20100305の朝日新聞で以下の記事が出た。
卓球の福原愛(21)=ANAが早大を中退することを5日、関係者が明らかにした。2007年に早大スポーツ科学部のトップアスリート制度で入学したが、「同制度で入った学生は出席重視で、日本代表としての活動との両立は難しかった」と家族らは話している。今年は5月の世界選手権団体戦(モスクワ)に出場後、6月からは中国スーパーリーグに再び参戦の予定。日本リーグ参戦も続ける。退学届けは今月末までに出すという。
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私も、四十余年前早稲田大学でサッカー部に在籍していた。学部は社会科学部です。当時、早稲田のサッカー部は、常にチャンピオンであらねばならない、と誰もが誇りをもっていた。ワセダ、ザ、ファーストが合言葉。高校の時にそれほども練習をしないまま、素浪人を二年もして、それから大学に入った。この素浪人だった二年間、学資稼ぎのためにドカタをした。これが、サッカー部に入ってから苦労する原因作りになった。肉体労働をした結果、体の重心を習慣的に足の裏全体で受けるように慣らされてしまった。それが、サッカーをする上で弊害になったのです。相撲などにはよかったのだろうが。機敏に方向を変えるためには、プレー中はつま先立ちでないと、それに対応できないのです。
お前はゴミみたいなもんだとか言われながらも、この部からは絶対離れるものか、と執着した。
入学当時は、真っ直ぐに走ることさえできなかったのです。体力がなく、過度の練習で頭も回転しなくなって、夢遊病者のようだったのです。方向を狂わないように、タッチラインに沿って走るのですが、体のバランスを欠いて、タッチラインから大きく外れてツツジの垣根に頭から突っ込むことになるのはしょっちゅうでした。
福原後輩は、世界のチャンピオンをめざしている超スーパーなアスリートだ。私みたいな極めて劣等生でも、一所懸命だったのは、同じだ。私は推薦で入学したわけではないので、何のシバリもない気安さはあったが、やはり日本の大学ではチャンピオンになって、私はそのメンバーに入ることを夢見ていた。
学校では難しい授業が行なわれていたが、私は体ボロボロ、頭フラフラでも、この難しい講義を嫌だと思ったことはない。だって、私には目のウロコ落ち、知らないことをドンドン教えてもらえる。感謝していたからだ。でも、だからと言って、私の理解が進んでいたわけではない。解らないことばかりで、結果、成績も当然悪かった。それでも、満足していた。
この頃、社会科学概論、日本ナショナリズム論、フランス思想史、政治学原論など、一般教養として受けた授業の時に使った本を読んでいるのです。学生の時には解らなかったことが、今は面白いように理解できるのです。こんなこともあるのですよ、福原後輩。
そこで、後輩の福原愛さんにアドバイス。大学に所属できる幸せをもう一度考え直してみて欲しい。新聞記事によると、トップアスリート制度で入学した学生は、出席を重視するとある。最近、中国の世界ランキング第3位の選手に勝ち、心身ともに充実しているのだろう、気合も一段と入っている。中国のある卓球団と契約して中国リーグにも参戦するとある。今が旬の福原選手は、100%競技者として邁進したい気持ちはよく理解できるのですが、大学の授業も捨てたものではない。休学するということだって可能だ。先生から講義を受ける有り難さを鑑み、もう一度考え直してもらいたいものだ。4年が無理なら、5年だって、6年かかってもいいではないか。私にとって、大学は掛け替えのないモノをプレゼントしてくれたのですが、馬鹿っなことに、そんなことが解り出したのは、最近のことなんですよ。
退学届けを出さないでください。