渡辺淳一
1933年10月24日札幌生まれ。
札幌医大卒。
医学博士。
元札幌医大講師。
「光と影」で70年度上半期の直木賞を受賞。
「創作の現場から」
渡辺氏が自らの創作活動において、いろいろ考えたことを、エッセイ集として「創作の現場から」にまとめた。
この作品は1994年2月、集英社より刊行されたが、文庫収録にあたった。
このエッセイをダイジェストにと思ったが、バラバラに書かれている内容を、纏めて、一つの文章にするのはさぞかし難しい。
それで、皆さんには、この本を読んでいただくのが一番良い方法だと思う。
そんな結果、せめて、本の目次だけですまないけれど、書かしてもらう。
文章を書きたいと思っている方は、その程度のことだけれど、お付き合いくださいな。
私は70歳を先月に迎えた老人です。
でも、老人になっても、なんとか他人さまに、気の効いた文章を書きたいと思い続けていた。それでも、自らのありふれた感性を何とか、物(もの)怖(お)じなく書けたら好いなと思っている。
決して、今回の渡辺淳一さんのことを惚れこんでいるわけではないが、古本屋で100円で買ったこの本はそれなりに、私には大いに勉強になった。
小説や評論、もしくは各種の小論にちょっと面白、可笑しく、興味たっぷりに書きたいと思われている方なら、この本をお買い上げになられたらどうでしょうか。
★目次
第一章
・主題の発見
・書き出しとエンディング
・題名とネーミング
・視点・会話・地の文
・人物デッサンとは
・実生活と小説の世界
・短編と長編
・書斎の周辺
・新人のころ
・体力と気力
第二章
・作家と編集者
・作家と読者
・作家と読書
・作家と年齢
第三章
・歴史・伝記小説について
・小説と映像について
・男女小説について
★この本の最後に「あとがき」として自らの本の内容とは違うコメントを出していた。
この「あとがき」をここに転載させてもらった。
「あとがき」
このエッセイ集は、大きく分けて三つの章から成り立っている。
しかし、「小説すばる」誌上での連載の順番からいうと、第三章が初めてであった。
ここでは、日頃、わたしがいろいろ小説に抱いていた感想を、実作者の立場から記したもので、いわば実感的小説論、とでもいうべきものである。
これを書くうちに、実際の創作の現場そのものに触れてみようということになり、それが結果として、小説の書き方というところまで広がり、第一章ができあがった。
したがってこの章が、これから新しく小説を書こうとする人、あるいは少し書きはじめた人への参考、または指針となりうれば幸いである。
これに続く第二章は、これまで三十年間、小説を書いてきた足取りを基に、小説とその周辺との関わり合いについて記したものである。
各回、それぞれテーマが決まっているが、みな一つのつながりがあるもので、どこから読みはじめ、どこで終えても一向にかまわない。
いずれも、わたしが編集者に話しかける形でつくられたので、そのまま語りの口調が残されている。
これから社会がどのように変わり、小説がどのように変わろうとも、いまの時点でわたしはこう考え、こう歩んできた。
いわばわたしという作家の手の内のほとんどを、このエッセイで記したことになる。
1994年1月