20110531の朝日新聞・朝刊/国際版
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オーストリア反原発加速。
「2015年までに輸入電力も脱原発」
完成以降30年も未稼働の原子炉
フクシマを機に見学殺到
このようなタイトルで、今のオーストリアの原発政策と、現在の政策に至るまでの経緯をまとめた記事が掲載されていたので、それをそのまま転載させてもらった。他に、ネットで仕入れた情報も付け加えた。福島原発事故の検証にも来たIAEA(国際原子力機関)の本部はウィーンにある。
オーストリアのツベンテンドルフ原発が完成して、その稼動の可否を、78年に住民投票で問うた。結果、過半数(反対が50,47%)といってもわずかな差で否決され、憲法にまで付け加えられるようになった。
その翌年(79年)にスリーマイル島原発事故が起こった。旧ソ連、現ウクライナのチェルノブイリ原発事故が発生したのは、86年のこと。
99年、連邦憲法に「オーストリアで核兵器を製造したり、保有したり、実験したり、輸送したりすることは許されない。原子力発電所を建設してはならず、建設した場合にはこれを稼動させてはならない」の項が盛り込まれた。
また、EU内の原発を有する国々に対しては、「ストレス・テスト」と、その結果の公表を求めている。「ストレス・テスト」とは、天災やテロを想定した原発の耐性審査だそうだ。原発保有国に囲まれているオーストリア1国だけが、核を廃絶しても、地続きの隣国からの事故が発生すれば、元も子もないことになるからだ。
ツベンテンドルフ原発の内部を案内するフライシャーさん=玉川透氏撮影
ドナウ川沿いに建設されたツベンテンドルフ原発
憲法で原発建設禁止をうたうオーストリアが「反原発」の動きを先鋭化させている。老朽原発を抱える旧共産圏の国々に囲まれ、西欧諸国の中でもひときわ危機感が強い。そこの福島第一原発の事故が火をつけた形だが、エネルギーの確保に原発が欠かせないとする中・東欧諸国は「ヒステリー」と冷ややかだ。
菜の花畑が広がるのどかな風景を抜けると、100メートル超の排気筒がそびえる巨大な施設が姿を現した。ウィーンの西約30キロのドナウ川のほとり、「世界一安全な原発」と呼ばれるツベンテンドルフ原発だ。
福島第一原発と同じ沸騰水型炉。170万世帯への電力供給力を秘めるが、実は一度も稼動していない。完成直後の1978年、反対運動の盛り上がりを受けて国民投票が行なわれ、わずか1%未満の差で「お蔵入り」が決まったからだ。
建設費を含め約10億ユーロ(約1200億円)を費やしたとされる施設には、ドイツから原発技術者が訓練に訪れるか、テレビドラアマの撮影ぐらいしか出番がない。最近は、管理棟の一部を小学校の仮校舎として貸し出していた。(追加=山岡 眠り姫と一部では言われているそうな。
半ば眠ったような施設を取り巻く状況は、福島の事故後に一変した。原発のことを知りたいという人たちが、原子炉の内部も見られる週1回の見学ツアーに殺到。「多い時は、定員の4倍の申し込みがある。年末まで予約でほとんどいっぱい」と、案内係のフライシャーさん(53)は驚く。
同国では消費電力の約60%を水力、約30%を火力発電で賄う一方、約6%は近隣諸国の原発による電力を輸入している。だが、福島の事故の直後の世論調査の高まりを受け、政府も風力や太陽光などの代替エネルギー開発への助成を拡大する法案を発表。2015年までに原発による電力の輸入に全く頼らなくするとの目標を掲げた。
また、原発を持たない他の欧州諸国などに呼びかけて「反原子力会議」を発足させ、5月25日のウィーンでの初会合にはポルトガルやギリシャ、アイルランドなど計11カ国が参加。欧州全体の脱原発をめざす「反原子力宣言」を採択した。
欧州連合(EU)は福島の事故を受け、域内の全原発の安全性検査実施で合意した。だが、原発は地球温暖化対策に有効だとする基本姿勢に変わりはなく、脱原発が「国是」のオーストリアには生ぬるく映る。
同国のベルラコビッチ環境相は朝日新聞に「フクシマの惨劇は、原発から安全な再生可能エネルギーに移行する時だと教えてくれた。EUだけに任せてはおけない」と話した。
周辺諸国は推進譲らず
ウクライナを含む中・東欧7カ国で稼動する原発は現在34基で、多くが70~80年代に建設された旧ソ連型だ。こうした老朽原発が国境を挟んで数百キロに点在していることも、オーストリアを神経質にさせている。
中・東欧の原発の安全対策に詳しいウィーン天然資源・応用生命科学大学のウオルフガング・クロンブ名誉教授(67)は「この地域の原発の多くが活断層の近くに位置し、耐震の安全性が疑わしいものもある」と指摘。ほとんど川沿いにあることから、「地震で上流のダムや堤防が決壊すれば、巨大津波に襲われた福島と同じ事態に陥る恐れがある」と警告する。
だが、各国に原発推進路線を変える様子はない。ドナウ川沿いの地震多発地帯に原発2基の増設を計画中のブルガリアは、欧州委員会などの指摘を受けて6月末まで計画を一時凍結したが、安全性に問題がないと分れば再開する構えだ。
6基が稼動するチェコのネチェス首相も「原発は経済の自立に不可欠で、運転中止はあり得ない」。増設を計画するスロバキアやルーマニアなども、原発推進路線に「変更はない」と口をそろえる。
こうした旧共産圏の国の多くは今も、ロシアから冷戦時代のパイプライン網で天然ガスなどの供給を受けている。一方でたびたび供給停止の憂き目にあっており、エネルギーの「脱ロシア化」に原発は欠かせないという事情がある。
西欧諸国には、原発を風力や太陽光などの代替エネルギーへの「橋渡しの技術」(ドイツのメルケル首相)と位置づける向きもあるが、代替エネルギーの開発には膨大なコストと時間がかかる。中・東欧の国々は経済危機で資金が不足し、電力供給の多くを原発に依存するエネルギー体制も確立しており、そう簡単には転換できない。
チェルノブイリ事故を体験しながら、現在も15基が稼動するウクライナのアザロフ首相は「金持ちの国だけが、原発閉鎖の可能性を議論できる」と地元メデイアに語った。 (ツベンテンドルフ=玉川透)
オーストリアの原発政策
78年にツベンテンドルフ原発の稼動が国民投票で否決されると政府は計画していた7基の建設を断念。国内での原発建設を禁じる法律が制定された。86年の旧ソ連・チェルノブイリ原発事故で国民の「原発嫌い」は決定的となり、99年に原発建設禁止などが憲法に明記された。
ところが、どっこい、このツベンテンドルフ原発は、1、000枚のの太陽パネルを備えた太陽光発電所に生まれ変わったようです。この7月24日に操業を開始、年間18万キロワット/時の電力を提供する予定だということをネットの記事で知った。
不用になった設備や部品は、ドイツの沸騰水型原子炉に売却、空いたスペースをドイツの原発従業員向けの研修用として貸し出し、資金調達を図るらしい。操業に際して、200人の従業員が採用された。今までは、先の方の記事で紹介されていたフライシャーさん一人で管理を任されていた。