2010年7月14日水曜日

参院選、民主敗北衆参ねじれ

20100711 日曜日の朝。選挙に行くようにと、市役所から届けられた封書を、家人がテーブルの上に朝食の納豆と梅干の横に並べて置いといてくれた。実は、この日、投票日だということは、昨夜も一昨夜も確認していたし、意識もしていたのですが、どうにも頭の中が整理できないでいた。

昨年(2009)の9月、多くの人が望んだように、私もその一人だったのですが、長年の自民党政権(後には公明党との連立)に嫌気がさして、何が何でも政権交代だと訴えた民主党に、花盛りのマニフェストの検証もせずに、一票を投じたのです。政権交代という言葉に乗せられてしまった。期待を込めて投票した。が、その後の鳩山由紀夫首相、小沢一郎幹事長の「政治とカネ」から始まって普天間移設問題まで失政続き、何もかもシッチャかめっちゃかの挙句、首相を菅直人に挿げ替えて、この参議院選挙を迎えたのでした。この何もかもシッチャかめっちゃかの内容については、開いた口が塞がらないままだ。

こんなことがあって、私には一票の重みを、身に沁みて理解したというか、痛感させられた。そこで、今日の投票が恐かったのです。会社に出て仕事をしていても落ち着かない。昼過ぎ、なんとか意を決して、投票所に向かった。受付には、自宅の近所の親しくしている高校生・シュンが居て、少しは気が解(ほぐ)れたものの、投票用紙に書き込みをするブーツに行って、再び凍ってしまった。鉛筆を握った指は、文字を書くことを拒否した。選挙区も比例区も、投票用紙には何も書かずに白紙のまま、投票箱に入れた。

選挙の結果は、誰もが予想していた通り、民主党にとっては惨憺たるものだった。

参議院定数は242人。民主党は改選54議席を大きく下回って44議席に、国民新党は0で、与党系の新勢力は110になって半数の121人を割り込んだ。衆参で多数派は異なるねじれ状態になった。衆院の民主党と国民新党の連立政権の議員数が3分の2以上ならば、法案が衆院から参院に回って否決されても、衆院で再び可決されれば法案は成立するのだが、現在ではその3分の2に満たない。民主党は、難しい国会運営になる。一番切実な問題は、このままならば、予算関連の法案が通らないことだ。

政治家さん、汗を流そうよ。

前の首相は、母親から何年も前から月に1500万円も貰っていて、それを知らなかったなんて言って憚らない、浮世離れしたお人だった。今度の菅首相は、今年の1月には消費増税は「逆立ちしても鼻血が出ないほど完全に無駄をなくしてから」と言っていた。ところが、参院戦が始まって、何の党内論議もなしに、唐突に消費税を10%にするなんて言い出した。その後、年収200万から300万、400万の人には、増税にならないように還付します、とか、果てには、今すぐにでも増税が実施されるのではないかと思われてしまって、私の事前の説明が足りなかった、などと火消しに走った。この党が如何に、いい加減かということを露呈してしまった。これが政権党とは情けない限りだ。

どこかで読んだフレーズを思い出した。「政治家は、国の将来を考えるが、政治屋は、選挙のことだけ考えている」。このような文章だったけれど、本気で政治に取り組んでくれよ、いい加減にしてくれないと、俺、本気で一揆を起こすぞ。

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20100712

朝日・社説

参院選 、民主敗北

2大政党にさらなる責任

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菅直人首相と民主党にとっては、極めて厳しい審判となった。参院選で民主党は改選議席の54を大幅に下回り、自民党の獲得議席にも及ばなかった。民主、国民新の連立与党としても過半数を維持できなかった。

政権交代に大きな期待を寄せた民意が、わずか10ヶ月でこれほど離れてしまった。菅首相と民主党は深刻に受け止めなければならない。

鳩山前政権の度重なる失政が影を落とし、消費増税での菅首相の説明不足や発言の揺れが大きく響いた。

短命続きもう卒業を

民意は、菅首相率いる民主党政権に退場を促すレッドカードを突きつけたのだろうか。

政権交代そのものが間違いだったという判断をくだしたのだろうか。

そうではないと私たちは考える。

2大政党の主な公約が似通う中で、何を選ぶのかが難しい選挙だった。

とはいえ比例区の得票では民主党が自民党を上回り、非改選議席を加えれば、なお第一党だ。有権者は民主党に猛省を迫ったが、政権を手放すよう求めたとまではいえまい。

民意は一方で自民党を復調させた。ようやく実現した「2大政党による政権交代のある政治」をさらに前に進め、鍛え上げるよう背中を押したととらえるべきだろう。

菅首相は選挙結果を受け、続投を表明した。一層の緊張感を持って重責を果たしてもらいたい。日本では、「第二院」である参院選の敗北により首相が交代させられる事態がしばしば起こってきた。

よほどの惨敗ならやむを得ないとしても、短命政権が相次いだ大きな要因だ。それは腰を据えた政策の遂行を妨げ、国際社会での存在感を著しく損なってきた。もう卒業すべきだろう。

そもそも参院選は「政権選択選挙」ではない。

自民党一党支配の時代、有権者は総選挙で自民党を支えつつ参院選では時の政権の失政を厳しく裁いた。両院の選挙を使い分け「永久与党」を巧妙に牽制してきたともいえる。

政権交代時代を迎えた今、参院選のそのような機能は見直していいはずである。政権の枠組みの変更や首相交代はあくまで総選挙を通じて、という原則に立ち返るべきだろう。

「ねじれ」乗り越えて

参院選の結果、衆参で多数派が異なる「ねじれ国会」が再現する。

自公政権とは異なり、与党は参院で3分の2以上の議席を持たないから、参院で否決された法案を衆院で再可決できない。「真性ねじれ」である。国会運営は困難を極めるに違いない。

菅首相は政策課題ごとに野党に協力を求め、合意形成を探るパーシャル(部分)連合を目指す考えを示した。

自民党の谷垣禎一総裁は早期の解散総選挙を求めており、実現は難しいかもしれないが、方向性は正しい。

新たな連立相手を探す動きがでてくる可能性もある。安易な連立組み替えに右往左往すべきでない。

野党を話し合いの場に引き出すためには、鳩山前政権での強引な国会運営を反省することが欠かせない。

民主党内には多数決偏重を戒め、議論を練り上げるプロセスを重くみる「熟議の民主主義」を唱える向きがある。それを実践する好機である。

ねじれ国会を頭から否定する必要はない。賢く妥協し、納得度の高い結論を導く。そんな可能性も秘めていることを銘記したい。

自民党にも注文がある。

昨夏までのねじれ国会で民主党など野党は「『直近の民意』は参院にある」と主張し、自公政権を徹底的に追いつめようとした。当時、民主党の対応を政局優先と厳しく批判した自民党が今度は逆の立場に立つ。

反対ありきではなく、適切なチェック機能を果たす「責任野党」の見本を示して欲しい。

消費税から逃げるな

民主党の大勢が「消費税が敗因」と受け止めれば、今後、税制改革論議への消極論が強まるかもしれない。

しかし、「消費税10%」を掲げた自民党を有権者は勝たせた。菅首相も「議論そのものが否定されたとは思っていない」と述べた。

膨大な財政赤字を放置できないことは明らかだ。議論は早急に始めなければならない。それが、2大政党があえてそろって負担増を訴えた今回の意義を生かす道でもある。

もちろん行政の無駄に切り込む。政治家が率先して身を切る姿を示す。何より、持続可能な社会保障の全体像を描く作業が欠かせない。

菅首相は日本の将来のために増税が必要だと信じるのなら、逃げずに正面から自民党に協議を呼びかけ、有権者の説得にもあたるべきだ。

民主党内では今後、菅首相の求心力が低下することは避けられまい。菅首相を支える勢力と小沢一郎前幹事長グループとの確執が深まれば、9月に予定される党代表選に向け大荒れの展開となる可能性もある。

しかし党内抗争にかまけることを許すような余裕は今の日本にはない。

全党挙げて参院選敗北を総括し、政権運営の基本方針を定め直す。それが政権をあずかる与党の責任だ。

政権交代を実現させた日本政治の前進を後戻りをさせてはならない。