2007年9月5日水曜日

イチローと前田智 天才2人

前田智 2000本安打

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自然体、けが越え18年目

9月2日の朝日朝刊のスポーツ面は、上の見出しが目立った。私は、今回まで前田外野手のことを知らなかった。地味なチームの広島では、山本浩二、衣笠祥雄、小早川ぐらいしか知っている選手はいない。サッカーの記事には、一滴の水もこぼさないように、老眼を皿のようにして読むのですが、野球は元々あまり好きでないスポーツだから、感心は当然薄い。それでも、イチローや両松井、井口、松坂、田口、岩村、斉藤、らのアメリカ大リーグでの活躍については、目を離さないように注目している。一挙手一投手に喜んだり、がっかりしたりしています。後のほうの文章は新聞記事を抜粋転載したものです。野球の好きでない私でさえ、記事を読めば、この前田という選手がどんな選手なのかが見えてきて、興味が沸いてきた。会社の同僚の野球好きに、前田外野手のことを尋ねた。同僚の説明には、熱がこもっていて前田外野手をベタ褒めしたではないか。

以下、新聞の記事より。

広島の前田智徳外野手(36)が1日、中日17回戦(広島)の8回2死満塁、久本から右前適時打を放ち、プロ通算2000本安打を達成した。前田は18年目、1895試合目での到達。プロ野球史上36人目となる。初安打は90年6月6日のヤクルト8回戦で、西村から放っている。前田智が泣いた。3万人近い本拠でのヒーローインタービューで。「チームの戦いは悔しいことばかり。責任を感じています」。記録達成以上に、大黒柱としての思いが噴出した。残り1本として、4打席凡打した。同僚が必死に用意した最高の場面に、燃えた。嶋の3ランで逆転し、なおも四球や安打で迎えた8回2死満塁。5打席目だった。「ここで打たんとさすがにいかんやろう!」2球目は顔付近の悪球でのけぞった。が、気持ちはのけぞらない。次の甘い直球を力まず捕らえる。ライナー性の打球が右翼線付近で転がった。けがを重ねた肉体について、球団トレーナーは言う、「今の彼の体の状態を問われて、万全という言葉は使えません」。でも、若手同様に早出特打ちなどの猛練習を重ねてきた。体のハンディを高い技術でカバーした。三冠王3度の落合・中日監督が惚れ、イチローがあこがれた技術。タイミングを外されても、下半身で粘って、力強いスイングを繰り出す。アキレス腱のけがは、打撃での負担が原因ともいわれた。ともにプレーした小早川打撃コーチは「常に自然体でタイミングの取り方、シンで捕らえる能力が本当にすごい」。でも、前田智には確固たる打撃論はまだない。

まえだとものり熊本工から89年秋のドラフト4位で入団し、2年目からレギュラーとして活躍。92~94年に3年連続で打率3割をマークしたが、95、00年にアキレス腱を手術。02年にカムバック賞。ベストナイン、ゴールデンクラブともに4度。右投げ左打ち

実は、この稿の順序が逆なのです。9月4日の朝日の朝刊のスポーツ面の(EYE)を読んでから、2日前のこの前田の偉業達成の記事を読み返したのが、本当の話なのです。ちょっと待てよ、前田外野手って、あの記事の前田のことか?という具合に。

EYE 西村欣也(編集委員) 9月4日朝日朝刊スポーツ面より

マリナーズのイチローが7年連続200本安打にあと2本と迫っている。(注、今日の朝刊では、イチローは200本目をホームランで記録を達成したと報じていた)ルーキーイヤーの01年に当時のジェラルド・ベリー打撃コーチに、イチローの打撃を分析してもらったことがある。 「彼は5種類のスイングができるんだ。①スポイル。難しいストライクをファウルにする②スラップ。軽くたたいて左に流す③ストローク。ボールの下をたたいて中前に落とす④スラム。野手のいない所へ力を入れてシュートする⑤テニスのクリス・エバートのバックハンド。腕だけでコントロールしてボールをどこへでも運べる」「だけどね」とペリー・コーチは笑った。「何でそんなことができるのか、僕にはわからない」。その技術をさらに研ぎ澄まして、イチローはここまで来た。彼の打撃の原点はどこにあったのか。94年の日本のオールスターで、イチローが1人の男と本当にうれしそうに握手を交わしているのを見た。1日に2千本安打を達成した広島の前田智徳である。「僕のことを天才だという人がいますが、本当の天才は前田さんですよ」。はっきりイチローは言った。

前田の野球人生が暗転したのは95年5月23日のヤクルト戦だった。右アキレス腱を断裂した。その後、激烈なリハビリを経て復帰したが、00年には左アキレス腱も手術した。

彼がケガに取り付かれなければ、どんな成績を残したか、という想像には意味はない。あれだけの故障を抱えながら、前田はここまで上ってきたのだ。「ケガをしてチームの足を引っ張って。こんな選手を応援していただいてありがとうございます」。声に涙がまじった。

イチローと前田智徳。2人の天才は歩みを止めない。

山岡=天才アスリートには、他のアスリートの能力をよく理解できるものなのですね。つくづく感心させられました。