2009年10月10日土曜日

だって、しょうがない。盛り上がってないんだモン

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(サッカーの王様・ペレー)

国際オリンピック委員会(IOC)は2日、デンマーク、コペンハーゲンで開いた総会で、16年夏季五輪の開催地にリオデジャネイロ(ブラジル)を選んだ。南米大陸で五輪が開かれるのは夏冬の大会を通じて初めて。立候補していた都市は、シカゴ(米)、東京、マドリード(スペイン)。総会では、シカゴにはオバマ米大統領が、日本からは鳩山首相、森元首相、マドリードには元IOC会長のサマランチ、リオデジャネイロはルラ大統領、サッカーの王様ペレーがそれぞれの都市への招致を熱く訴えた。

結果、東京は落選した。

そしてテレビや新聞では、落胆している日本の関係者の表情が、画面や紙面に踊っていた。開催能力の堅実さや安全面では高い評価を受けていたのに。橋本聖子さん、小谷実可子さん、室伏広治さんらの悲しそうな顔、顔、顔。でも、本当に何故そんなに、悲しいの?悲しがっているのは、あなた達と、ほんの一握りの人たちだけだよ。

ここでじっくり考えてみよう。

日本は何故、オリンピックなの? 何故、東京なの?それに招致委員会って誰なの? そしてそれらの人たちはオリンピックの招致をどの様に考えて、アピール活動をしたの?招致活動にどうして150億円ものお金が必要だったの? それに、IOCに4000億円ものお金を基金として供出するって本気だったの?

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(IOC総会で東京の落選が決まり、肩を落とす小谷実可子さんら)

正直な話をしよう。石原慎太郎東京都知事が、任期を残して輝かしい実績をあげられていない。むしろ、やりかけの仕事がことごとく破綻している。知事の日常の行動に対する批判、息子まで巻き込んだ乱費癖。新都市銀行の不振。都議会では、自公は野党に転落した。こんな景気の時だからこそ、自治体の首長は各方面に配慮した施策が必要なのに、意欲的に取り組もうとする意欲は萎えている。仕事に対する情熱が薄れている。そんな折、時間潰しに東京オリンピック招致だったのです。

深耕なしの彼の単純な思いつきに、みんなが振り回されていただけではないのか。招致委員会理事の安藤忠雄さんの朝日新聞で記者との談話を記事にしたものを読んだ。そこで、安藤さんが招致委員会の理事だということを初めて知った。彼は建築家の立場から、東京招致を熱く語っていた。私は、安藤さんの言葉に感動した。

それに、朝のテレビ番組でみのもんた氏が、彼はどういう役割を担っているのか知らないのですが、パラリンピックの重要性をを強く主張していた、彼の話にもなるほどと感心した。

が、それ以外どの招致委員からも、私を感動させるような話は聞かされていない。

新しく首相になった鳩山由紀夫氏は、首相就任早々国連総会で二酸化炭素ガスの90年比25%削減を先鋭的に取り組むと訴えた。ハトヤマ、イニシアティブとも言われた。この新しい日本のリーダーを世界は温かい拍手喝采で迎えた。この勢いをIOCにも持ち込みたかったようだが、ここではそれほど受けなかった。鳩山首相もオバマ大統領も、何か勘違いしていたのではないのか。ちょこっと出っ張って挨拶したぐらいで、その大きな流れを変えられるとでも思っていたとしたら、一番大事なことを忘れているのか、馬鹿にしているのかのどっちかだ。ことは、政治ではない、スポーツの祭典なのだ。情けないほど短命内閣だった森元首相さん、あなたはラグビーをスポーツとして語れるのですか。早稲田のユニフォームを着たりしているけど、後ろめたくないのですか。石原都知事、スポーツとは趣は異なるけれども、あの太平洋一人ぼっちの堀江謙一氏の勇気ある快挙にも、水をさすようなことしかコメントできなかった。スポーツも自らを極限に追い込むことにおいては、冒険と通じるものがある。情けないお坊ちゃま振りを露呈した。スポーツの本質の、その本質を判ってない奴がいくら叫んでも、共感は得られない。

築地市場の移転問題では移転先の工場跡地の土壌から環境基準をはるかに超える有毒物質が検出されている。石原都知事は、その地に何が何でも移転すると言い張っている、危険な知事だ。IOCの総会でも、そんなことには目を瞑り、鳩山首相にならって、ここに至って急に環境を訴え出した。空々(そらぞら)しい。東京都知事殿、あなたは本当に馬鹿なのですか。

コンパクトな会場配備、環境対策、安定した都市インフラをいくら強調したって、本質に迫ってない。こんなことだけで、東京にオリンピックを持ってこようなんて、浅はかだ。国民から市民から、熱い想いが沸き起こってこなければ、ボスがいくら旗を振っても、何も変わらない。落選した原因なんて、国民の東京都民の関心の薄さを分析すれば、自ずから答えが出てくるではないか。又、このお馬鹿さんは、記者会見で、リオの招致活動について裏取引があったかのような発言をして物議をかもした。この類の選考においては、思わぬ極点に不思議なベクトルが作用するものだ。それを風が吹くというのだ。失礼な男だ。ブラジルの人に不愉快な思いをさせてはいけない。この男の人間性を疑いたくなる。招致活動費150億円の使途を明らかにする意向だというけれど、こんなことは民間企業では当たり前のことだ。一つのプロジェクトを終えたら、その予算と実行費をまとめて公開するのは当然だ。長野オリンピックの招致活動費の使途、不明金の内容が、なかなか公表されなかったことも記憶に新しい。隠し通そうとしたけれど、新任の田中知事によってやっとのことで、明らかにされたが、結果は不明のままだ。

私は、やっぱり東京が破れて、リオに決まったことの方が良かったと思う。私が敬愛する黒い真珠、サッカーの神様、ペレーさんが出てきたところで、こりゃ、東京は負けると確信した。ペレーは、ブラジルの英雄で、全国民の顔だ。石原都知事とは、政治とスポーツの違いはあるけれど、国民からの支持が全然違う。リオのヌズマン招致委会長の演説は、新聞記事で読んだのだけれども、この演説が決定打だった。この演説には、ブラジル国民の熱い想いが込められていた。会場では、圧巻だったのではないか。「近代五輪は欧州で30回、アジアで5回、オセアニアで2回、米国での8回を含む12回が北米で行われた。だから、今、初めて南米で開きたい。ブラジル、リオは準備が出来ている」、そしてブラジル中央銀行総裁、ルラ大統領が情熱的な演説だった。

100年前から、ブラジルへは、日本からたくさんの移民が海を渡って出かけた。大国ブラジルは日本人移民を受けいれてくれた。サッカー好きの私にとって、子供の頃は、サッカー王国ブラジルが憧れの国だった。今でも、その想いは変わっていない。

日本とは地球の裏表の位置にあるが、親近感をもつ国だ。おめでとうと、祝意を表したい。

ブラジル、リオは勢いのある国、都市だ。2014年にはサッカーW杯がブラジルで開催される。2016年はオリンピックだ。

楽し過ぎるぞ。サンバじゃ、サンバ、サンバ。

追記

091010 朝日新聞朝刊に、石原都知事が昨日の記者会見で、招致活動費150億円の使途の内訳を公表することに関連して、「財政再建の余剰分であり、東京の財政は痛くもかゆくもない」「余剰分で夢を見ようと思ってやったのは間違いじゃない」と述べた、とある。

この男は、狂っている。死を直前にして、狂気が爆発することがある。私の父が亡くなる寸前、父の口から出る言葉や行動は全く狂人のものだった。今の石原都知事と同じだ。きっと都知事としての死期、寸前なのだろう。早く知事を辞めてもらった方が、東京都のため、国のため、皆のためには、いいのではないか。スポーツマンは、潔(いさぎよ)くなくっちゃ。

 

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朝日・朝刊

天声人語

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昔あった大学入試の合否電報ふうに言えば、「人魚姫はほほえまず」といったところか。デンマークでの国際オリンピック委員会総会で、東京は2016年の開催地に落選した。ほほえみを得たリオデジャネイロは南米初の開催になる。

残念な人も多いだろうが、祝福したい結果である。「五輪の歴史に新しい大陸を仲間入りさせてほしい」とブラジルのルラ大統領は語っていた。ちょうど50年前、「アジア初」を訴えて開催を勝ち得た日本の姿に、その言葉は重なっていく。

あのとき日本は、「五輪という花を初めて東洋にも咲かせて、五つの輪を完璧なものに近づけてほしい」と支持を広げた。五輪の理念と響きあう訴えには、やはり力がある。決選の投票ではリオが圧勝し、さらに一歩「完璧」に近づいたといえる。

ブラジルは2014年にサッカーW杯も開く。すぐ後の五輪開催は、盆と正月が立て続けに来るようなものだ。胃もたれしないか心配になるが、そこはお祭り好きの国。大いに張り切り、楽しむだろうと知人のブラジル通は見る。

かってリオを旅した三島由紀夫は名高いカーニバルに圧倒された。「ホテルの窓を閉めたって、眠れるどころではない」「日本人は、腰を抜かす他はない」と、リオっ子の気質と熱気に脱帽している。人々が「祭り疲れ」する心配はないようである。

日本からの移民が多く縁浅からぬ国である。もろもろの課題を克服して、五輪の新天地でどんな大会を見せてくれるのか。サンバのリズムなど思い出しながら、はや興味は尽きない。

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091004

朝日・朝刊

社説/五輪リオ

南米初への大いなる期待

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52年ぶりの東京五輪の夢は消えた。だが落胆している人の耳にも、地球の裏側からサンバのリズムに乗る歓喜の歌声が届いていることだろう。

カーニバルで知られるブラジルのリオデジャネイロに7年後の夏、聖火がともされることになった。

コペンハーゲンで開かれた国際オリンピック委員会(IOC)総会で、リオが東京、シカゴ、マドリードを振り切り、16年夏季五輪の開催都市に選ばれた。南米初の開催である。

招致をめぐる大混戦の中でルラ大統領やサッカーの王様ペレー氏らが「南米の若者のために、五輪を新たな大陸にもたらしてほしい」と訴え続けた。それがIOC委員の心を幅広くとらえたのだろう。

ブラジルは中国、インド、ロシアとともにBRICs(ブリックス)と呼ばれ、世界に存在感を増す有力な新興国の一つである。ルラ氏はG20の顔でもある。中南米諸国や他の大陸の途上国への支援呼びかけもリオ五輪への共感を広げる効果があったに違いない。

ブラジルには約150万人の日系人が住み、日本からの移民が始まって100周年を昨年祝った。2014年のサッカーW杯開催国にも選ばれており、世界の耳目を集めるスポーツの祭典を立て続けに開くことになった。

南米大陸は、経済や資源外交でもこれからの日本にとって重要性を増す地域になろうとしている。五輪を通じてこの地域に日本人の目が向くことは必ずやいい影響をもたらすだろう。

五輪開催地としては犯罪率の高さといった問題が指摘されてきた。だがこれからに期待したい。スポーツを通じて、若者の非行を防ぐ政策が実を結びつつある。リオを推した委員は、街と市民の負の側面ではなく、潜在力を評価したいといえる。

スポーツの持つ力が人々に夢を与え、社会の活力を生み出す。それはどの国にも通じることだ。五輪はブラジル国民の自信を大きく育むだろう。

総会会場にはオバマ大統領や鳩山首相らが乗り込み、誘致を競い合った。各国の世論を背に火花を散らし合いながらも、開催決定の後は互いに健闘をたたえあう。そんな首脳外交もいいものだ。

磐石の財政やコンパクトな会場配置を柱にした東京の提案は評価を得た。鳩山首相の演説も、2020年までに温室効果ガス排出量25%削減するという野心的な目標をいれたもので力があった。12月にはCOP15でのより厳しい交渉が待ち受けている。

東京への誘致は、「世界初のカーボンマイナス(二酸化炭素削減)五輪」を訴える試みだった。敗れたとはいえ、今後の都市づくりに生きれば、これまでの誘致の努力も決して無駄にはなるまい。