(米メリーランド州エッジウッド)
氷点下の米東部地方を走り抜けた「オバマ列車」は、17日熱狂する市民に迎えられ、首都ワシントンに到着した。次期大統領のオバマ氏は敬愛するリンカーン元大統領の旅を再現した。起点は古都フィラデルフィアの南西に位置するデラウェア州ウィルミントン。特別仕立ての列車はスピードを落として走った。旅の途中で、幾度も列車から下りて、群衆に演説で応えた。そのどの演説の内容も、日本の政治家のものとは随分違うことに、驚かされた。演説では、大統領が民衆と共に政治をしたいと、民衆に応えたいと何度も繰り返す次期大統領。方や日本の首相は、夜な夜な高級ホテルのバーに、色んな人を呼び込んでは何を話しているのだろうか。人気取りを目論で居酒屋へ顔を出しては、チンプンカンプンの応答して、若者たちの失笑をかった。スーパーでは、主婦に首相の金銭感覚を馬鹿にされていた。公の場においても、私を悲しませる言辞は止まない。先日の坂本哲志総務政務官の東京・日比谷公園の「年越し派遣村」についての心無い発言は、なんじゃ。お前さんの心根は、腐っているぞ。他人の悲しみや喜びを理解できない、精神の貧困なこの馬鹿者共が!!
オバマ列車の新聞記事を読んだ後、ファイルしておいた、下の新聞記事を読み直した。これを対比するに、怒りよりも、情けなくなった。その記事は後の方で読んでください。
ここでは、先ずその演説の内容を、090109前後の朝日新聞の記事から抜粋してここに転載させていただいた。口から発せられるどの言葉にも、優しさや人間の温かさが伝わってくる。希望に溢れた、幸せな気分になれる。この気持ち良さを、彼を支持する人たちは思いっきり味わっていることだろう。私も確信をもって、アメリカの明日を信じたい。
*私たちは一日も休まず仕事をする。来月の交通費を心配する親や、汽笛を聞きながらより良い生活を夢見る子供たちのためにーーー
*今、必要なのは、イデオロギーや偏見からの新たな独立宣言だ。米国の革命は今も続いている。
*一緒にこの国を再生させよう。と叫ぶと人々は、イエス・ウイ・キャン、と繰り返した。
黒人解放の父と言われた、公民権運動指導者のキング牧師が
*私には、夢がある。I have a dream
*この国(アメリカ)は肌の色ではなく人格で評価される国。
の演説をしたリンカーン記念堂のリンカーン像前での就任前演説でも、
*私は、皆さんの声とともに、ここにやってきました。
*変化を求める無数の声を妨げることのできる障害など何もない。
就任前日、秒刻みのスケジュールの合間に、ボランティア イベントに出かけて行って、10代のホームレスの人たち用のシェルターの室内の壁のペンキ塗りの手伝いをした。ミシェル夫人は米兵らへの慰問物資の荷造りをした。バイデン次期副大統領は大工仕事に精を出した。実際の仕事の量はそんなには捗(はかど)らなかったことは当然だろうが、その志(こころざし)が、私の胸を高鳴らせる。ここでは、今日は多くを語りません、明日にとっておきたい、などと語っていた。そこで、就任演説の内容が楽しみだ。
かって、リンカーン元大統領は
*人民の、人民により、人民のための政治。
ケネディの演説は高校の英語の授業で、辞書を片手に感動した。
*国が皆さんのために何をできるのかを問うのではなく、皆さんが国のために何をできるのかを問おう。
アメリカ国民ならずとも全世界の人々が、私もオバマ氏の大統領就任演説を楽しみにしている。
(ワシントンのリンカーン記念堂前)
090109 朝日・朝刊
人の痛みと政治
窓・論説委員室から
《恵村順一郎》
「本当にまじめに働こうとしている人たちが集まっているのか」。坂本哲志総務政務官が、東京・日比谷公園の「年越し派遣村」について語った発言が波紋を広げている。そういえば、麻生首相の次の言葉が浮かんだ。
「たらたら飲んで、食べて、何もしない人の分のカネ(医療費)をなんで私が払うんだ」
いくら健康に気を配っている人でも、病気になることはある。「たらたら飲んで、食べ」たことだけが病気の原因ではない。だからこそ保険料で支える健康保険制度があることを、首相はどこまで肌身で感じているのだろう。
なであんなに多くの人々が派遣村で年を越さざるを得なかったのか、この冬、世界を襲った経済危機のためである。
どんなに働きたくても、いや応なしにクビを切られ、仕事と住まいを失った人たちがいる。個人の努力や真面目さではどうにもならない現実があることを、坂本氏はどれほど理解しているのだろう。
首相にはこんな発言もあった。
「自分が病院を経営しているから言うわけじゃないけれど(医師の確保は)大変ですよ。(医師は)社会的常識がかなり欠落している人が多い」
人手不足で過酷な勤務に耐えながら、日夜働く続ける医師はたくさんいる。医療崩壊を招いた政治の責任を、首相はどう感じているのだろう。
人の痛みや苦しみを受け止める想像力がない政治は、悲しい。
090120朝日・朝刊・政治
政態拝見/政治家の魅力・「オバマ流」生かせるか(ダイジェスト)
《星浩(編集委員)》
15日に都内で開かれたシンポジュウム「オバマの米国 世界どう変わるか」(東京新聞主催)での谷内正太郎・前外務事務次官の話だ。谷内氏は大統領選のある光景に注目する。集会でオバマ氏は、米国のイラク戦争を「間違った戦いだ」と非難した。すると、会場の女性が手をあげて「私の息子はイラクで戦死した。間違った戦争で犬死したのですか?」と質問。オバマ氏はすぐに壇上から駆け下りて、その女性を抱きしめ、語りかけた。「息子さんは米国のために命をささげた。私は息子さんを尊敬する」。会場からは大きな拍手がやまなかったという。「自分の気持ちを大衆に伝えるコミュニケーション能力という点で、オバマ氏は抜きん出ている。パニックにならず、冷静に対応する。残念ながら日本ではいまのところ、そういう政治家は見当たらない」というのが、谷内氏の結論だった。
渡辺善美元行革担当相は、官僚の天下りや定額給付金問題を独特の語り口で発信し、自民党を離れた。「けしからん男だ」(金子一義国交相)などと切り捨てずに、堂々と論争をすればよかった。どちらの理屈が国民の理解を得られるのか。競い合う姿が見たかった。麻生首相は「給付金を受取る高額所得者はさもしい」と言ったかと思うと、今度は「給付金を含めて盛大に使って欲しい」と軌道修正した。なのに、率直な説明がない。政治家としての魅力が感じられない理由がある。