Jリーグの年間表彰式「2009 Jリーグアウォーズ」が7日、東京都内であり、最優秀選手賞〈MVP)は鹿島のMF小笠原満男(30)が初受賞した。主将としてチームを史上初の3連覇に導いた統率力が評価された。小笠原の真骨頂は、早い攻守の切り替えだ。相手をなぎ倒して球を奪い、好パスで流れを変える。「危機を、一瞬で好機に」と本人が志す動きは、チームが逆境の時ほど研ぎ澄まされる。朝日新聞紙上における中川文如記者の記事をお借りした。私も、小笠原の受賞については、十分納得している。チームの大黒柱としての風格がある。新聞のスポーツ面に、小笠原がMVPのトロフィーを小脇に抱えた大きな写真が載っていた。来季は、4連覇とアジア制覇をねらうと言ってのけた。
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得点王として、20ゴールを挙げた磐田ジュビロの前田遼一が表彰された。日本選手としては02年の高原直泰(当時磐田、現浦和)以来7年ぶりらしい。
その隣に前田の短いコメントがあって、その短いコメントのなかに、前田の日常の心意気が痛いほど解って、思わず、このコメントを保存しておかなくっちゃ、とキーを叩いた。
前田ー「先輩のおかげ」
日本選手で5人目(6回目)の得点王に輝いた前田。「ここにいられるのは中山(雅史)さんや高原(直泰)さんとプレーできたから」と切り出した。ともに磐田黄金期を支えた先輩FWだ。「でも2人と違って(中心選手として)リーグ優勝、W杯に出場したことがない。肩を並べたい」。今後の前田の活躍を見届けたいと思う。私の後輩、林義規が長年監督をして、トップレベルのチームとして頑張っている、東京は暁星高校の出身だ。文武両道の学校だ。
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20091208 朝日・朝刊 スポーツ
潮 智史
鹿島 変わらぬ「伝統」
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5年連続で最終節までもつれたJ1の優勝争い。3連覇もさることながら、鹿島の強さにうならされるのは96年の初優勝から、98,00,01,07,08,09年とコンスタントに勝ち続けていることだ。普段の練習から球際の争いを厳しくし、パスの精度を10センチ単位で研ぎ澄まし、結束と献身を重んじる。細部を突き詰める精神性をサポーターは「ジーコスピリッツ」と呼び、選手は「伝統」と表現する。5日の浦和戦でも猛攻を落ち着いてかわしながら、攻め手を探ってひたひたとゴールに迫った。押し込まれた前半を0-0で終えた時点で試合は鹿島ペースだった。
緩みのない守備から仕掛ける速攻と勝負強さ。一貫したスタイルは、ピッチ上で実際に監督役も担っていたジーコを含め、7人のブラジル人監督が作り上げてきた。あまりに手堅くてときに面白みに欠けるほどだが、彼らの仕事ぶりを見ていると。「変わらない強さ」に思い至る。
日本人は勝てば、次には何か新しいものを求めたがる。常に進歩しないと落ち着かない性分だ。鹿島でも優勝した翌年に新鮮味を求める日本選手に対し、「当たり前のことをきちんと身につけろ」と反復練習を強いる監督が結果をだしてねじ伏せてきた。小難しい戦術論を持ちかけても、「最後にものを言うのはあきらめない気持ちとチームの結果だ」と答える。サッカーをシンプルにとらえている彼らは余計なものをそぎ落とし、ただし、肝心の土台となる部分に妥協は許さない。勝つすべを心得ているのだ。
日本代表の岡田監督が横浜マ監督だった当時、00年から6年にわたって鹿島を率いたトニーニョ・セレーゾ監督のチームづくりにあきれていた。「毎年、同じことを忍耐強く繰り返してチームを作り上げる。私には到底まねできない」と。王国ブラジルの奥深さである。(編集委員)