20130910 朝日・朝刊
IOC総会で、福島第一原発についての質問に答える安倍晋三首相(前列中央)=7日、樫山晃生撮影
国際オリンピック委員会(IOC)の総会で、2020年の東京五輪招致の決め手の一つとなった20130907の安倍首相の発言に、国外の人は当然、国内の多くの人も唖然とした。私も聞き耳を疑ってしまった。
日本は確実に失格するだろうと言い捨てた理事もいた。三陸、特に福島沖を漁場にしている漁民のみなさんこそ、ぎょっとしたのではないだろうか。日本国中が東京開催を大喜びしているように報道されているが、その陰で福島の漁師たちの怒りの声はやまない。この首相発言の今後の波紋に危惧した。
この総会での発言録を20130910の朝日新聞でまとめていたので、それをここに転用、列挙させてもらった。よくも易易と気楽に発言してくれたもんだ。
・状況はコントロールされており、東京にダメージを与えない。(招致演説において)
・汚染水の影響は原発の港湾内の0.3平方キロメートルの範囲内で完全にブロックされている。
・福島の近海のモニタリング結果は、最大でも世界保健機構(WHO)の飲料水の水質ガイドラインの500分の1。
・日本の食品や水の安全基準は世界でも最も厳しく、被曝(ひばく)量は国内のどの地域でも基準の100分の1。
・健康問題は今までも、現在も、將來も、まったく問題ないと約束する。
・抜本解決に向けたプログラムを私が責任をもって決定し、直ぐに着手している。(以上は、総会での質疑で)
だが、現在、今尚、福島第一原発の港湾内には1日300トンの汚染水が、流れ込んでいる。港湾の入り口付近の海水からは、1リットルあたり68ベクトルのトリチウムが先月の18日に検出されている。また、東電自らが「(汚染水)の遮断は完全でない」と認めている。
高濃度の汚染水をためていたタンクから300トンが漏れた事故では、外洋に流れだした可能性がある。これは、直接排水溝から流れだしたと考えられるが、地下に浸透して、原発の施設の地下水脈に合流した可能性もある。
このような状況下、どうして安倍首相はあのような発言できたのだろうか。
五輪が東京で開催されるのは、個人的には嬉しいけれど、安倍首相発言を虚しく聞き流し、福島の海の漁で暮らしている人たちのことを考えると、草々浮かれている場合ではない。安倍首相の発言通り、抜かりのないように対策を講じてもらいたい。日本の国際公約になったのだから。
20130910 朝日・朝刊