2007年5月1日火曜日

映画「ゆ れ る」を観た

(あの橋を渡るまでは、兄弟でした)

 *原案・脚本・監督=西川美和
*出演=オダギリ ジョー 香川照之 伊武雅刀 新井浩文 真木よう子 木村拓一               ピエール瀧 田口トモロヲ 蟹江敬三


 昨日、私は、株主優待券ちゅうものを利用して映画「ゆれる」を観てきた。
私の、GWのささやかな娯楽でした。何を観たいとか、何を食いたいとかの、欲望はもう湧いてこないようです。仕事とドストエフスキーにハマリっ放(ぱな)しなのです。 
 オダギリ ジョーなんて俳優さんは、初めてお目にかかった。


東京で写真家として成功した猛(たける)は母の一周忌で久しぶりに帰郷した。兄の稔は、短気で怒りっぽい父親と同居、親子でガソリンスタンドを経営している。そのガソリンスタンドには、猛の幼馴染の智恵子が働いている。猛の目には、稔が智恵子に愛情を感じているように映る。智恵子もまんざらでもないように振舞っている。猛は幼馴染の智恵子をアパートに送って、体を重ねる。

 翌日、猛、稔、智恵子の三人で近くの渓谷に足を伸ばすことにする。懐かしい場所にはしゃぐ稔。稔のいない所で、猛と一緒に東京へ行くと言い出す智恵子。
吊り橋を渡る猛を見て、智恵子も猛を追うように吊り橋を渡りだした。そこに、稔が、一人では危ないよ、と智恵子の傍に寄る。
その時のことです。
渓谷にかかった吊り橋から流れの激しい渓流へ、智恵子が落下してしまう。その時傍にいたのは、稔一人だった。   
 事故だったのか、事件なのか。
裁判では、検事は、愛情を受け入れてくれない相手を突き落としたのだろうと、弁護士(稔、猛の叔父さん)は、彼女は踏み板の外れたところからバランスを崩して落下したのですと主張した。
留置場で、面談するたびに、これまでとは違う一面を見せるようになる稔を前にして猛の心はゆれる。
弁護人側の証人として、猛が陳述した内容は、稔が智恵子を振り落としたことを見た、という余りにも衝撃的なものだった。
弁護士は狂わんばかりに落胆する。
ガソリンスタンドの社員も、猛の行動を強く非難した。


    
 七年後、稔は出所した。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん、うちに帰ろう」涙ながらに訴える猛を見て、稔は、何が何だか、さっぱり分からないようだった、が。稔は、遠い過去から記憶を蘇らせようと努力する。
そのうち稔の顔に、少しずつ反応が表れだした。
 兄・稔を演じた香川照之の演技力には度肝を抜かされた。体のなかに閉じ込めていた深い思念や情意を、目線で、顔の肉片の一筋で、背中で表現する。観る者を圧倒させる。
その他、個性派演技人が肩を並べてくれた。


 ( 注)私には演出方法や、脚本、監督の采配なんて、評論する資格はありません。
 実感として、楽しかった。