2010年2月10日水曜日

葱(ネギ)で、血がさぁ~らさら

自分の健康については無頓着で、無配慮なこの私なのですが、ここに至って、体を気遣うようになったのは、やはり歳(とし)のせいだろうか。健康な体を気遣うと言ったって、さりとて、特別なことをしているわけではない。

健康に気をつけているその一つは以前のように酒の馬鹿飲みをしないこと、その二は睡眠時間をたっぷりとること、その三はよく歩くこと、その四は肉や脂類をできるだけ摂取しないこと、で、そして最後は葱(ネギ)をちょっと多い目に食うことなのです。まさに平凡な養生方法です。

この文章を綴る気持ちになったのは、下の天声人語に触発されたからです。私とネギのことを思いつくまま綴ってみた。

生家の周りの畑には、一年中ネギが植えてあった。なかでも、晩秋から初冬、夜露が降りる頃のネギは柔らかくて美味しかった。すき焼きや鍋物には欠かせなかった。家族の誰もが、すき焼きの肉にはいつまでも箸をつけないのに、ネギや白菜の葉物にはシャブシャブの感覚で、入れては直ぐに箸をつけたものです。ヌタ(ヌタってどんな言葉を使うのだろう)も好きだった。ヌタって皆さんはどんな料理かわかるだろうか、解らない人はメールをください。学校に入るために43年前に東京に来てから、大衆食堂などでも見かけたことがない。丁寧にレシピを家人に作ってもらいますから。ネギは朝昼晩の食事には、必ず何かにして食っていた。

多分、我が家でこの時期に収穫するネギほど美味なるネギは他所にはない。間違いなく40~50年前までは。日本中で私たち家族以外に、これほど美味なるネギを食した人はいなかったのではないか。鳥渡(ちょっと)、言い過ぎかなとも思うが、私の父のネギの育て方が、完全に違ったのです。

春に種を蒔いて小さく育った幼苗を、適度に間隔をおいて植えます。大きく成長して葱坊主ができると緑の部分を切って捨て、白い部分と根を掘り起こして夏頃まで小屋の軒先などにぶら下げて乾燥させておくのです。そして盛夏に、その乾燥させてあった根を植えつけるのです。このように栽培した方が、緑のサヤの部分に栄養がいっぱい蓄積されるのだと、父に教わった。宿根草なのです。その根から新しく緑の部分が成長してきたころに、夜露が降りるのです。これを、私たち一家は頂いていたのです。恒例で開かれる農業協同組合主催の農産物の品評会において、父が出品したネギは、常に上位にいたが、優勝したことはなかった。父は、悔し紛れに、見た目ばかりで比べてもアカン、味を確かめてから最終的に判断して貰いたいと言っていた。子ども心に、父の言っていることは正しいと思った。ネギ以外にも、牛蒡(ゴボウ)でも毎年表彰してもらっていた。

             Allium fistulosum

食物としてのネギにこれほどまで、関心が深まったのには、子どもの頃の影響もあるのでしょうが、ここにきて、又、私の体がネギを欲しがってきたからです。

誰かからアドバイスを受けたわけではないし、何か著作物から知識を得たわけではない。まして、テレビやラジオから情報を得たわけではないのですが、10年程前、50歳になった頃から、今回のテーマであるネギのことを、私が子どもだった頃の大人たちと同様に意識するようになった。郷里で過ごしたときと同じように、ネギを体が求めだしたのです。それも、突然急に、強烈に。納豆に混ぜて食べるときのネギの量が、気がつかないうちに日に日に多くなってなってきたのです。朝飯の御膳には、昨晩のオカズの残りと、納豆とそれぞれのパックに入った刻んだネギ、塩昆布、漬物が並べられている。朝めしに関しては、家人はパン党、私はご飯党なのです。

先ずは納豆から手をつける。茶碗に納豆を入れて、そこにネギを山盛りに入れて混ぜるのです。私は何年か前から、大人用ではなく、女性用の少し小さめの茶碗を使っているのです。小さめの茶碗にいっぱいになった納豆とネギとご飯を300粒程と混ぜ合わせるのです。それをよく噛んで食べるのです。この習慣が、どうも体にイイようなのです。ネギは、子どもの頃の摂取量と同じ位になったのだろう。

このように納豆と多い目のネギの練り合わせを食い出してから、体の調子がイイのです。何故、そんなにイイの?なんて聞かれても返答できないのですが、兎に角、イイのです。血が、血流が、血の巡りがイイようなのです。私の体のこんな状態を、ある日横須賀で酒を飲んでいた友人に話したら、私はそれが玉ネギなのよ、と聞かされた。どちらもネギ。ネギと玉ネギだ。きっと、共通の成分が含有しているのでしょうか。今度は玉ネギの研究が課題になりました。後日、学習することを誓います。血の巡りの良さこそ、体に抵抗力をつけるための基礎ですから。それに、リンパの流れにも必ずイイ影響が出ることになるだろう。

私は、理屈抜きで、血の巡りがイイと体感しているのです。

少し前までは、会社でラーメンを食べる時には、ネギ大盛り。外食するときはネギラーメン。この頃は、昼飯代を削る為にスパゲッテイやラーメン、うどんに蕎麦が多いのですが、具なしでひもじい思いをしているのですが、いつか余裕が出てくれば、ネギをふんだんに使った料理を作ってみたいと、虎視眈々、その時期が来るのを待っている。

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★ネットで得た豆情報

ビタミンA、B、C、カルシュウム、カリウム、鉄、など栄養素が多く含まれている。魚や肉の臭みを消す役割もする(ラーメン屋さんがスープを作るのに、ネギがスープ鍋に入っているのをよく見かけた)。におい部分の「硫化アリル」は高い殺菌力とビタミンBとの相乗効果で、疲労回復、糖質の分解と吸収を助け、滋養強壮に効果がある。漢方では、体内の保温効果、発汗作用があることから、初期の風邪の治療によいと言われている。

 

 

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20100201

朝日・朝刊

天声人語

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岡本眸(ひとみ)さんの句に〈葱焼いて世にも人にも飽きずをり〉がある。ネギは焼いてうまくなる野菜の一番かもしれない。ぬらりとした薄皮や髄のあたりから甘みがとろけ出し、生きる喜びさえ教えてくれる。

本来、薬味となる尖った食材である。火を通すだけでこれほど化けるものかと思う。ツンからデレへの変わりようは、どこか仕事も遊びもいける人のようで、できる野菜と呼ぶにふさわしい。しかも風邪に効くとされている。

富山大大学院の林利光教授らが、ネギの「薬効」が本当らしいと突き止めた。A型インフルエンザに感染させたマウスの実験で、ネギの抽出物を与えてきた一群は、そうでない群に比べウイルス量が3分の1に抑えられたという。抗体の量は逆に3倍近かった。

林教授は「ネギの成分のどれかに、予防的に免疫力を高める効果があるのでは」と語る。大衆が頼りにしてきた言い伝え、信じるに足るらしい。寒さに弱いチンパンジーにネギを食べさせている動物園もある。

「おいしい良薬」はそうはない。どの成分がどう効くのか、難しい話は先生とネズミにお任せするとして、この時期、ネギ三昧というのも悪くない。白も青も旬は冬。群馬の下仁田、京都の九条、いずれも寒さで滋味(じみ)が増す。

同じ季語にも、俳人の感性は別のひらめきで応える。黒田杏子(ももこ)さんは〈白葱のひかりの棒をいま刻む〉と料理した。月が替わり、寒の谷もあと二つ三つというところか。名のある産地であろうとなかろうと、店先の「光の棒」たちがこぞって輝く季節である。