2014年5月3日土曜日

一皮むけた!! アウベス

20140427、スペインリーグでのビリャレアル&バルセロナ戦でのできごとだ。

CKの際に、バルセロナ・DFアウベスに向けて観客からバナナが投げ込まれた。黒人選手に対して「サル」と呼んだりバナナを投げたりするのは典型的な人種差別行為だ。

ところがこのアウベス、ピッチに落ちたバナナを拾って、皮をむいて、食って、CKを蹴り、次のプレーに加わった。あたかも、何事もなかったかのように。

試合後、記者の質問にアウベスは、ポジティブに行動したまでだ、と言い放った。この発言にブラジル代表のFW・ネイマールは「俺たちは皆サルだ。皆、同じ。人種差別にNOを!」とツイッターで呼びかけ、バナナを手にした写真を掲載した。 世界のスター選手らが次々と呼応、人種差別に反対する意思表示としてバナナを手にした画像をインターネット上に掲載している。

こんな内容をテレビとネットで知った。

そして、今朝、テレビのニュース番組で、元ブラジル代表で主将を務め、Jリーグ・鹿島で活躍、その後は日本代表監督も務めたジーコがネットに投稿した映像を観て、私は思わずニタっとした。そして、この稿を起こすことにした。

ジーコがバナナを食う様子をアップで映し、そしてペナルティキックマーク付近からボールを蹴り、ゴール右上隅に吊らされたバナナを見事命中、人種差別の象徴のバナナを叩き落とした。さすが、技ありのジーコ風の人種差別抗議だ。

先日には、日本でも浦和レッズの私設の応援団がジャパニーズ オンリーと英語で書いた横断幕を掲げて強い批判を受けた。後で知ったのだが、このジャパニーズ オンリーという言葉は、日本のいたる所で多く見られるそうだ。差別蔑視の深さに今更ながらに驚いている。

 

ーーーーー、こんな文章を綴っていた翌日の20140503、名文の誉れ高い朝日・天声人語さんも同じ内容に触れたた。こちらは、さすがに、人種差別から憲法に及んだ。今日は憲法記念日だ。

 

20140503 

朝日・天声人語

「バナナの輪」が世界に広がっている。先月末、サッカー・スペインリーグの試合で、観客がブラジル人選手に向けてバナナを投げ込んだ。サル扱いを意味する侮辱であり、人種差別である。

当の選手はこともなげに拾って皮をむき、一口ほおばって競技を続ける。そのクールな態度が称賛を呼んだ。ブラジル人のスター、ネイマール選手はバナナを手にした自分の画像をネットに掲げ「俺たちは皆サルだ」と書いて抗議の意思を示した。

元日本代表監督のジーコさんやインテル・ミラノの長友佑都(ゆうと)選手も輪に加わった。誰に指図されたのでもないだろう。差別反対を訴えるうねりの、あっという間の広がり方は爽快ですらある。この世界にはまだ希望があると感じさせる。

最近の我が世相を顧みる。サッカー競技場に「日本人のみ」の横断幕が出現した。四国の遍路道でも外国人排斥の張り紙が現れた。ヘイトスピーチの当事者は、憲法が保障する表現の自由を盾に正当性を主張する。

もとより差別は自由を奪う。例えばナチスの記憶を受け継ぐドイツは、自由の敵には自由を与えない。ヘイトスピーチは法で罰せられる。不寛容を許さない姿勢は、「たたかう民主制」と呼ばれる。

ただ、そこには、誰が敵かを権力が恣意的に決める危険性も潜む。だから、日本国憲法は自由の敵を初めから排除はしていない。この場合、敵にまず立ち向かわなければならないのは社会であり、個々人ということになる。そう、あのバナナの輪のように。