2009年11月4日水曜日

晩秋の国道1号線を歩く

10月22日、金融機関の役員や担当者らと、湘南地区某所の大手建設会社の社宅を、リノベーションして再販する事業の可能性を探るため、現地で打ち合わせすることになっていた。

戸塚影取にもう一つの検討中のプロジェクト案があって、その企画も急がなくてはならなくて、弊社のスタッフだけは、22日の早朝に湘南地区に足を踏み入れる前に、この戸塚影取に集合することになった。

私は、はたと考えたのです。権太坂から車に乗って会社のある天王町まで出るぐらいなら、このまま自宅から歩き出して、戸塚影取に到着さえすれば、後は車に乗せてもらえる。確実に決められた時間内に着きさえすれば、全てオッケーだ。

今年の夏には、恒例の真夏の長距離散歩ができなかったことを思い出して、急遽晩秋長距離散歩を決行することにした。今回は全長約12キロメートルだ。人間の体には1年(強)に、半年(中)に、3ヶ月(中)に、1ヶ月(弱)にそれぞれ1度は、筋肉に強中弱とストレスをかける必要があるのだ、と考えているのです。

06:45に家を出た。環2境木、環2平戸、不動坂から横浜新道に入って、戸塚警察、原宿。会社に向かっている同僚に、私は歩いて戸塚影取に向かっているので、俺のことは気にしなくてもいいから、と携帯電話で知らせた。

横浜新道は、神奈川区常盤台から戸塚区上矢部に至る4,5キロメートル。

不動坂交差点から大坂上までの道路を、ワンマン宰相と言われた吉田茂首相が、大磯の自宅と東京の行き帰りに、国道1号線の戸塚駅隣の踏切で、長時間電車の通過に待たされることが度々あって、そのことに業を煮やして、踏み切りを通らなくてもすむように、バイパスとして作ったのです。その吉田茂首相のワンマンぶりから、世の人々は、この部分の道路のことを愛と皮肉を込めて「ワンマン道路」と言うようになったそうだ。

どんなことがあっても、08:30に戸塚影取に着いていなければ、その後のこともあって、スタッフに迷惑をかけることになる。この私が、皆に迷惑をかけるなんて絶対許されないことだ。いつものペースではなく、2段ぐらいギヤーを高速にいれた。風はひんやりしているのですが、汗がシャツに滲んできた。額の汗のつぶが下がってきて、目に入る。

車の排気ガスが、以前よりも少なくなっている。かっては、黒煙を噴射しながら走っていた車もあったが、私が歩いている間はそんな無節操な車は走っていなかった。廃ガス規制をしているからなのだろう。かって、道路脇にある建物や工作物などは排気ガスで煙ったように黒ずんでいたものでした。

洗濯物を干したままの家がある。昨夜は帰って来なかったのか、それとも今朝洗濯物を干して出かけたのだろうか。干してある洗濯物の中に女物もあるので、軽く目を向けただけで、じろじろ見ることは避けた。空き巣泥棒なら、こんなことでも狙いどころにするんだろう。干してある洗濯物で、その家族の構成や職業、年齢、生活の豊かさ度合いまで想像がつくのですが、余り品のよくない思いつきだと恥じた。

家の周りに、その家の家業に必要な物なのだろうが、工事道具や、建材やらが乱雑に積み上げられている家もある。もう少し片付ければ、いいのにと思う。そんなことにかまっていられない程に忙しいんだよと怒られそうだ。お金にも忙しいのかも知れない、と思いついてこれもいやらしい想念だと恥じた。

歩道の整備が行き届いていない所が、いくつもあった。普段余り歩く人が少ない所なんだろうが、やはり整備しておいて欲しいと思った。老人が歩く所を見つけだせないようでは困るではないか。旧国道一号線と横浜新道が交わる辺りです。

柿が、あちこちの畑や家の庭先に、たわわに実っていた。子どもの頃、高さ10メートルもある柿の木になった柿を、秋から冬にかけて全部食ってしまうほど好きだったのです。餓鬼でした。八百屋さんに並んでいるような大きくて立派なものではなかったのですが。私には、昔から真っ赤になった柿には理性を失ってしまう性癖があって、ほんの5,6年前まで、他人の柿を黙って採(盗)ることが悪いことに決まっているのに、気付いた時には、もう口の中で噛み砕いていたものなのです。他人の柿を失敬することは善くないんだ、ということが、どうしても解らなかったのです。制御が利かなくなるのです。私は柿泥棒だったのですが、この手の罪の意識の薄い犯罪者は他にもいるように思う。ところが、5年前からイーハトーブの果樹園を自前で保有することになってからは、こんな恥ずかしい行為をすることは、自然になくなった。豊かになったのです。犯罪を減らすためには、やはり豊かにならなくてはならないようですね。

原宿を過ぎたところの交番で、交番の前に立つお巡りさんに、お早うございますと声を掛けられた。突然だったのですが、上手く大きな声でお早うございますと、返礼できた。好(よ)かった。この数年間、神奈川県警は不祥事が続いて、肩身の狭い思いをしてきたのだろう、名誉挽回の一策として、いつごろからか、交番前に立っての警らを始めたのでした。学生時代、角棒でジュラルミンの盾に衝突してから、警察官を見るにつけ、小突いてやりたい衝動に駆られてきたのですが、こんな挨拶されちゃって、にっこり笑って応えてしまった私は、いつの間にか普通のオジサンになっちゃったみ・た・い。どうせ、交番前で立って警らをするんだったら、運転中の携帯電話は駄目よ、とか脇見運転は危険だよ、お父さん、飲酒運転しないで帰ってきてね、なんて標語の書いた幟(のぼり)でも掲げてみたら、どうでしょうか。

08:10に戸塚影取に着く。所要時間は1時間25分。鳩首、残念ながらこの物件の企画を没にした。