2018年4月5日木曜日

サッカーと桜とお芝居巡り

『ビーダーマンと放火犯たち』


事務所内での読み合わせの風景

●最初は、グラウンドでの巻き。
グラウンドに着いたのは13時。
午前中に練習を終えた選手たちが、思い思いの練習を、勝手気ままに楽しんでいた。
50年程前には、俺だって奴らと同じことをしていた。

正規の練習を終えた後の、自分勝手な練習ほど楽しいことはなかった。
誰彼の視線を気にすることなく、走ったり、ボードにボールを蹴り当てたり。
ポールから垂れ下がったボールを、ボレーキックにヘッディング。
そんなことをしていたら、早稲田実業高校のサッカーがやってきて、私は彼らの一員として練習に参加した。その練習が終わると、私の一日も終わりになる。
練習の定休日である月曜日は、私にとっては特別の日。
寮から井の頭公園、善福寺公園まで、走ったり歩いたり、突然猛烈にスピードを上げて走ったり。ウサギ飛びもやった。こんなに楽しい休日はなかった。

総監督のKOがやってきて、応援席で並んで観戦。
「KOよ、お前が年賀状でも、暫らく前に電話で話した時も、言っていたなあ」「ガツガツ、走らせますよ」と。
そんな事を話したら「ヤマオカさん、今しばらくは様態を見ているんです。イザという時には、がっちりやりますよ」言葉に勢いがあった。

「ヤマオカさん、今は昔ほど、3時間も4時間もがちがち練習をしないのですよ。練習は1時間半ほど。後はみんなが、勝手に好きなことを、やるんですよ」。
そうか!そうなんだ。
時間の経過と共に、何もかもが違ってきているんだ。

「高校のサッカー部を去年の年末まではやってきたんでが、そんなことも知らないで、、、、、総監督になっちゃんたんですよ」。
東伏見駅の近所にアパートを借りたこと、1週間に1度は藤沢の家に帰ることも話した。

15時より。
対戦相手は、室蘭大谷高校。
35分*3回、試合は当然我が大学が勝ったものの、試合そのものは面白くなかった。激しさも、厳しさも足りない。
寧ろ、相手チームの方こそ頑張っていたと褒めたい。
大学のチームには新入生も沢山いて、彼らの腕試しでもあったのかもしれない。

試合が終わって、我がサッカー部の連中が全員、50人程が一緒くたに私ともう1人の人間に対して、よくぞ観に来てくれましたね、と挨拶に来てくれた。
全員で深く腰を曲げての挨拶だ。
私ともう一人は、恥かしいなあと声をかけた。

KOは、暫らくの間、選手たちに気づいたことを話していた。その光景は、私にとっても嬉しかった。
昔々に、私の身や心、血脈までもが戻りかけていた。


●KO総監督も観劇に同意した。
私は招待されているので無料でよかったが、KOの観劇料は私が負担した。

東伏見の早稲田のグラウンドを通り越した。私たちが過ごした約50年前とは何もかも変わっていた。
何種類ものグラウンドや室内の競技場が真新しくなっていた。私は目を魚の鱗のようにバタバタ潤ませて見回した。
昔を懐かしむのではなく、何処か知らない所へ来たような感慨に耽った。

私はKOに余計なことを嘴(くちばし)ってしまった。
30年か?40年前に、彼が恋していた女性の話をしてしまってからの、彼の挙動はただ者ではなかった。
彼女は、この芝居、東京演劇アンサンブルの社長さんの娘さんだ。
芝居のことよりも、頭の九分九厘が彼女占めになってしまった。
これ以上に狂われても困ると、私は恐々(こわごわ)だった。
話しかけてくる彼に、俺の身の毛は逆立った。
これ以上、話すまいと決心した。

●桜の巻き
関町公園を歩いた。
池の周りの桜の花が満開だ。家族連れや恋人同士たち。
公園を出て武蔵駅へ向かう線路づたいは、桜の古木の花が満開だった。
この古木たちは余程老齢なのだろう、幹は大人2人でも抱きかかえられないほどの物だった。
どの公園にも桜の見学に人が溢れていることを告げてはいたが、私には、皆さんほど関心が向かなかった。が、流石(さすが)にこの桜には驚いた。
50年前には、第二の田舎のつもりで過ごしていた、筈だったのに。

●お芝居の巻き
武蔵関駅の前で、カツを食ってビールを飲んで、腹ごしらえ充分、劇場に向かった。
劇場にはいつもの係りの人が愛想よく応えてくれた。
共同経営者の入江さんは、劇場に関係或る書籍の売場に、いつものようにいた。書名は馴染みのある物ばかり。
微笑が可愛らしいと言えば、叱られるだろうか。

共同経営者の志賀さんは、気丈夫さを遺憾なく発揮、客間でお客さんに丁寧な挨拶をしておられた。
彼女とも付き合いが長くなったなあ、と思わず嬉しくなる。
彼女の劇団、お客に対する心配りには、頭が上がらない。

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       マックス・フリッシュ

演出は小森明子さん。
『屠畜場の聖ヨハンナ』で演出デビューを果たした。

テキストの読み込みに定評があり、大胆で小気味よいテンポのある舞台が好評だった前回から、さらに磨きのかかった演出が期待されている。
芝居の案内書には、ブレヒト生誕120年となる2018年、東京演劇アンサンブルの新しい仕事に注目してくださいとあった。

キャストというか俳優さんたちとは、もう長い付き合いになる人々なので、その人たちと会うのも喜びだ。
胸襟を広げてくれた牛さんがこの劇団を教えてくれた。この牛さんから、文学のことやいろんな作家のことを教えてもらった。
それの成果か?結果か、幸か不幸か!私は変な文学好みになってしまった。
それから45年位経つ年月の速さに驚いた。

最初に劇団の社長さんに会ったのは、私が大学4年生の時だ。
それから、この劇団のためにちょっとでもなればと思って、小さい力で申し訳ないが、応援団の一人だった。
脚本家の牛さんが亡くなり、牛さんの娘さんとは仲良く付き合っているけど、息子は俺の顔を見れない程迷惑を懸けてくれた。

劇団の様相を変えようとしたときにも、微力ながら協力できた。劇団さんとも引き下がりのない付き合いになってしまった。



▲芝居の内容は、パンフレットにあった記事を読んでもらえば解ってもらえるでしょう

放火による火事が頻発しているある町
行商人が家にあがり込んで火を放ち
街の広範囲を焼き尽くしている
いつも同じ手口
それなのに止められないーーー
連日の報道に怯えながら
人びとは消防隊を組織した
さて、ビーダーマン氏は
毛生え薬で儲けた会社社長で
共同経営者を解雇したばかり
ある雨の晩
そのビーダーマン宅に
元レスラーが訪ねて来るーーー

消防隊のコーラスとともにおくる
エンターテインメント・ブラック・コメデイ
スイスを代表する作家
マックス・フリッシュの代表作



●作=マックス・フリッシュ 
訳・ドラマトゥルク=松鵜功記 
演出=小森明子

●2018 3/23~ 4/1
開演23金24土25日26月2728水29木30金31土4/1日
14:00
19:00
 ★はLow Price Day 2500円

音楽 国広和毅
舞台美術 入江龍太
照明 真壁知恵子
音響 島猛
映像 三木元太
振付 町田聡子
衣裳 仙石貴久江・永野愛理
舞台監督 浅井純彦
制作  志賀澤子・辻尾隆子
●キャスト
ビーダマン         公家義徳
バベッテ          洪美玉
アナ            山﨑智子
シュミッツ         小田勇輔
アイゼンリング       松下重人
警官            大橋隆一郎
学者            篠原祐哉
クネヒトリング       坂本勇樹
クネヒトリング夫人     志賀澤子
コロスのリーダー      原口久美子・竹口範顕・永野愛理
コロス           雨宮大夢・上條珠理・坂本勇樹・篠澤寿樹・関英雄・仙石貴久江・永濱渉・奈須弘子・町田聡子・真野季節・三木元太・和田響き