(1日のスパルタク・モスクワ戦で、ボールをキープするCSKAの本田圭佑)=AP
先のW杯南ア大会の日本代表は、決勝トーナメント進出は叶ったものの、一回戦でパラグアイに延長戦を終えて0-0、勝負はPK戦に持ち込まれ、結果、負けた。決勝トーナメントでは1勝もできなかった。でも、私は、よく頑張ったと思う。日本代表の今後の進歩の可能性を証明してくれた。選手は当然、関係者も足がかりをつかんだ、と実感していることだろう。
ところが、どういう訳かマスコミの日本代表に対する評価が、ちょっと褒め過ぎないではないかと思っていた。過去のどの大会よりもできは良かったのは、間違いない。でも、---だ。スポーツ新聞は読まないので、どのように報道されたのか知りませんが、テレビ報道には、余りにも見識の足りない報道でウンザリした。おめでとう、なんて表現していたノー天気な奴もいた。みのもんたは朝の番組で、凱旋なんて言葉を使っていた。何も解らん奴は、いい加減なコメントをするな。でも、一般紙の記事だけは冷静に分析していた。
大阪市は岡田監督を顕彰するとかしないとか、その結果は知らない。横浜市と川崎市は市内にあるJリーグのクラブに所属する日本代表選手を、市民栄誉賞か、何とか賞を考えているとの新聞記事を見たが、その後受賞したのかは知らないが、ここで私は思うのです、果たしてこんなご褒美モノに値するのかと。
そんな思いに耽っていたら、20100803の朝日新聞・スポーツ欄に本田圭祐がW杯の自らの、日本代表の戦いについて感想を、インタービューの形で語っている記事が出ていた。この本田の本音が、まさしく私の感じていた感想と同じだったので、嬉しくなってマイファイルした。真のアスリートは謙虚だ。きちんと自らを分析していることはサスガだ。
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20100803
朝日朝刊・スポーツ
本田 6月の記憶語る
「W杯で得たのは、二つのゴールと準備できたという自信」
「もっとレベルの高いサッカーしたい」
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モスクワに戻ってようやく落ち着いた。再び挑戦が始まる、という気持ちになった。
ワールドカップ(W杯)が終わった直後の日本国内の盛り上がりは、僕にとって「壁」だった。僕の気持ちを浮つかせようという壁。切り離して、自分をコントロールできるかどうかが大切だった。
日本に戻ったら批判を予想していた。帰国して記者会見すると聞いたとき、負けたのになぜ、と思った。応援してくれた人には感謝の気持ちを伝えたい。決勝トーナメント進出を喜んでもらえたことも知っていた。でも勝負事ということで考えれば、負けたチームに祝福はふさわしくないという感覚が僕にはある。
ヤマオカ=この本田の感慨こそが、アスリートとしては普通なのだ。日本では、試合の分析もしないまま、よくやった、よかった、となんぜ、そんなに簡単に処理してしまうのだろうか。まあまあ、よかった、それで、シャンシャンで終わろうとしてはいないか。前の方で書いた、顕彰とか市民栄誉賞と言う問題ではない。なんぜ、そんな賞に直結するんだろう。
W杯後、100件ほどの取材をお断りしたのは、「おめでとう」と言われても、なんと答えていいかわからなかったから。礼儀を重んじて「ありがとう」と言えば、自分の気持ちが複雑になる。取材を受けるのは仕事とはいえ、自分にうそはつけなかった。
W杯で僕が得たのは、二つのゴ-ルと、あの舞台で勝負強さを発揮できるだけの準備ができたという自信。それ以上も以下もない。今後に生かして初めて価値が出る。
少しは成長したのかもしれない。大会後、CSKAモスクワでサッカーのレベルが物足りないと感じるようになった。1月に入団してスペイン合宿に参加した時は、日本代表よりずっと強いと感じたのに。今すぐにでも移籍して、もっとレベルの高いサッカーをしたいと思うぐらいだ。
ヤマオカ=このW杯後には、長友が、川崎がヨーロッパのクラブからオフアーがあって、飛び込んでいった。その前には出場の機会に恵まれなかった内田も、新天地を求めてヨーロッパに行った。森本、松井はヨーロッパの所属チームに戻った。
W杯直前の準備が始まった頃、日本代表は自信にないチームだった。親善試合で負け続けたからだろうが、何が悪かったのかは今でもわからない。ただ、不安を感じながらプレーしていたのは確か。ミスが出たときはミスした人のせいでいいのに、その前のプレーをした人までが「自分のせいかな」と気にしていた。そうやって迷いのあるプレーが増えていった。
いいサッカーをしているという実感をつかんだ昨年9月の欧州遠征や11月の南アフリカ遠征とは、まったく違うチームになっていた。自分で打開したかったが、できなかった。伝染しやすいネガティブな雰囲気に巻き込まれないようにした。
スイス合宿の選手ミーティングでは、闘莉王さんが精神論を語ったのに続いて「目標の4強を本気で目指したい。みんなの気持ちを聞かせて欲しい」と発言した。
でも何人かが話した後、テーマは戦術や細かい話に移った。発言しない人もいたから、みんながどう思っていたかはわからない。結局、カメルーン戦までチーム状態は下降する一方だった。
W杯前最後のコートジボワール戦で完敗した後、僕は報道陣に「みなさん、3戦全敗だと思ってるでしょう」と言った。でも内心、「これはすごいチャンスが巡ってきたぞ」と思っていた。
すでに批判されていたから、勝てなくても「やっぱりな」で終わる。重圧がないから力を出し切りやすい。カメルーンに勝てば流れはひっくりかえると思った。実際、その通りになった。