私の「野性」を思いっきり蘇らせてくれた友人ステ君が、20140418、南洋に浮かぶ母国に帰ってしまった。
ステ君と仕事を一緒にして、久しぶりに私の体の全ての細胞が瑞々しく活性した。この、私が言う「野性」って奴は、肉体を酷使した結果、冴(さ)えて荒ぶる昂揚感?のことだ。この感覚が久しぶりに覚醒した。
リーマンショックの前からこの10年間、私の体は鈍(なま)ってきていた。鈍らないように、鈍らないようにと心がけて、果樹園や野菜畑での農耕作業、住宅のリフオーム工事の現場での作業に、率先して励んだのだが、それでもスッキリはしていなかった。
大学に入る前は2年間のドカタ稼業で、4年間の東京での生活費と学資を稼いだ。そして学生生活の4年間はクラブ活動一本、朝から晩までグラウンドにいた。クタクタに疲れることが快感で、それこそが私の生きがいだった。
卒業して入社した会社でも、体を酷使する仕事が多く、性格に相応しい会社に入ったことを喜んでいた。だが、それから数年経て、オーナーの近くで働くことになって、オーナーの周りのゴマすり幹部、米(こめ)搗(つ)きバッタ社員を目の当たりにして嫌気がさした。このオーナーは私の退社後、有価証券報告書の虚偽記載による証券取引法違反で逮捕された。
その会社を辞めて独立してから、今度は経営者として身も心も酷使する仕事に精を出した。だが、そんな充実した幸せな日々も、時が経つにつれて頭を使うことは増えても、体を動かすことに少しづつ怠惰になってしまった。サボったのだろう。
そんな時に、ステ君が登場した。一緒に仕事を始めた年末からこの4月までのステ君の仕事ぶりについての印象を記す。
仕事が楽しくて、楽しくて、実に楽しそうに働く。金を稼ぐというドロ臭さが一切臭ってこない。まるで、解脱してる? 除草のときには、徹底して小さな草も見逃すことがない。私は百姓の子倅(こせがれ)、小さな草は茎を切っておけば枯れるので、目くじらを立ててまで収集しないで、放置したままにしておく。それが、気に入らないのだ。
聖人のような彼のお陰で、私の気分は清澄、スッキリ爽やかになる。仕事ははかどり、私は刺激を受けて1.5人前、彼は私への触媒役も兼ねて2人前、二人合わせて3.5人前の仕事をこなすので、一日仕事が4時間程でやりきれるのだ。
昼飯を食った後、腰を伸ばして横に寝っ転がったり、雑談をするのが私の楽しみなのに、彼は飯を食い終わると、直ぐに立ち上がって、軍手をはめる。仕事の再開のシグナルだ。いや、いや、と言いながら私も軍手をはめだす。
仕事を終わろうと声をかけると、もう終わりなの?と浮かぬ顔つきで私を睨みつける。そして、嬉々として片づけに入る。
鈍って、老化しかけていた私の「野性」を、蘇らせてくれたことに感謝している。