2010年3月16日火曜日

カラヴァッジョ 天才画家の光と影

 

銀座テアトルシネマで

映画「カラヴァッジョ 天才画家の光と影」

を観て来た。

20100310

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弊社では営業部門の定休日を水曜日と決めている。定休日だからといっても、仕事が気がかりで、かってのようにいつでもひょいひょいと出かけるわけにもいかない。気分が何となく重いのです。会社から離れたくない。そんな状況下にいる私を見るに見かねて、絵の好きな友人が再三、是非にと誘ってくれた。気分転換にいいよ、と友人は気楽に言う。重い腰を上げて行ってきた。でも、入場券は、私の女房保有の東京テアトル株の株主ご優待利用だ。平日の昼間だからか、映画の内容のせいか、中年以上のご婦人が多かった。

映画の内容は、700円で買ったプログラムの文章を転載させていただいたのでその文章をお楽しみください。映画の内容がよく分ります。光と影を文字通りに天才的に描いた画家は、人生にも光と影があり、光の部分とは有り余る能力を揮ったこととその理解者に恵まれたこと、影とは庶民をモデルに選んで写実的に描き、権威的な教会からはその画法に反発を喰らうことが多かったこと、と人を純粋に愛するがゆえに、傷ついていく部分のことだ。

また、天才画家の光と影を、これまた光と影を天才的に撮る撮影監督、名匠ストラーロが担当した。物語としての映像は勿論、物語に出てくる名画も、さすがに見ごたえがあった。最初から最後まで、大いに楽しませてもらった。映画に出てくる名画のなかでは、今まで観たことのある絵画は、「果物かごを持つ少年」ただ一つだけだった。

ただ、一緒に行った友人は、脚本について、物足りないなあと言っていた。が、私にはそのことについては友人の言っていることが理解できていない。文字人間の私には、テンポが速くて込み入った内容の映画や、観念的な映画は苦手なのですが、この映画はストーリーも解りやすくて悩まなかった。

視覚は、充分魅了されました。

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以下は、この映画のプログラムより、転載させていただいた。

レンブラント、ルーベンス、ベラスケス、フェルメールなど多くの芸術家に影響を与えたバロック絵画最大の巨匠、カラヴァッジョ。

美術史に不滅の名を刻む画家は、なぜ、わずか38歳で命燃え尽きたのかーーーー?

愛に生き、悲運に散った天才の感動の物語。

その人生は、光の部分は限りなく美しく、影の部分は果てしなく罪深いーーー。

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北イタリアに生まれ、芸術の中心地ローマで才能を開花させながら、栄誉に甘んじることなく、描きたい絵を描き愛したい女性を愛し、やがて南イタリアへと流れ墜ちていったカラヴァッチョ。華やかなルネサンス文化が終焉した時代に、徹底した写実描写、劇的な明暗対比や感情表現によって、バロックという絵画革命を起こした天才の人生は、画家の遺した作品に似てコントラストが強く、激しいものだったーーーー。

波乱に満ちた一生を描いた映画「カラヴァッジョ 天才画家の光と影」では、絵のモデルとなった女性たちとの恋愛や生涯にわたり彼を支え続ける貴族の女性との崇高な愛といったさまざまな愛のドラマが繰り広げられ、多くの女性を惹きつけたカラヴァッジョの人間的な魅力を浮き彫りにしている。

またこの映画には、宗教改革に対抗するカトリック教会が、絵画は信仰を広める最有効手段とみなし画家たちのパトロンになったという時代背景がある。カラヴァッジョは教会からの依頼に対し、庶民をモデルに人間味溢れる聖人像を描いたため拒絶される苦い体験に遭う。政治的な権力抗争の中心舞台が教会であった当時のイタアリア社会では、自らの信念を貫こうとしても命の鍵さえ教会に握られ、一個人は時代の波に翻弄されて未完の人生の幕を無念のうちに下ろすしかない。

没後400年。カラヴァッジョという一人の画家を通して、聖と俗、罪と赦し、情熱と冷静、栄光と破滅が狂おしくせめぎあう人生を、本作は鮮烈に描いている。

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歴史的な名画をスクリーンで鑑賞できるゴージャスな2時間。

名匠ストラーロが再現した「カラヴァッジョ的」世界とは

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本作では、《聖マタイの召命》《果物かごを持つ少年》《聖礼者ヨハネの斬首》など、現在では世界各所に点在するカラヴァッジョの代表作の中から約20点もの至宝が鑑賞でき、名画が誕生するまでの秘密が明かされていく。すべての絵画は、カラヴァッジュ研究の第一人者であるイタリア文化財・文化活動省局長のクラウディオ・ストリナーティと、美術史家でカラヴァッジョに関する著作も多いマウリツィオ・マリーニにより監修を受け、美術映画としても最高のクオリティに仕上がった。

登場する絵画にとどまらず、カラヴァッジョを生涯の師と仰ぐほど心酔している名匠ヴィットリオ・ストラーロによる撮影も、カラヴァッジョの美学を讃えることに成功している。『地獄の黙示録』『レッズ』『ラストエンペラー』で3度のアカデミー賞に輝く「光の魔術師」ストラーロは、カラヴァッジョの絵画の特性を詳細に研究し尽くし、絵筆をキャメラに置き換えて、色彩、照明からキャメラポジションに至るまで「カラヴァッジョ的」世界を再現し、絵画と映画の完璧な融合を見せている。

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カラヴァッジョが生きた時代そのままイタリアを堪能する歓び

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本作は実際にカラヴァッジョがたどった足跡を追い、彼が生きた時代そのままの貴重な旧跡が映像におさめられているが、ローマではカラヴァッジョの代表作が展示されているサン・ルイジ・デイ・フランチェージ聖堂、サンタンジェロ城、ファルネーゼ宮殿など、陽光眩しいシチリア島では美しい海岸や中世の古城などが撮影された。

主人公カラヴァッジョが情熱的に演じたのは、『輝ける青春』で繊細ながら気性の激しい弟ナッテオ役を演じたアレッシオ・ボーニ。パトロンのデル・モンテ枢機卿役に『裸のマハ』のジョルディ・モリャ、絵画のモデルになるフィリデ役に『王は踊る』のクレール・ケームなど、イタリアは元よりスペイン、フランスなど国際色豊かな俳優が集結している。

監督はイタリア若手の中で最も注目されているアンジェロ・ロンゴーニ。また『イルポスティ-ノ』でアカデミー賞受賞の作曲家ルイス・バカロフによる情感豊かな旋律も印象に残る。

 

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201002198(金)に、朝日新聞夕刊、be エンタでこの映画の紹介と説明がなされていた。すかさず切抜きにして、映画を観る機会を狙っていた。

以下の文章は、全て新聞記事を転載させていただいたものです。

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『光と影 生涯かけ追求』

「カラヴァッジョ」撮影 ストラーロ

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今年は、バロック絵画の先駆者カラヴァッジョの没後400年。その波乱の生涯を描く「カラヴァッジョ 天才画家の光と影」(アンジェロ・ロンゴーニ監督)が東京・銀座テアトルシネマで公開中だ。光と影の巨匠を撮影監督として映したのは、こちらも光の魔術師と呼ばれるビットリオ・ストラーロ。ローマ郊外の自宅で作品への思いを聞いた。(ローマ=南島信也)

ストラーロは「地獄の黙示録」「レッズ」「ラストエンペラー」で3度のアカデミー撮影賞を受賞した名匠だ。

カラヴァッジョとの出会いは、映画学校で学んでいた20歳のころにさかのぼる。ローマ市内のサン・ルイジ・デイ・フランチェージ教会で代表作「聖マタイの召命」を目にして、息をのんだ。

「右上から差し込む光とその下の影のライン。神聖性と人間性、自覚と無自覚を象徴している。生と死の比喩として表現した光と影を初めて見た」

この衝撃が、ストラーロの映画人生を決定づけた。「学校では、光と影の意味について教えてくれなかったが、カラヴァッジョと出会って、少しだけ分った。どの映画を撮る時もあの時の記憶をたどりながら表現してきた。どうやったらあの絵のシーンを再現できるのか、生涯をかけて追求するテーマだ」と語る。

映画は、窮地続きの修行時代から、枢機卿や有力貴族に認められるが、その後、暗転するカラヴァッジョの人生を描く。称賛と殺人を犯したことによる死刑宣告。娼婦、有力貴族婦人らとの恋と分れ、絶望の数々ーーーー。逃亡の果てに38歳で倒れるまでの波乱の生涯を、画風さながら陰影鮮やかに映し出している。

カラヴァッジョは「マスター・オブ・ライト」と称される。その明暗を劇的に対比させた描写や感情表現と、徹底したリアリズムで時代の寵児となった。その彼を映すのに、最も苦労した点とは?

「電気がなかった時代の光を再現することではなく、カラヴァッジョという人間を理解することだった」と言う。「なぜ、彼の絵にあのような光や影が必要だったか。それを知るために、彼に関するあらゆる本を読み、心理学も勉強した。今日のすべての視覚芸術が彼の影響を受けていると信じている」

ストラーロは「ライティング・ウイズ・ライト」(光で書く)という言葉を好んで使う。その意味をこう語った。

「映画というのは、ひとつの物語が始まり、展開して完結する、いわば本のようなものだ。作家が言葉で、音楽家が音符で語るように。映画は光で物語をつむぐ芸術にほかならな

 

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ストーリー

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灼けるような陽が照りつける小船に揺られながら、高熱に浮かされた一人の男が人生を振り返るーーー。

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芸術の中心地ローマで味わう絶望感

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ミラノで絵の修行をしていたカラヴァッジョが芸術の都ローマに出るため援助を依頼した相手は、コスタンツァ・コロンナ侯爵夫人。幼い頃から恋焦がれてきた美しき夫人は、彼のためならなんでもすると約束してくれた。

ローマで画家のマリオ・ミンニーティと知り合ったカラヴァッジョは、彼の紹介でダルピーノ工房に入り込む。夜になると、マリオや血の気が多い仲間オノリオらと街へ繰り出し、そこで情熱的な美女に釘づけになった。彼女は高級娼婦のフィリデ。しかも元締めは街の権力者ラヌュッチョ・トマッソーニで、手が出せる女ではなかった。

そんなある日、足に大怪我をしたカルヴァッジョは、マリオの献身的な介護で癒されていく。愛する彼をモデルに絵を描いて売ったが、日々の食べ物にも困る生活に絶望し死に取り憑かれていくカラヴァッジョをマリオはまた優しく抱きしめるのだった。

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上りつめた栄光の階段

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窮地にあったカラヴァッジョのもとに、ついに救いの手が差し伸べられる。絵の評判を聞きつけたデル・モンテ枢機卿が宮殿の一室を提供し、生活のすべてを援助してくれることになったのだ。

カラヴァッジョの絵がお披露目されるサロンには、有力貴族ジェスティニアーニ侯爵や画壇の大御所ズッカリ、人気画家バッリョーネなどローマ中の名士が集まっていたが、カルヴァッジョは誰にも媚びることなく率直な意見を口にし、皆を驚かせる。

フィリデのことが忘れられないカラヴァッジョは、彼女をモデルにする権利を賭けラヌッチョにテニス対決を挑み勝ち取った。モデルに乗り気でなかったフィリデだが、彼の描く絵に感動し、その熱い思いのまま二人は激しく愛し合う。

その頃、巷ではチェンチ殺害事件の話題でもちきりだった。チェンチ男爵の娘ベアトリーチェとダルピーノの工房で言葉を交わしたこともあるカラヴァッジョは、殺人の罪を着せられ首を斬り落とされる彼女の姿を目に焼きつけ、フィリデをモデルに迫力あるユディトの絵を完成させる。だがフィリデは、娼婦として暮らさなければならない自分を理解してくれないカラヴァッジョと言い争い、泣きながら去って行く。

フィリデとの別れからまたしても放蕩に明け暮れるカラヴァッジョにとって、最高に名誉ある仕事がもたらされる。それはサン・ルイジ・デイ・フランチェージ聖堂の絵画制作。《聖マタイの召命》《聖マタイの殉教》の誕生でローマ中の賞賛を浴びたカラヴァッジョが、誰よりも作品を見せたかったコロンナ侯爵夫人もその栄光を称え、これからは家族を持ち落ち着いた生活が必要と勧めるが、彼は夫人に永遠の愛を捧げると告白するのだった

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最愛の女性と引き裂かれーーー

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その頃、教会では異端粛清が続き、火刑に処せられたドミニコ会修道士ジョルダーノ・ブルーノの末期の苦闘を見届けたカラヴァッジョは、聖人も人間だと考え《聖マタイと天使》を描く。しかし人間的過ぎる聖人像だと教会に受け取りを拒否され、街での乱闘騒ぎで鬱憤を晴らすしかなかった。

すでにスペイン派が多数を占めていた教会では、フランス派のデル・モンテ枢機卿にカラヴァッジョを擁護する力はもうなかった。宮殿を辞した彼は、街の娘レナをモデルに呼び寄せ二人で暮らす。レナはかってカラヴァッジョに助けられ、お返しに牢獄から出てくる彼をじっと待ち続けていたのだ。心優しく、信頼と愛情を寄せてくれる彼女に、カラヴァッジョは初めて安らぎを得る。

しかし、デル・モンテ枢機卿に依頼され、新教皇に初めて献呈する大切な絵のモデルに庶民のレナを使って《ロレートの聖母》を描いたカルヴァッジョは、教会の非難にさらされる。その上、最愛の人レナにも危害が及び、逆上したカラヴァッジョはトマッソーニの仕業だと決闘を申し込み、怒りのままに彼を刺し殺してしまうのだった。

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転がり落ちる運命の果てに

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重傷を負ったカラヴァッジョはナポリのコロンナ邸に運び込まれ、夫人の必死の看護によって傷は癒えた。が、そこに届いたのは、恐るべき死刑宣告の通達。動揺するコロンナ侯爵夫人に、カラヴァッジョの芸術を誇りに思っていた夫人の息子ファブリツィオは、マルタ騎士団の庇護を必ずとりつけると約束する。

カラヴァッジョはマルタでヴィニャタール騎士団長をはじめとした騎士たちに手厚くもてなされ、渾身の一作《洗礼者ヨハネの斬首》が騎士たちの感動を呼び、ついに名誉騎士に叙任される。だが、彼を憎む上官の罠にはまり牢につながれ、カラヴァッジョの味方をする騎士たちによってひそかにシチリアへ逃げ延びた。そこでローマ時代の友マリオと再会を果たしたカラヴァッジョは、追っ手に殺される恐怖に怯えながら、数々の注文に応じ残された力を振り絞るように《聖ルチアの埋葬》などの力作に取り組んでいく。

一方ローマでは、デル・モンテ枢機卿をはじめとするパトロンたちや、コロンナア侯爵夫人やフィリデまでもが恩赦嘆願のために捨て身の覚悟で力を注ぎ、そのお陰で教皇による恩赦の知らせがやっとシチリアに届いた。カラヴァッジョは、芸術の都ローマに戻れる、そしてコロンナ侯爵夫人と再び会えるという喜びに打ち震える。だが、運命は過酷だった。ローマに戻る途中の港で官憲に誤認逮捕され足止めをくらい、教皇に献呈する絵画を乗せたまま離れていった船はなんとか追いつこうとするカラヴァッジョに、死の影が忍びつつあったーーーー。

 

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(聖母の死)

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(ラザロの復活)

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(果物かご)

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(病めるバッカス)

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(合奏)

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(ホロフェルネスの首を斬るユディト)

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(アレクサンドリアの聖カタリナ)

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(聖マタイの召命)

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(聖マタイの殉教)

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(蛇の聖母)

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(聖マタイと天使)

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(ロレートの聖母)

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(アントニオ・マルテッリの肖像)

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(慈悲の七つの行い)

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((執筆する聖ヒエロニムス)

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(ダヴィデとゴリテア)

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(アロフ・ド・ヴィニャクールの肖像)

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(教皇パウルス5世の肖像)

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(洗礼者ヨハネの斬首)

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(ダヴィデとゴリアテ)

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(アロフ・ド・ヴィニャクールの肖像)

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(聖ルチアの埋葬)

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(いかさま師)

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(トカゲに噛まれた少年)

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(フィリデの肖像)