2009年11月22日日曜日

必殺仕分け人、大鉈(なた)を振るう

来年度予算要求の無駄を洗い出す行政刷新会議は、「事業仕分け」を国立印刷局市ヶ谷センター(東京都新宿区)で行った。全事業を廃止、地方に移管、整理や削減、に仕分け、見直した。平たく言えば、どの事業に国の予算をつけるか、削るか、減らすか、やめるか、地方にまわすかを選択する予備的事前打ち合わせだ。前半は終わった。

誰でもが傍聴できる会場での、仕分け人と官僚とのやり取りは、面白いと言っちゃ叱られるかも知れないが、この初めての試みに私は興をそそられた。ネットでも中継された。政権党が、自民党から民主党に変わって、本気で行政の無駄をなくし、脱官僚を目指すという、この何とも言えぬ語感のさわやかなことよ。選挙戦で掲げたマニフェストを実行するためにも、先ずはこの会議を成功させたいと民主党は考えているのだろう。この行政刷新会議の仕分け作業は、手法において私には本当に、こんなことでエエのか?と思うところも多々ある。いいか、悪いかはちょっと横に置いといて、印象は鮮烈だ。何種類もある事業の一つ一つを、バッサバッサ、廃止か地方に移管か、整理や削減、そのどれかに評決していくんですから。これは、革命ですよ。私には、個人的にどうしても納得できない判断が幾つもあった。それにしても、この企画は私には、目から鱗落ち、大事件だ。

この「事業仕分け」はこれからが後半。それからが、行政刷新会議の本会議。今後どのように進められていって、予算編成にどのように活かされるのか、注視を劣らないことが肝要だ。ここは、どうしても歴史的に画期的な事件だと私は捉えているので、この状況の一部を、後々のために記録しておく価値があるのではないかとキーボードを叩いているのです。

2,3日前、朝のテレビに必殺仕分け人役の民主党の蓮舫議員が出演していた。政府系の独立行政法人や公益法人が補助金や交付金を溜めに貯めた基金を政府に返還をするようにと評決したことについて、かって野党だった民主党の蓮舫さんの話が面白かったので、ここで紹介しておこう。国会議員を何年もやってきたのに、今までの立場は野党だったので、調査できる範囲に限りがあって、政府系の独立法人の実態が判らなかったのです、とのことでした。なんでや? 国会議員と言えども、易々とはこの手の調査はできないらしい、ということに驚いた。相手は、民間会社ではなく政府系の法人だぞ。国民は、国会議員によりよい国づくりのための政治を信託しているのです。役員が何人いてそれぞれが幾らの給料を貰っていて、基金として幾ら保有していて、何の目的でこれらの基金をどのように使おうかと考えているのか、さっぱり判らなかったのだ、ということだった。天下りする方法にも手が込んでいて、役員や理事に就任すると、すぐにそれは天下りだと指摘され(バレ)るので、嘱託社員としてなら、注目度も低く、バレにくい。隠れ蓑です。嘱託社員と言えども給料や扱いは全く理事や役員と同じ。無闇にガッポリ溜め込んだ独法の基金と、新種の天下り方法との、何とも甘い関係なこと。

最近の民主党に、物足りなさは幾らでもある。例えば鳩山首相と小沢幹事長の秘書に絡む政治資金規正法違反問題から所得の申告漏れなど、この幹部二人の金に絡む件はいつまでもすっきりしない。沖縄米軍基地の移設における首相と他閣僚とのちぐはぐな発言といつまでもハッキリしない首相。首相と官房長官の官房機密費についての公開、非公開と発言が変転した。失点や減点ばかりだ。でも、この事業仕分けのお陰で、鳩山内閣の支持率は、幾分下がったけれど、依然として高い支持率を確保している。

党を牛耳り、陰で、内閣を動かす小沢幹事長の不気味さ。この党の幹事長にモノ申せない、民主党の幹部と政府の要人たち。首相は、心とか、友愛とか、そんな言辞を弄(もてあそ)んでいて、ハッキリ言って国務には活かされていない。政務や行動で示して欲しいものだ。一体全体、沖縄の人の「心(こころ)」を、どうするんだ。

この事業仕分け結果が来年度予算に反映されるかどうかは、最終的には財務省の予算査定で決まる。廃止と評決された事業の所管省庁から、結果は参考程度にしかならない、との声もあるが、藤井裕久財務相は事業仕分けで出た結論は的確に査定するように主計局に指示した、と発言した。仕分けを尊重する考え方だ。どうかな、と私は疑問をもつ。

昨日で前半の事業の仕分け作業は終わった。この作業ではいろんなことが判明した。今後どのように政策にいかされるのか、じっくり見届けさせていただくことにしよう。

初日に行われた事業仕分けの結果は以下の通りでした。行政刷新会議のホームページの一部(初日分)を貼り付けさせていただいた。

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政府の行政刷新会議作業グループ(WG)による11日の事業仕分け結果の詳報は次の通り。
 ▽国土交通省
 【国土・景観形成事業推進調整費】年度途中で再開可能となった公共事業に充てるため、2010年度予算に200億円を概算要求。「ほかの予算分野の流用で対応できる」「厳格な運用が求められる」などを理由に13人中12人が廃止、1人が予算削減と評価し、廃止に。
 【下水道事業】概算要求は5188億円。仕分け人から「人口の少ない過疎地などでは、下水道よりも低コストな浄化槽などの汚水処理施設の整備を進める方が効率的だ」との指摘が相次ぎ13人中廃止1人、自治体の判断に任せるが7人、10%程度の予算削減が3人などとなり、判定は「地方自治体に財源を移した上で、実施は各自治体の判断に任せる」となった。

▽国交省、農林水産省
 【港湾、漁港、海岸、河川環境整備事業】バレーボール場や広場などレクリエーション施設の整備などに批判が集中し、予算の削減を求めた。

▽農水省
 【農道整備事業】都道府県の農道整備を国が補助する事業で、10年度の概算要求額は168億円。農水省は中山間地での農業生産性向上のため必要だと主張したが、「一般道と一体的に整備するべきだ。国が補助する根拠が不明だ」といった意見が相次いだ。11人中で廃止が6人、自治体の判断に任せるとの意見が1人、予算削減が4人だったが、最終的には廃止と判定された。
 【里山エリア再生交付金と田園整備事業】約90億円を要求。森林や用水施設、遊歩道など居住環境の整備を助成する里山エリア再生交付金と、都市と農村の交流目的で施設整備などを行う田園整備事業はいずれも廃止。重複する事業が多いことや効果が不明だとの指摘が多く出た。
 【農業農村整備事業】農村集落の下水処理施設の整備を進める農業集落排水事業は「自治体に財源を移譲し、判断を任せるべきだ」と、国が補助事業として行う必要はないとの意見が大勢を占めた。農業に使う水利施設の整備や維持を行うかんがい排水事業は「予算要求の削減」と判定。1774億円を要求しているが、20%程度の削減が適当との声が多かった。

▽国交省
 【道路整備事業】1兆2332億円を概算要求。仕分け人からは、費用対効果分析で効果が費用を上回って着手できる事業でも「コストをカットすべきだ」とコスト縮減を求める意見などが続出した。事業評価の厳格化やコスト縮減、道路構造令の柔軟化などにより予算の見直しを行うとした。
 【河川改修事業】1945億円を堤防の整備などに要求。「改修個所の個別の評価を行い、優先順位を明示すべきだ」などの意見が相次いだため、個所ごとの事業評価、コスト縮減のインセンティブの導入などにより、予算の見直しを行うと判定した。

▽厚生労働省
 【健康増進対策費(地域健康づくり推進対策費)】食生活改善の啓発活動で、厚労省は1億8600万円を要求。仕分け人から「国は情報提供だけで足りる」「農水省の事業と重複している」と、必要性を疑問視する意見が相次いだ。13人中8人が廃止、5人が自治体や民間への委託を選び、判定は廃止。
 【レセプトオンライン導入のための機器整備等の補助】厚労省は要求額215億円を151億円に減額する方針を表明したが、仕分け人から「所得が高い開業医に補助する必要はない」などと厳しい指摘が続出。13人中7人が10年度予算への計上見送り、5人が廃止、1人が民間委託との意見で「来年度予算の計上見送り」と判定された。
 【独立行政法人雇用・能力開発機構運営費交付金等】もともと「予算の無駄が多い」との指摘があり、麻生政権が08年12月に同機構の廃止と事業の大半を別法人に引き継ぐことを閣議決定済み。厚労省は「高度な職業訓練は国でしかできない」と主張したが、判定は「地方や民間への移管や業務のスリム化をさらに進めるべきだ」となった。
 【診療報酬の配分(勤務医対策等)】仕分け人は「小児科など医師が必要な診療科に報酬を重点配分すべきだ」「厚労省のこれまでの価格設定は失敗」と指摘。16人全員が配分の見直しが必要と判定し、開業医と病院勤務医の収入格差の平準化や、整形外科や眼科など収入の高い診療科の報酬引き下げなどを求めた。
 【後発品のある先発品などの薬価の見直し】主成分が同じで安価な後発薬(ジェネリック医薬品)がある先発医薬品について、後発薬並みの薬価水準まで引き下げるかどうかを議論。厚労省は「国内メーカーの開発意欲をそぐ恐れもある」と主張したが、15人全員一致で、一層の引き下げを必要とする「見直し」と判定した。
 【医療関係の適正化・効率化】医療機関や薬局に支払われる診療報酬の不正をチェックする厚労省の外郭団体「社会保険診療報酬支払基金」と「国民健康保険団体連合会」を統合すべきだとして「見直し」とした。入院時の食費・居住費も「見直し」と判定、「療養病床に比べ、一般病床の患者の自己負担は低い」と患者負担増につながる意見も。整骨院など柔道整復師の報酬請求の一部ケースで減額を求めた。
 【若者自立塾(若者職業的自立支援推進事業)】ニートなどの若者に合宿型の施設で就労体験をしてもらう事業で、10年度は3億7500万円を要求。作業グループでは対策の必要性自体は否定されなかったものの、08年度の利用者がわずか490人にとどまったことがやり玉に挙がった。12人中5人が廃止、4人が「自治体や民間に任せる」と割れたが、最終的には廃止が決まった。

▽文部科学省
 【施設関係独立行政法人】「青少年自然の家」などを運営する国立青少年教育振興機構と、教員研修センターは地方自治体にも類似施設があり「地方または民間非営利団体(NPO)に移管」。男女共同参画に関する研修を実施する国立女性教育会館は、役員報酬が高額なことなどから国からの運営費交付金(10年度概算要求額約6億円)を削減する。
 【子どもの読書活動推進事業と子どもゆめ基金】読書活動を進めるために教員や保護者向けの資料を作り、ネットサイトを運営する。「地方や市民レベルの活動があり、国が行う必要はないのではないか」との意見が出され廃止。「子どもゆめ基金」についても廃止の判定が出された。
 【スポーツ予算】地域のスポーツ施設整備やドーピング防止活動などの事業について、予算の大幅な削減が必要と判定。サッカーくじの収益をもとに独立行政法人日本スポーツ振興センターが実施する事業などとの類似が理由だ。
 【独立行政法人日本芸術文化振興会】芸術家への助成など振興会が関係する事業は、運営の方法に批判が目立ち予算の削減と判定された。
 【芸術家の国際交流等】若手芸術家の海外派遣など交流事業(要求額32億円)は、帰国後の活動状況を調査していないことなどから予算を削減。全国約5千カ所で小中学生に日本舞踊や茶道などの伝統文化を体験してもらう「伝統文化こども教室」など3事業(22億円)は「国として行う必要はない」となった。
 【放課後子どもプラン推進等】空き教室で子どもの居場所をつくり地域の交流も支援する放課後子ども教室推進事業は、厚労省の「放課後児童クラブ」と似ていると指摘されたが、「放課後の居場所は大事」と強調する声もあり、結論は「継続」「自治体に任せる」の両論併記。家庭教育支援基盤形成事業などほかの3事業はそれぞれ「廃止」や「自治体に任せる」などとなった。
 【学校ICT活用推進事業等】小中学校で配備が進む電子黒板やコンピューターなどICT(情報通信技術)機器を効果的に活用してもらうため、教員の研修などを実施する学校ICT活用推進事業(要求額7億円)は、機器そのものの必要性に疑義が示され廃止。新学習指導要領に基づく11年度からの小学校での外国語活動(英語)必修化に向けた「英語教育改革総合プラン」(モデル事業)も、教材の全児童らへの配布が無駄遣いなどと指摘され、廃止となった。
 【農山漁村におけるふるさと生活体験推進校事業等】小学生に自然の中で1週間程度の宿泊体験をさせるモデル事業。メンタルヘルスなどに対応するため、専門医を学校に派遣する事業と一緒に論議された。モデル事業として行われることに疑問の声が上がり、評価は「廃止」と「地方自治体へ移管」が拮抗(きっこう)。結論は「国の事業として行わない」となった。