2018年4月6日金曜日

考古学者が、湿原「発掘」し再生


発生が進む葦毛湿原を語る贄(にえ)元洋さん

2018年3月17日の朝日新聞の夕刊より。その新聞記事をそのまま、転載させてもらった。
こんなことがどうして成り立つのか、科学知識不足の私には、熟読しなければどうにもならん。
まして、科学に弱い私のこと、当ったり前だのこと。
60年前なら、当ったり前のクラッカーだよ、とテレビでは賑(にぎ)わっていた。
世の中には不思議なことが、私には理解できないほどいっぱいある、それはそれは愉快なことなんだけど。



新聞記事の題字は、考古学者の手法応用
湿原「発掘」し再生だった

貴重な動植物の宝庫でありながら、減少や環境悪化が進む湿原。その再生手法として、近年注目される試みがある。考古学の発掘のノウハウを応用し、植生回復に成果を上げた。湿地っを持つ各地の自治体が導入の検討を始めている。

1月末、愛知県豊橋市にある葦毛(いもう)湿原。豊橋湿原保護の会と豊橋自然歩道推進協議会の30人が木々の伐採に励んだ。市文化財センターの(にえ)元洋所長(59)が「動植物の活動が少ない冬こそ植生回復を促すチャンス」と説明する。面積約3万2千平方メートルに広がる葦毛湿原は県の天然記念物。かっては植物220種、昆虫410種が記録され、「東海の尾瀬」と呼ばれた。1970年代以降森林化が進み、2010年代には湿原部分の広さは半分以下に。葦毛湿原調査員の吉田雅章さん(63)によると、20種を超す稀少植物が姿を消した。

14種が復活
贄さんが再生に関わるようになったのは8年前。保全活動は20年以上続いてきたのに、「植生回復がうまくいっていなかった」。

贄さんの専門は埋蔵文化財。その発掘調査では事前に土地の一部に溝などを掘り、土の堆積(たいせき)状況を確かめる。基本に立ち返り、湿原でも発掘した土の層を観察すると発見があった。

多くの場所で、わっずかな表土の下に厚さ2~5センチの「土壌シードバンク」が埋もれていた。地表で植物が絶滅したかに見えても、種子が保存されている層だ。

雑木やササを刈り取り、根を引き抜き、シードバンクを露出させて発芽しやすい環境を作る。「土を見分ける考古学者の目と地層を掘り分ける技術が必要」と贄さん。13年からこうした手法で新たな試みを始め、県絶滅危惧種の植物など14種が復活。10輪程度だったカザグルマの花は300輪に、ヒメミミカキグサはゼロから58株に、ミカワバイケイソウは群落をつくるまでになった。

視察相次ぐ
葦毛湿原の再生事業は2月、日本自然保護協会の自然保護大賞に入選。導入を検討する自治体関係者や研究者が視察に訪ねてくる。

国天然記念物の成東・東金食虫植物群落がある千葉県山武市でも、発掘に使う機械を用いて掘削や湿生植物の種子検出に成果を上げてきた。同市職員として携わった平山誠一さん(61)は「土地に習熟した文化財担当が再生に関わるのは自然な流れ」と話す。

中央大学の藁谷いづみ教授(保全生態学)は「土壌シートバンク」の活用はその土地の過去の植生を『発掘する』ようなもの。考古学の専門家が成果をあげているのは心強い」と話す。

(編集委員・宮代栄一)

「湿原発掘」の画像検索結果

「湿原発掘」の画像検索結果
葦毛(いもう)湿原



(ウィキペディアより)

概要

石巻山周辺の山域とともに、愛知県の石巻山多米県立自然公園に指定されている。
 一帯は、標高75mから60mくらいの小高い山の緩やかな斜面にあり、広さは、約5haである。木の遊歩道が作られており、湿原を1周することができる。
湿性の植物が250種類ほど、その他にトンボカエルその他の昆虫、動物などが見られる。
尾瀬などの、植物が長年にわたり堆積してしっかりとした水量を蓄えた湿原とは異なり、チャートの基盤岩の上にあり、岩盤から湧き出してくると思われる水がその上を流れていくような湿原で、渇水の季節には水枯れのようになることもある。

葦毛湿原の植物

ここで見られる植物には、環境省レッドデータブックにおいて絶滅危惧種II類に指定されているミカワバイケイソウカザグルマシラタマホシクサ、トウカイコモウセンゴケミミカキグサなどがある