私達のゴミ置き場は、比較的整然としていた。
そのゴミ置き場の清掃はほとんどがY夫人が行って、我が家人がヘルプしていた。
どこのゴミ置き場でも共通の悩みだと思うのだけど、やはりこのゴミ置き場も頭痛の種を抱えていた。心ない者が、決められた日ではなく、決められた時間でもなく、決められ分別方法でないやりかたで何もかもメッチャ苦茶にビニール袋に詰めて出す。決められた日でない時に出されたゴミや、決められた時間外に置かれたゴミは、、そこに置きっ放しになるので、猫やカラスが荒らす。汚いものが路上に散らかる。嫌な臭いがする。そんな時に、誰がその処理をするかというと、ゴミ置き場に接している敷地所有者・Y夫人の仕事になる。Y夫人には、なにもかも、負んぶに抱っこ状態になっていたのです。Y夫人は、なかなかの人格者で、呆れながらも、苦笑しながらも、時には怒りながら、清掃をしていただいた。我が家人も、気づいたときには手伝った。彼女に負担を掛けっ放しというわけにはいかない、と常々思っていた。
分別をきちんとされてないゴミは、有志が、やっぱりY夫人が、ヘルプは我が家人が、ビニール袋をひっくり返して区分するのです。そのゴミの中に捨てたであろう人物が特定できるような物証があれば、そのゴミを本人の住まいに届けるのです。注意書きを添えて。
それじゃ、Y夫人と我が家人以外の人は、どうだったのだろう。このゴミ置き場に、どのような関わりを持ちながら、今までやってきたのだろうか。
それは、何も無し。協力的ではなかった。そこに捨てる家庭が、申し合わせをして、掃除の当番などを決めるやりかたもあっただろうが、そんな気運は誰からも生まれなかった。
そんな日々が、少なくとも私が引っ越してからでも25年は経つのですから、相当長い期間こんな状態だったのです。
が、いつまでも、そういう訳にはいかなくなった。
やはり、他所の地域でもやっているように、捨てる家庭が申し合わせて、掃除の当番や、ゴミの置き場所を順番に交代しようということになったのです。
一大改革でした。
そして、今年の4月から、新しいゴミの置き場所が決められ、掃除当番はゴミ置き場の前の家の方が担当することになった。私の家を中心に、両隣20軒くらいの近所においては、シッカリ者で有名なご夫人がいらっしゃるお家が、ピンポン、当たったのです。くじは厳正に挙行された。今後は時計の針が廻る方向に一軒づつ隣りに移る。決定から移行作業は、円満に穏やかに進められた。
そんなある日のことです。
シッカリ者で有名なご夫人から、我が家の家人は呼び出しを受けたのです。決められた曜日のゴミではない物が混ざっていたと言う事だった。具体的には、私の住んでいる地域では、プラのゴミを出す日は木曜日なのに、プラの入っているビニール袋にプラでないゴミが大量に混じっていて、収集車が回収しないまま、放置されていたのです。当番のシッカリ者のオバサンは、袋の中をチェックした。ゴミは我社保有のアパートの住民の物と思われるので、家人は呼び出されたのです。アパートと我が家の関係は、近所の人なら誰でも知っている。シッカリ者のご夫人からは、アパートの住民に対して、きちんとルールが行き届いてないのではないか、もう少し真剣に住民に注意を徹底してくださいよ、家人は社長の代わりに怒られた。
我社のアパートには、外人が多く住んでいて、私も家人も神経過敏な程気を使っているのですが、外国人は私等ほどには真剣に考えていないようで、迷惑をかけたことはしばしばでした。ゴミの出し方を息子に頼んで、英文にしてもらい壁に張り出したり、ことあるごとに私が拙い英語で注意を促しているのです。可能な限り、たびたびです。
ところが、今回の犯人は、要注意の外人ではなく日本人で、かつ我社に長いこと在籍していた奴で、同じ注意を何回も何回もした奴なのです。アホじゃない。通常に仕事をしている奴なのです。
当番のシッカリ者のオバサンのお叱りが、ちょっとばかり威勢がよかったものだから、我が家人は頭に血が昇ったのでしょう、そこでこの稿の冒頭部分、女房が私に食って掛かってきたセリフになるのです。
「アパートに住んでいる南海さんね、あの人、ピック病じゃないの?」
何で、あなたがピック病なる病名を知っていたのかと聞くと、新聞の記事で知ったようなことを言っていた。
その新聞記事を紹介する。
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(080712) 朝日朝刊    (松本建造)
ピック病で万引き 救済へ障害年金 / 懲戒免職の元市課長に支給へ
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スーパーで万引きしたとして懲戒免職になった神奈川県茅ヶ崎市の元文化推進課長、中村成信さん(58)に対し、神奈川県市町村職員共済組合は10日までに、若年性認知症の「ピック病」による障害を認知し、近く障害年金を支給する。働き盛りでピック病などを発病し、万引きなどで失職する例は各地で起きている。今回の決定は、同様の事例の救済策となりそうだ。
中村さんは要介護2と認定されている。公務員共済制度の一つ「障害共済年金」に加入していたため、家族等が昨年、診断書などを提出。上部団体の「全国市町村職員共済組合連合会」の専門医が審査した結果、ピック病による障害が認定された。同連合会は「病名別の統計はないが、ピック病での認定例は聞いたことがない」としている。
中村さんは06年2月、自宅近くのスーパーでチョコレート4個とカップ麺3個(計3300円相当)を盗んだとして現行犯逮捕され、16日後に懲戒免職になった。その前から同じものを繰り返し買って帰るなどの行動があったため、家族が大学病院などで診察を受けさせたところ、若年性認知症の前頭側頭型認知症(ピック病)と診断された。
中村さんは茅ヶ崎市に懲戒免職処分の撤回を申し立て、市公平委員会で審理中だ。