20140208 朝日・朝刊
7日、金属探知機が並ぶ入り口(後方)を通ってソチ五輪の開会式へ向かう観客たち=川村直子撮影
20140208、第22回冬季オリンピック競技ソチ大会の開会式をテレビで観た。開会式は7日、2014年にちなんで20:14から始まった。日本時間では、8日午前1時14分だ。
今まで、1964年の東京オリンピックから、夏季冬季の五輪を何度も世界の各地で開催されたが、テレビで開会式を初めから終わりまでしっかり観たのは、2008年の北京と2012年のロンドンと今回のソチ大会だけだ。東京オリンピックは、当然テレビにかぶりついて観た。高校生だった。映画でも2回観ている。
今回のソチは、私にも余裕が生まれたのだろう、充分楽しめた。今までは、明日の仕事に差しさわりがあるとか、酒に酔ってしまったからと言って、実に不真面目な視聴者だった。
競技会場の工事が遅れているとの報道が昨年の年末あたりからあったが、外務省の元官僚が、ラジオ番組で、ロシア人はいつもはチンタラ仕事をするのですが、イザ、後何日までに完成させろということになった時には、短期間、集中して物凄いパワーを出すんですよ、一人で二人分、三人分の仕事をやっちゃうんですよ、と話していたので、私はその話を鵜呑みにした。
どこの開会式でも、その様式やアトラクションに、その開催都市や開催国の独自の趣向や工夫が凝らされ、その意気込みを見る側に感動を与える。ロンドンはゆったり楽しめたが、北京は力が入り過ぎで疲れた。今回のソチには、ソチというかロシアにも歴史的な事情があって、その意気込みの凄さの源を探る新聞記事があったので、それを保存した。
20140208 朝日・朝刊
20140208 朝日・朝刊 モスクワ支局長 駒木明
苦難の道歩んだロシアの縮図
「新しいロシアを見てもらいたい」
プーチン大統領は意気込みを語る。
ソチ五輪では、施設の全てがゼロから造られた。11ヶ所の競技場だけではない。鉄道、高速道路、宿泊施設。開催決定の2007年から、新しい都市を一つ建設したようなものだ。
費やされた経費は日本円にして約5兆円。夏季を含めた五輪史上最高額だ。
ロシアの力を誇るため、だけではない。やむを得ない理由もあった。1991年のソ連崩壊で、ロシアはウインタースポーツの拠点を失ってしまったのだ。
たとえば、スピードスケート。ソ連時代に世界最高のリンクがあったカザフスタンは、外国になった。02年の米ソルトレークシティー五輪で、ロシアは自国の代表選考会をドイツで開く屈辱を味わった。
ソチの7年間の突貫工事は、ソ連崩壊後にロシアが歩んだ22年間の縮図だ。ロシアにとってソチ五輪は、苦難の時代を乗り切り、再び胸を張る機会なのだ。
そんな晴れの舞台に、テロの脅威が影を落とす。国外からは昨年成立した「反同性愛法」への批判が噴出。大統領の願いとは別に「相変わらずのロシア」が世界に伝わっている。
それでも、忘れてはいけない大きな変化がある。
80年夏のモスクワ五輪では、ソ連のアフガニスタン侵攻に抗議して日米など多くの国がボイコットした。「冷戦」が「熱い戦争」に変わるかもしれない世界。それはもう過去のものだ。ソチには、冬季史上最多の国と地域が参加する。
「異なる民族、宗教、職業の選手たちが選手村で1ヶ月近く生活を共にする。互いに理解し合い、すばらしい雰囲気が生まれる」。テロが相次ぐロシア南部ダゲスタン出身で、レスリングで3度の金メダルに輝いたブワイサル・サイティエフ選手(38)の言葉だ。
世界最高のアスリートの競演を大いに楽しみつつ、五輪の持つ力を私たちも共に感じる機会にしたい。