2007年5月5日土曜日

読了「罪と罰」

4回目の「カラマーゾフの兄弟」を読み終え、3回目の「罪と罰」を読み終えた。読後感想などを書き留めておけばいいのだろうが、ドフト親爺の本はどれも、読み終えるとふらふらになってしまって、そんな元気が出てこない。でも、いまのうちなら、訳者・工藤精一郎さんの解説文から抜粋して、簡単なあらすじぐらい、書き置いておこうと思った。

だから下の文章は、全て訳者殿の文章です。

次は「悪霊」に挑戦です。初めてのご対面です。 

ダイジェスト 

先ずは、ラスコーリニコフの理論がある。これは人類には凡人と非凡人に大別され、大多数は凡人で現行秩序に服従する義務があるが、選ばれた少数の非凡人は人類の進歩のために新しい秩序をつくる人で、そのために現行秩序を踏み越える権利を持つというのである。この理論にしたがってラスコーリニコフは、終局的に人類の福祉に貢献するならば、しらみのような金貸しの老婆を殺すことぐらい罪ではない、自分にはその権利があると妄信する。しかし理論だけでは殺人はできない。彼の病気と孤独、酔いどれマルメラードフ一家の物語、妹の犠牲的結婚を知らせる母の手紙、少年の日の馬の夢、古着商人と老婆の妹の会話、これらが殺人の決行へと追い込む。そして、偶然の重なりによって、完全犯罪に近い殺人を犯す。これが第一部である。

 

 

予審判事ポルフィーリイは論理的で直感力が鋭く、賢明で狡猾、慎重で大胆、冷笑的で相手をじらしながら相手の失言を誘い出すというタイプである。彼は辛抱強く偶然的な些細なことのなかに意味をさぐり、捜査の輪を絞っていき、ここぞという瞬間に決定的な打撃を加えようとする。心証はあるのだが、物証がない。予審判事ポルフィーリイとの知的対決からラスコーリニコフの思想の輪郭が推察される。それは理論によって正当化された殺人によって金を獲得し、その金によって権力を握る。

 

 

権力によって新しいエルサレムをつくり、民衆を幸福にしてやる。つまり殺人は権力掌握の手段であり、目的は新しいエルサレム、つまり空想社会主義のファランステールをつくることである。

ソーニャの信念は。ソーニャは、支配者たちの国家宗教に転ずる以前の貧しき者、病める者、不幸な女や子供たちを救ってくれるキリスト教を信じたのである。ソーニャは一度は死んだ、自分の意志で自分を殺した、だが「ラザロの復活」を信じることによって、キリストに命を与えられた、だからキリストの教え、愛による救いを広めることが、自分の生きる道であると素朴に信じた。「ラザロ復活」朗読の場面で、ラスコーリニコフはソーニャの秘密を見抜いた。

愛と自己犠牲によって身近の人間を自分の道へひきこみ、自分のまわりに正義を広める。ソーニャが無意識に目指していた理想社会は富みも権力も無い兄弟愛の世界である。

二人は逆方向から同じ目的を目指していたのである。

 

 

スヴィドリガイロフは現在を否定し、未来に展望をもたぬ絶望的なニヒリストである。悪徳の化身のようなこの男は、われわれは同じ木から落ちたリンゴだ、ただあなたにはシラーの残りかすがくっついているだけだ、とラスコーリニコフを嘲る。ラスコーリニコフはこの男に自分の思想の反映を見て動揺する。彼を人間にもどすことができるのは、ドーニャの愛だけだが、彼はこの愛に破れ、女心の微妙な揺れに一瞬人間の心を取り戻して、彼女を解放する。そして心はまた真の闇に閉ざされてしまう。それはもはや死である。彼は拳銃自殺する。

 

 

(ここから、私の文章)

ラスコーリニコフは警察に自首した。ソーニャは、陰から見送った。最初から自首を勧めていた。

シベリアの監獄に7年収容されることになった。当然、ソーニャは同行した。監獄に面会に行くたびに、ラスコーリニコフは安らかな精神状態になっていく。苦しみ続けた自論との葛藤から。

ソーニャのキリスト信仰はますます深められていく。

少しづつ平穏な精神状態になってきた彼、その平穏を望みながら支えてきた彼女。

ラスコーリニコフの妹ドーニャはラズミーヒンと結婚した。

母は、息子の幻想の世界を漂いながら忘失、そして命を絶った。

妹の元許婚・ ピョートル・ペトルヴィッチはどうなったか?は読み取れなかった。

友人で医者のゾシーモフは、立派なお医者さんになった、と、当然のように推測できる。

       

物語に出てきた人の名前と主人公との関係を記しておけば、ストーリーを思い出しやすいと思ったので、書き添えました。

ロジオン・ロマーヌイチ・ラスコーリニコフ(ロージャ)

ラスコーリニコフの友人=ラズミーヒン

友人の医者=ゾシーモフ

母=プリヘーリア・アレクサンドロヴナ

妹=アヴドーチャ・ロマーノヴァナ(ドーニャ)

下宿の女=ナスターシャ

妹の許婚=ピョートル・ペトロヴィッチ

マルメラードフ(夫)とカテリーナ・イワーノヴナ(妻) ポーレチカとリードチカ

マルメラードフのアパートの所有者=アマリア・リュドヴィーゴヴナ

金貸しの老婆=アリョーナ・イワーノヴナ、と(妹)リザヴェーター

妹が元家庭教師をしていた家の主人=スヴィドリガイロフ

ペンキ屋=コッホとペストリャコフ

警察官=アレクサンドル・グリゴーリエヴィチ(ザミョートフ)

火薬中尉=イリヤ・ペトローヴィチ

予審判事=ポルフィーリイ