2010年5月22日土曜日

野良猫に餌、加藤元名人敗訴

私の知人にも、野良猫に餌を上げている人がいる。又、その人は自宅に20匹近い野良猫を保護している。自宅の近くに現われる野良猫は、どの猫も確認している。初めて見かけた猫は、捕獲器で捕まえて保護する。そして動物病院で、病気に罹っていないか、お腹に虫をもっていないか、エイズに感染していないか血液検査もする。体に異常がなくて、野で耐えられるようなら、不妊や去勢手術をしたうえでリリースするか、保護して里親募集をする。病気に罹っていた場合は、動物病院で治療してもらい、知人の家の中で仲間と暮らす。病気が治り人間との生活に慣れてくると、ネットで里親募集を行なう。

保護した野良猫を、動物病院で診てもらったり治療してもらうのですが、このような活動している人のために、治療費や薬を割引している病院も数多くある。不妊や去勢手術、ワクチンも特別料金では有り難い、理解ある獣医さんや動物病院には本当に感謝しています、と知人。でも、個人が自分の生活費以外に負担するには高額だ。このような活動をしている人は、数多くの猫を保護するのですから、尚更だ。

相性の合った里親に恵まれた猫は幸せだ。相性チェック、里親になるための資質、条件は厳格だ。ネットでの里親募集なので、里親さんは何処からともなく反響がある。関東周辺なら手軽だが、北海道の小樽や富山県の里親希望者に猫を届けに行ったこともあるらしい。でも、知人は良縁を信じて嬉々として行動する。猫を預ける側と猫を受取る側は、猫の今後の安らかな生活のための約款を締結する。

加藤元名人の場合は、屋外で20匹ぐらいに餌をあげていたとのことだが、やはり20匹が集まってくるようでは、糞尿やその他のことで、周辺住民には何らかの嫌な影響を及ぼすことは避けられないだろう。このようなことで、周辺住民と諍(いさか)いを避けるために、知人は自宅で保護しているのです、と言う。

知人はお金のことは余り言おうとはしないけれど、お金の有り余った生活をしているわけでは決してない。活動の全てを自分のポケットマネーどころか、人間様用の生活費を削りに削って、猫の飼育費に当てているのだろう、その大変さは想像に難くはない。このように、配慮の行き届いた善良な保護者がいて、はじめて先ほどの加藤元名人のようなトラブルが発生しないのだ。

どうか、今回加藤元名人を裁判所に訴えた原告の方々、加藤元名人を訴えたのはよくよくのことであったのだろうが、町の彼方此方で、このように猫を保護して頑張っている人たちがいることを認識して欲しい。50匹以上も保護している人も知っている。ネットワークが自然に作られて、お互いに保護した猫の飼育を助け合ったりしているようだった。このような活動をしている人たちに、この野良猫問題を任せておくわけにはいかない。猫好きな人が勝手にやっているんでしょ、なんて簡単にすまさないで欲しい。

裁判で勝って、唯、よかったよかった、と言っている場合ではない。猫が好きな人も嫌いな人も、猫に迷惑な被害を受けた人も、自治体も、役割分担して解決を試みてみましょう。人間と猫、同じ生命を持ち合う動物の仲間たちだ。猫を挟んで、双方が恐い顔で睨(にら)み合っている場合ではない。優しい眼差しで微笑みを交わせるようになりたいものです。

この問題は、もう充分社会問題だ、行政の出番でもあろう。とりあえず、野良猫の不妊や去勢手術費ぐらいは早急に条件なしで自治体が全額負担すべきだろう。晴れて、早く実施されたし。

加藤元名人に餌をもらっている猫らは、元名人に感謝しながらも、立派な大人たち同士を、裁判といえども、人間どもに戦わせてしまったことを、悪いことをさせてしまったニャと心苦しく悩んでいることだろう。猫にはニャンにも罪はニャイ。

憎むべき敵は、猫にとっても人間にとっても共同の敵は、猫を捨てた罪深い人間の「奴」(アイツ)だ。

殺処分だけは絶対避けなくてはならない。

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20100525

朝日・朝刊・社会

地域猫 トラブル防げるか?

ここの記事をダイジェストさせていただいた。

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「地域猫」とは、「決められたルールに従って、地域ぐるみで飼育をしている猫」。猫の住民トラブルに頭を悩ましていた磯子区が1999年、区民公募の検討委員会で「猫の飼育ガイドライン」をまとめ、提唱した。

ルールは四つ。①猫には不妊去勢手術をする ②餌の場所を決め、残った餌は片付ける ③フンの始末をする ④個体識別をして、健康をチェックする

動物病院やボランティア団体はその後、「磯子区猫の飼育ガイドライン推進協議会」を作って活動を拡大。現在27グループが同協議会に登録し、ルールに従って活動をしている。1年目で大半の猫に手術を受けさせ、「地域猫」として見守り始めた。だが、治療代や餌代の負担は変わらず、費用は年間で百数十万円に上る。協議会に登録することで、手術代が半額以下になる援助はあるが、活動費用ほぼ全てがメンバーの自腹だ。

「正直言って結構な負担ですが仕方がない。地域猫として認められるよう、細心の注意を払います」

難しいのは地域住民が猫を「地域猫」と認めなければ、地域猫活動は成り立たないところだ。

この記事を読んで、そんなに皆で猫のことを心配するのなら、家に入れてあげればいいのにと思ってしまう。外敵、人間が一番狂った外敵になるのですが、どうしても猫を苛める奴が必ず居る。それならば、家に入れてあげて、楽しく過ごそうよ、ということには、何か問題ありますか。

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20100514

朝日・朝刊 社会

猫に餌「住民に被害」

加藤元名人「敷地外で続ける」

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集合住宅に集まる野良猫に、将棋の元名人加藤一二三・九段=東京都三鷹=が餌をやり続けたために悪臭などが発生し苦痛を受けたとして、近隣住民らが、加藤さんに餌やりの中止や慰謝料など約640万円の支払いを求めた訴訟で、13日東京地裁立川支部で判決が下された。

判決は午後になった。判決によると、加藤さんは1993年ごろから野良猫に餌をやり始め、周辺に現われる猫が18匹になった。2002年には庭で生まれた子猫6匹について、餌をやったり、猫が凍死しないように玄関前などに段ボールやバスタオルを置いたりした。不妊去勢手術をしたため、現在は4匹まで減ったが、原告住民らは、猫のフンの始末を余儀なくされたほか、洗濯物に臭いがついたり、車に傷をつけられたりした。

市川正巳裁判長は判決の中で、「猫には、餌やりだけでなく、段ボールを用意してすみかを提供しているのだから、『飼育している』と認めるべきだ。猫は原告住民に様々な被害を及ぼしており、『迷惑を及ぼす恐れのある動物を飼育しないこと』と定めた管理組合の条項に違反し、住民らの人格権を侵害する」と慰謝料の支払いを命じた。加藤さんの「猫は『迷惑を及ぼす恐れのある動物』にあたらない」との主張には、「小鳥や金魚は含まれても、小型犬や猫はふくまれない」と判断。そのうえで「動物は家族の一員、人生のパートナーとしてますます重要になっているが、集合住宅にはアレルギーの人もおり、人と動物との共通感染症への配慮も必要。犬や猫の飼育を認めるようにするには集合住宅の規約の改正を通じて行なわれるべきだ」との考えを示した。

裁判では、「動物愛護」の精神による餌やり行為が、集合住宅における他の居住者の「人格権」を侵害するかどうかが焦点となった。

★人格権とは=生命や身体、自由や名誉など、個人が生活を営むなかで他者から保護されなければならない権利。侵害した場合は損害賠償が生じる。これまでの民事裁判の判決では軍用機の騒音、焼き鳥屋のにおい、水道水を汚染する可能性がある産業廃棄物処理場建設などが「人格権を侵害する」と判断されたケースがある。

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20100514

朝日・朝刊

天声人語

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将棋の元名人で、現役55年を誇る加藤一二三さん(70)は、ものごとへの「こだわり」を語る伝説が多い。盤上では居飛車に棒銀、対局中のネクタイは長いが袖は短め、暖房は静かな電気ストーブで、出前は昼夜ともうな重ときめている。

タイトル戦を指す旅館で、音が気になると庭の人工滝を止めさせた話は有名だ。その九段にして、こだわりの一手が通らぬこともある。加藤さんが東京地裁立川支部に204万円の支払いを命じられた。

争いの舞台は、棋士が住む庭付き集合住宅。加藤さんは長らく玄関先や庭で、多い時には約20匹の野良猫に餌を与えてきた。増やさぬ努力をしたものの、フンや鳴き声に悩む住民たちが裁判に訴え、餌やり中止と慰謝料の判決が下った。

「迷惑」は加藤さんの鼻や耳にも届いただろうが、「動物愛護だ」と一歩も引かなかった。裁判所にも禁じ手と断じられ、控訴するそうだ。5年前の公式戦で反則をとがめられて以来の〈待った〉である。

住居ひしめく大都会では、餌づけで野良猫が居ついたといったもめごとが絶えない。飼い猫と野良猫の間に、皆でかわいがる「地域猫」がいる。フンの処理や不妊手術まで、近隣で責任を分かち合う工夫だ。

腹ぺこの子猫がにゃ~と鳴けば、誰しもぐっとくる。かといって、勝手に地域猫を始められても困るし、人になれた猫は虐待の的にもなりやすい。判決文に「一代限りの命を尊重しながら、時間をかけて野良猫の総数を減らしていく必要がある」とあった。「捨てないで」と受け止めたい。