2010年5月30日日曜日

首相の普天間「決着」

先の衆院選で民主党の鳩山由紀夫代表は、普天間飛行場を国外、最低でも県外に移設するんだと大見得を切った、それ以外にもできもしない、鼻先にニンジン型の利益誘導の戦法で、大量の票を獲得、そして政権交代を実現させた。民主党代表の鳩山氏は首相、総理になった。特に沖縄県民には圧倒的に支持された。沖縄の人々の積年の思いを、一票に代えさせた。期待させて、、、そして、裏切った。

それから、民主党を含めた三党連立政権は、その後、政治とカネ問題以外にも、ゴタゴタは続いた。このゴタゴタ、メッチャクチャの一つ一つは、ここでは触れない。まだまだこれからもメッチャクチャが続きそうだなので、参院選挙前にはこのブログでその「総集編」を考えている。29日の新聞は、辺野古移設を閣議決定したことをとりあげた。新聞には、多くの国民、特に沖縄の人々の失望や怒り、政権与党への不信の言葉が溢れていた。

以下は5月29日の朝日新聞・朝刊の記事を転記した。

鳩山由紀夫首相は28日夜、臨時閣議を開き、この日午前に発表した日米共同声明を確認し、米軍普天間飛行場(宜野湾市)を名護市辺野古周辺に移設するとした政府方針を閣議決定した、これに先立ち社民党党首の福島瑞穂・消費者担当省が閣議決定への署名を拒んだため、首相は福島氏を罷免、同党は連立政権離脱の検討に入った。首相は記者会見で「5月末決着」の前提としていた地元と連立与党の合意が得られなかったことを認め、陳謝した。政権内では首相への失望が広がっており、政権運営は厳しさを増している。

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新聞の題字だけを拾い書きしておこう。題字を読めばその記事の内容は概(おおむ)ね想像できる。

拒否の福島氏を罷免/首相謝罪「沖縄傷つけた」/社民、連立離脱論強まる

政権一層の弱体化/見識なき政治主導の危(あや)うさ

砂上の日米合意。実現困難、普天間固定化

社民覚悟の罷免。「首相に正義ない」

修正最小限、歓迎の米

官のネットワーク構築を/日米の信頼関係傷つけた/振興策で沖縄抑えられぬ

失望と怒り移設厳しい・沖縄知事

首相誤算の連続=県外「もう言わない」心算がーー/「徳之島は命綱」崩れた」青写真/孤立の末「合格点にはほど遠い」

首相会見要旨「沖縄の理解得られてない」

基地の考え方福島氏と根本的に違った

社民は沖縄裏切れぬ/党の筋通した

日米共同声明 米の意向色濃く反映/沖縄負担減一部盛る

野党批判=沖縄の理解ない、必ず破綻

中国・鳩山政権の不安定化懸念/韓国・朝鮮半島有事にらみ歓迎

金が来ても辺野古の海に捨てて

期待は幻、沖縄怒る/切捨て また/基地の痛み共有しない国

徳之島3町長と知事=訓練受け入れ反対姿勢確認

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20100529

朝日・朝刊

社説/首相の普天間「決着」

政権の態勢から立て直せ

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これが、鳩山由紀夫首相の「5月末決着」の姿だった。深い失望を禁じ得ない。

米海兵隊普天間飛行場の移設問題は最後まで迷走を続けたあげく、政府方針が閣議決定された。臨時閣議に先立ち発表された日米共同声明とともに、移転先は名護市辺野古と明記された。

これは、首相が昨年の総選挙で掲げた「最低でも県外」という公約の破綻がはっきりしたことを意味する。首相の政治責任は限りなく重い。

首相は決着の条件として、米国政府、移転先の地元、連立与党のいずれの了解も得ると再三繰り返してきた。

しかし、沖縄は反発を強め、訓練の移転先として唯一明示された鹿児島県徳之島も反対の姿勢を崩していない。

社民党党首の福島瑞穂・消費者担当相は国外・県外移設を貫くべきだとして方針への署名を拒み、首相は福島氏を罷免せざるを得なくなった。連立の一角が崩れたに等しい打撃である。

「5月末決着」という、もうひとつの公約すら守れなくなることを恐れ、事実上、現行案に戻ることで米国とだけ合意したというのが実態だろう。

地元や連立野党との難しい調整を後回しにし、なりふり構わず当面の体裁を取り繕おうとした鳩山首相の姿は見苦しい。

 

同盟の深化も多難

この「決着」は、大きな禍根を二つ残すことになろう。一つは沖縄に対して、もう一つは米国政府に対して。

政権交代の結果、普天間の県外移設を正面から取り上げる政権が初めて誕生した。県民が大きな期待を寄せたのは当然であり、そのぶん反動として幻滅が深くなることもまた当然である。

日米合意は重い。だが辺野古移設は沖縄の同意なしに現実には動くまい。首相はどう説得するつもりなのか。

それが進まなければ、2014年までの移設完了という「日米ロードマップ」(行程表)の約束を果たすことも極めて困難になる。それとも強行という手段をとることも覚悟の上なのか。

一方、米国政府に植えつけてしまった対日不信も容易には取り除けない。

きのうの共同声明は「21世紀の新たな課題にふさわしい日米同盟の深化」を改めてうたった。両国が手を携えて取り組むべき「深化」の課題は山積している。だが、普天間問題の混乱によるしこりが一掃されない限り、実りある議論になるとは考えにくい。

私たちは5月末にこだわらず、いったん仕切り直すしかないと主張してきた。東アジアの安全保障環境と海兵隊の抑止力の問題も含め、在日米軍基地とその負担のあり方を日米間や国内政治の中で議論し直すことなしに、打開策は見い出せないと考えたからだ。その作業を避けたことのツケを首相は払っていかなければならない。

「問い」あって解なし

普天間問題の迷走は、鳩山政権が抱える弱点を凝縮して見せつけた。

成算もなく発せられる首相の言葉の軽さ。バラバラな閣僚と、統御できない首相の指導力の欠如、調整を軽んじ場当たり対応を繰り返す戦略のなさ。官僚を使いこなせない未熟な「政治主導」。首相の信用は地に落ち、その統治能力には巨大な疑問符がついた。

もとより在日米軍基地の75%が沖縄に集中している現状はいびつである。県民の負担軽減が急務ではないかという首相の「問い」には大義がある。

しかし、問いには「解」を見いだし、実行していく力量や態勢、方法論の備えが決定的に欠けていた。

普天間に限らない。予算の大胆な組み替えにしても「地域主権」にしても、問題提起はするものの具体化する実行力のなさをさらしてしまった。

首相と小沢一郎幹事長の「政治とカネ」の問題や、利益誘導など小沢氏の古い政治手法も相まって、内閣支持率は20%を割り込むかというところまできた。鳩山政権はがけっぷちにある。

55年体制下の自民党政権であれば、首相退陣論が噴き出し、「政局」と永田町で呼ばれる党内抗争が勃発するような危機である。

しかし、鳩山首相が退いても事態が改善されるわけではないし、辞めて済む話でもない。誰が首相であろうと、安保の要請と沖縄の負担との調整は大変な政治的労力を要する。そのいばらの道を、首相は歩み続けるしかない。

そのためには民主党が党をあげて、人事も含め意思決定システムの全面的な再構築を図り、政権の態勢を根本から立て直さなければならない。

参院選の審判を待つ

何より考えるべきなのは鳩山政権誕生の歴史的意義である。有権者が総選挙を通じ直接首相を代えたのは、日本近代政治史上初めてのことだ。

政治改革は政権交代のある政治を実現した。永久与党が短命政権をたらい回しする政治からの決別である。選ぶのも退場させるのも一義的には民意であり、選んだらしばらくはやらせてみるのが、政権交代時代の政治である。

歴史的事件から1年もたたない。政治的な未熟さの克服が急務とはいえ、旧時代の「政局」的視点から首相の進退を論じるのは惰性的な発想である。

普天間への対応も含め、鳩山首相への中間評価は間もなく参院選で示される。首相は「5月末」に乗り切れても、国民の審判から逃れられない。