2007年3月20日火曜日

希望入団枠撤廃

金銭供与から、希望入団枠撤廃へ

 西武ライオンズ球団の太田秀和社長は、アマ2選手に不正の金銭の供与をしていたことを発表した。
東京ガスと早稲田大学の野球部員の2選手に対して、栄養費等の名目で金銭を渡していた。早稲田の学生の場合は、高校3年生の秋から接触が始まって、大学卒業後に西武に入る旨の合意書のようなものを作成していた。
この項では、授受した人間の詳細については、第二義的な問題なので、省いて前に進む。
 「なんで、こんなことに、なっちゃったのよ」と考えてみた。
ちょっと待て。こんなことが、何故起こったか?なんて想像するに、そんなに難しいことではない。元を辿れば、それは3年前にあった。きちんと論議を尽くさなかった代表者会議にその源が窺がえる。モラルだけでは、防げなかった。
 力が強くて、大きな声で議事進行を牛耳り、弱い人の意見を聞かないで、強引にまとめた取り決めは、必ず粛清される。これは、歴史の証明である。
著名な経済人でいながら、こんなことも解らない御仁がいる。
 2シーズン前のオフ、3年前、パリーグの球団、近鉄が本体の経営状態の都合で、球団経営の継続が困難になった。それで、パリーグの球団数を減らしてはどうか、と代表者会議で論議されたことがあった。その時は、声の大きい巨人のW氏、西武のT氏、オリックスのM氏が球団数を減らして、限られたパイ(彼ら三氏が想定した利益)を確実に分け合おう、と画策した。球団数を減らすことで代表者会議をまとめようとした。
彼たちの画策を知ったファンは、スポーツ知らずのオヤジたちの、勝手な、ファンの気持ちを無視した内容に憤慨した。今じゃ、あっちゃ向いてホイだけれども、素晴らしい野球を見られるならば、いつでも戻って来る潜在野球ファンが、まだまだいっぱい居ることに、彼ら三氏は、気づかなかった。ビジネス・チャンスはいっぱいある、スポーツ市場における野球の資源は豊富なのだ。


そんな状況下、球団経営に野心のあるIT企業経営者が名乗り出た。ファンは大歓迎をした。本拠地にグラウンドを用意すると、地方都市も名乗り出た。楽天の仙台だ、W,T,Mらは現在における、スポーツの本質と存在の大きさを解っていなかった。経営ピンチに陥っていたダイエーには、ソフトバンクの社長 孫 正義氏が肩代わりを宣言した。地元ファンは諸手を挙げて、歓迎した。
 そのときも、今回、矢面になっている希望入団枠の取り扱いも議題に上ったのだ。が、声の大きいW氏の主導で、廃止はされずに、議論を尽くさず反故にされた。既に、3年前に完全に病が巣食っていたのに、何の手立ても施さなかった。一部の代表者、選手会、ファン、アマ球界から、廃止を望む声もあったのだ。私は、何を、おっさん達は考えトルンジャと不思議にさえ思っていた。
 このときに、W氏はY球団の代表者を降りた。「降りたけど、希望入団枠制度は、残しとけよ」と言わんばかりにして降りた。このオヤジは懲りずに、場外でも、盛んに吼えたぎっていた。そして、彼のお望み通り、希望入団枠は残された。
今回の事件は、この時にきちんと希望入団枠が廃止しておけば防げたかもしれないのだ。
が、今回は残念だ。
西武は3年前の、「明大&巨人、一場選手事件」後、二度とあってはいけないと、申し合わせた後もずうっと続けていたというから、悪質だ。こんなモラルの欠如ってないよな。
でも、あり得るのです。西武なら、あり得るのです。思い出してみてください。証券取引法で大きな過ちを犯したオーナーが、悪びれることなく、記者会見したあの状況を。私には、今回の太田社長の記者会見と合い通じるものがあるように思えてならない。社会の規範を守る、順法精神に一番鈍感な企業集団だ。
私の独り言です。
いい会社になって欲しいのです。私の企業人として必須の基本的な部分は、全てこの企業集団から、学び取ったのですから。お世話になりました。感謝は誰よりもしている心算です。在職中、私を励ましてくれた先輩が、今、再建に一生懸命努力されていることも知っています。
W,T,M氏らの名誉のために、敢えて固有名詞を使わず記号で表しているのです。三氏とも歴史ある球団の各代表者だった。
W氏は、スポーツの本質を何も理解しないで、興行収入だけ、それも自分の球団だけ良ければいいと考え、その仕組みのみに頑張るエゴイスト。優秀な新聞記者だったらしい。新聞、出版、放送界に強い力をお持ちで、彼の言動はいつも注目される。私には、嫌な「奴」以外なんでもない。私は、彼の会社の新聞・週刊誌は、絶対、読まない。
T氏は? T氏から、9年7ヶ月給料を頂いた私にとって、心中、複雑です。
M氏は? 今、資金面で大変お世話になっています。心中、苦しいです。


 今から25年ほど前、私も太田社長とはセクションは違ったが、同じフロアーで働いたことがあった。当時、彼は関係する会社の実業団野球の総務の仕事をしていた。大学は有名私学で、たしか応援団に所属していたと聞いていた。元気よく物怖じしない性格で、いわゆる体育会で、いきいき仕事をしていた。その明るく仕事をこなすことが、評価につながり、社長さんにまでなったのであろう。
でも、今回の問題は前社長の星野君のときから、ずうっと続いていたと想像しています。星野君とは、私はその会社の同期だ。星野君にしても、太田社長にしても、その又前の社長さんも、生粋のコクド(西武)の人だ。私は、ちょっと早い目(20年前)にコクドを卒業させていただいたが。
コクドには、オーナー以外、何か新しい企画や計画の提案、進言はできない体質になっていた。早く、普通の会社になって欲しい、それから誇れる会社になって欲しい。卒業生からの、切なる、お願いです。


 2007年3月13日  朝日 社説

ドラフト裏金 希望入団枠をなくせ

プロ野球界は懲りない人たちの集まり、と言う他ない。選手のスカウトを巡って、裏金の支払いが再び発覚した。西武が金の卵と見込んだ社会人と大学生の2人に計1300万円渡していたのだ。
プロ野球界では、ドラフト会議での指名を経て入団が決まるまでは、金銭を渡すことは一切禁じられている。
裏金といえば、04年8月、巨人が東京6大学の有力投手に計200万円渡したことがわかり、球界を揺るがせた。
西武が悪質なのは、この不正のあとも支払いを続けていたことだ。球界は不正の根絶を誓って、「倫理行動宣言」をした。これには、もちろん西武も加わっている。自らの宣言を踏みにじったことをどう考えているのか。
前回の裏金は、巨人のほかに阪神と横浜も渡していたことが明らかになり、計3人のオーナーが辞めている。西武は責任を明確にしなければならない。そのうえで、今年のドラフトを辞退するぐらいのけじめをつけるべきだ。
どのようにして裏金を渡し始め、なぜずるずると続けたのか。西武の説明には、あやふやではっきりしないところも多い。
例えば、社会人の選手は高校時代からすでに金を受け取っていたことを明らかにしたが、西武は具体的な説明を避けている。大学生の選手については「不適切な関係を終わらせるため、残金の500万円をまとめて渡した」というが、なぜそんな手切れ金のようなことをしなければならなかったのか。
ここはコミッショナーの出番だ。今は代行職になったとはいえ、根来泰周氏の在任中に起きたことである。第三者を加えた調査委員会を作り、徹底的に調べなければならない。事実をさらけだすことなくファンの信用は取り戻せない。
今回の不祥事は、裏金の根が深く広いことを改めて示した。問題の根を断つには、不正の土壌となっているドラフト制度を抜本的に改めるしかない。
この制度が1965年に導入されたのは、各チームの戦力の釣り合いを取るのが狙いだった。しかし、その後、選手の希望も入れるべきだとの理由で、選手を自由に獲得できたり、選手の希望で入団できたりする枠をつくった。このため、裏金が動く余地が再び広がった。
3年前の裏金問題の際、私たちは社説で「自由獲得枠(現・希望入団枠)」をやめるべきだ」と主張した。
そのうえで、大リーグと同じような最下位の球団から選手を指名していく制度を採り入れるべきだ。そうすれば、各チームの戦力が釣り合いの取れたものになる。選手の希望を聞こうというのなら、自由にチームを移れる権利を得られる年数を短くすればいい。
こうした改革を怠ったことが、今回の不正につながった。凡打を繰り返しているうちに、プロ野球全体が9回2死まで追い込まれている。 


 2007年3月14日  朝日(朝) チェンジ

巨人の方針、世論が変えた
12日夜、巨人の渡辺恒雄会長は西武の不祥事について、こう話した。「こういうことが起こったからシステムを変えるというのはファショ的だ。集団ヒストリーだ。制度を変えるのは、反対だ」。希望枠の存続を強く主張した。しかし、13日の12球団代表者会議で、巨人の清武代表は日本版のウエーバー制度を提案した。大きく姿勢を変えた。巨人が姿勢を替えざるを得なくなったのは世論に包囲されたからだ。西武の不正スカウト活動が発覚してから、ファン、アマ野球界、選手会、さらにほとんどのプリ球団が希望枠を問題視した。この制度がある限り、囲い込みが行われ、そこに裏金が発生する。西武の倫理観の欠如は当然問われるが、希望枠というシステムが裏金の温床となっているという世論に、巨人も抗することができなくなったといえる。
代表者会議では現行ドラフト維持を白紙撤回した。ドラフト問題はフリーエージェント制とリンクする。が、今はそれを切り離してプロ野球界が一日も速く「希望枠撤廃」を宣言することが、ファンの信頼を取り戻すための第一歩となる。
(編集委員・西村欣也)


2007 3 24朝日 社説

ドラフト裏金

 

心弾まぬ球春スタート

 高校野球に続いてプロ野球の熱戦が各地で始まる。いつもなら心弾む球春なのに、もやもやした気持ちが晴れない。プロ野球界は、「希望入団枠」も撤廃を来季に先送りする方向になった。新人を囲い込む裏金の温床であることがはっきりしていながら、今シーズンは手を付けないというのだ。球界の将来を考えない、愚かな判断というほかない。
西武による裏金工作が表面化して2週間ほどたつ。3年前にも巨人などが厳しい批判を浴びた不正だ。会議では希望枠をやめることでは一致したが、それに代る制度をめぐって紛糾した。
「自由に移籍できるFA権を得る年数を短縮するのと一体で」と言い張る巨人「FA短縮は年俸の高騰につながる」と訴える楽天など。ドラフトの指名方法でも、各球団の思惑は乱れた。ここはコミッショナーの出番だ。球界全体の利益を踏まえ、裁定すればいい。それなのに任期切れの後も代行として続投する根来泰周氏が先送り論を後押ししたと聞けば、あきれて言葉もない。
選手を送り出す高校や大学、社会人の団体は、改めて即時撤廃の声をあげている。責任は12球団すべてにある。今からでも遅くない。直ちに希望枠をやめ、下位チームから順番に指名する方式を基本にした新制度を導入すべきだ。夏までに決めれば秋のドラフト会議に間に合う。
問題を起こした西武の動きも鈍い。太田秀和オーナー代行は「責任は、球団が設けた調査委員会の報告によって考える」とひとごとのようだ。
04年に堤義明・前オーナーが西武鉄道での不祥事の責任をとって退いた後、西武のオーナー職は空位のままだ。徹底した調査にあわせて人事を一新し、責任ある体勢を築かなければならない。
金銭を受け取っていた社会人と大学生は、すぐ非を認め謝罪した。1年間謹慎や退部の処分を受けている。自らの責任を負った2人と、甘い姿勢のままの球団との落差はきわめて大きい。
そんななかでのペナントレース入りだ。スター選手が相次いで大リーグに去ったが、楽天の田中将大投手ら有望な若手がユニホームに袖を通した。プロの門をたたく機会が与えられ、心おきなく活躍できる環境を整えたい。
今季は日本シリーズを改め、新しい方式になる。両リーグの3位までが改めて対戦し、勝ち抜いたチーム同士で日本一を争う。大リーグに似た新制度で人気の挽回を図る。
だが、選手会は希望枠が今季も続くのであれば、この制度への参加を拒む構えをみせる。今のような経営側の姿勢では、どんな新機軸を打ち出してもファンに受け入れてもらえないというのだ。そうした選手会のいらだちは理解できる。プロ野球は少年に夢を与え、サラリーマンの疲れを癒してきた国民的スポーツだ。球界の将来をにらんだ決断を求めたい。