2009年12月31日木曜日

たかが歯ブラシ1本と、バカにすな

毎年、六月の虫歯予防週間に入ると、私が虫歯にならないために工夫していることを、そのささやかな心がけをみなさんに紹介したいと思うのですが、今まで、思ったときとキーを叩くタイミングが合わなかった。そして、半年遅れなのか半年早い目なのか、正月休日を利用して、虫歯予防セミナーを開くことにしましょう。一言で言えば、虫歯の予防は、あなたとあなたの歯とのバトルなのです。勝つか、負けるか。あなたが勝てば虫歯にはなりません。それじゃ、何に勝てばいいのかを、そのことについて話すことにしましょう。

講師は、61歳になるまで虫歯になったことは1度もなく、当然歯医者さんにも行ったことのないヤマオカです。それでは、徒然なるままに講義に入りましょう。

私には現在でも、1本も虫歯がありません。そのことには理由というか根拠があるのです。私の生活の歯に関する部分=「私の歯との暮らしぶり」を紹介することにしましょう。

 

①子どもの頃、オヤツは昼間だけ。

私は貧乏な百姓の三男として生まれました。貧乏だったので、家庭にはお菓子類の買い置きはなく、オヤツと言えば、お餅やオカキ、団子、トウモロコシ、乾燥芋、干し柿でした。何もないときには、母が大きなお握りを作ってくれて、それを頬張りながら遊びに家を飛び出していきました。そのようにオヤツは、夕食までの空腹をまぎらすためのものでした。遊びで大暴れをして、水をガブガブ飲むのですから、食べ物のカスが歯の間に残るようなことはなかったのです。まして寝る前までは、夕食に腹いっぱいにご飯を詰め込むので、オヤツなど欲しくならなかった。寝る前には歯磨きをする習慣は我が家にはなかった。歯には多少汚れはあっても、ばい菌マンが夜な夜な動き回るほど、私の口の中はそんなに楽しそうな環境ではなかったようです。

 

②小学校の歯の検査で、歯医者に注意された。

小学校の高学年のとき、講堂で全児童が一斉に歯の検査を受けたことがあった。その検査で私の歯には虫歯はないが、下の奥歯の1箇だけが、上を向いているのではなく、30度ほど外に斜めに向いていると指摘されたのです。でも、大丈夫、食べ物を強く噛むようにしなさい、そうすれば自然に歯の向きは正常になりますからと言われたのです。その後の私はそら豆や固いものを好んで食うようにした。意識して、食べ物を奥歯で真剣に噛み砕いた。イワシ、サンマ、アジ、サバまでも骨を噛み砕いて食べるようにした。大学でのサッカー部時代、皆と一緒に定食屋に入ってメシをよく食ったものですが、食い終わった時には、私の食器には骨など何一つ残されていないのを部友は不思議そうに思ったようです。その心がけは今でもしっかり続けています。先日、孫の前でサンマを丸ごと噛り付いていると、孫が、ジジイ、骨を食べると骨が丈夫になって、頭を食うと頭がよくなるんだよね、と私が教えた通りに言っていた。頭のいいジジイ思いの孫です。兎に角丸ごと食うことがいいようですぞ。

数年前のこと、何かで読んだ記憶があるのです。食べ物を口に入れてよく噛めば噛むほど、脳の活動が活発になって、結果頭もよくなるのです、そんな文章でした。立派な人がそのように述べていた。このことには、私の場合にはちょっと当てはまらないのですが。誰か博識あるお方の説明待ちにしたい。

 

③お父さんのタバコのヤニで真っ黒な歯に生理的に嫌悪した。

私の父親はヘビースモーカーで、四六時中煙草を口に咥(くわ)えていないと、落ち着かないほどニコチン中毒だった。子供の頃「しんせい」や「いこい」を夜中に買いに行かされた。父は歯を磨かなかったので真っ黒だったが虫歯はなかった。けれども、これは世にも不思議な父特有のことで、ニコチンで汚れた歯は虫歯になりやすいのです。その真っ黒な歯を見て、生理的に嫌になって、大人になったら煙草は吸わないようにしようと、幼心に決めていました。そして歯を磨くのはサボってはいけない、と思い続けてきた。私の父が死ぬ時は、その死因は肺ガンだろうと思っていたのですが、胃がんから色んな臓器に転移したけれど、肺までは侵蝕しなかった。

余談ですが、父が死ぬ1年前に、私の息子がオーストラリアの大学に留学していたものですから、父を連れてオーストラリアに旅行に行った。通りで煙草を吸いたがる父を、みんなが集まる場所では煙草を吸いたくても遠慮しなくちゃいけないんだよ、誰も煙草など吸っている人がいないでしょ、と納得させていたのですが、ところがどこでも行儀の悪い奴がいるもんで、堂々と吸って歩いてる人を見つけてニタッと笑い、そして俺に怖い顔をして、俺にも吸わせろうと怒っていた。

ニコチンで汚れた歯を嫌悪する感覚を磨きなさい。汚い歯を、他人に見せたくない、と思う心が、歯とあなたの激烈なバトルを維持できるのです。

 

④少女雑誌「明星」の広告に影響を受けました。

当時の少女雑誌「明星」などには、アイドルの歯のように白い歯は如何に格好いいか、という広告が出ていた。それはチューブに入った特製の練り歯磨きの宣伝だったのです。その宣伝広告が目立ったのは、私が中学生から高校生になる頃で、異性を意識しだした第二次性徴期だった。女の子に嫌われないように、好かれるために、歯を磨かなくてはイカン、と思った。実は、私にも前歯の一部に黄色い部分があって、悩んだ。これが原因で女の子にもてないのではないかと。

けっして現在の私の歯が綺麗ではないが、気にすることは必要なことだ。他人の目を意識しなさいってことだ。そんな私だから、自分の顔は2ヶ月に1度1000円カットに行った時に目の前の鏡で見るだけだけれど、歯は一日に1度は必ずチェックします。

 

⑤一度も歯医者に行ったことがない、と友人に話したら、友人は私を化け物のように俺を見た。

大学に入った。クラブの関係で強制的に寮に入れられた。一つの屋根の下で、長くみんなと寝食をともにすると、生活のあれこれを話すことになるのですが、何かの拍子で、私は一度も歯医者さんに行ったことがないと言うと、聞いた友人は私のことをまじまじと見つめ、私を不思議な動物でも見るような顔をしたのです。お前、それは凄い、お前は珍しい奴だよ。そこで、私は始めて自分の歯が人並み以上に丈夫なのだと気付いたのです。ならば、一生懸命に手入れをしよう、と決意した。

 

歯を治してからお嫁さんに来てください。

恋愛をした。俺のお嫁さんになってくれ、でも、ちょっと待って、俺のお嫁さんには傷モノで来てもらっては困るので、ちゃんと歯を治療してから、お嫁さんに来てくれと、彼女に頼んだ。彼女は言われなくてもそのようにする心算だったようで、少し気分を悪くしたようだった。女房でもない他人に対して、歯を大事にしてくれとは、なんという失礼な奴だと思ったのかもしれない。でも、私にとっては、健康であるためには、その入り口である歯が何よりも大切なのだと確信していたのです。

そして30年後、息子が嫁をもらうことになった。初めてお会いした娘さんは将来の息子の嫁、歯並びの矯正中だった。矯正する刃金のようなものを歯にはめ込んでいた。なかなか気の利いた女性だと安心した。結婚を前に、歯並びと言えども、歯の治療に精励しているなんて立派だ。私の家人もやはり、歯の治療をしてからお嫁さんに来たのは、前の方で述べた通りだ。

 

⑧歯は意志を表す。

目はその人の心模様を表すという。心の窓だ。それじゃ、歯はどうか。歯はその人の意志を表すものだと思ってきた。悔しい時、踏ん張る時には上下の歯を強く噛み合わせた。そして歯軋りもした。奥歯を噛みしめた。前歯は犬のあまがみのように、何かを始めて感得する際に様子うかがいで、使うことがあっても、強い意志の作用点にはならない。かって勤めていた会社で、上司に意味もなく怒られた時、私は奥歯を噛みしめ、靴の中では足の指5本に力を入れて踏ん張った。自慢の奥歯は耐えられたが、古くなっていた靴下は指先が破れた。

整然と並んでいても、多少不揃いでも、歯は意志を強く表す。

 

⑨大きく口を開いて磨く。

日常の虫歯対策では、先ずは歯磨きだろう。磨く時間は、一日5分以上。2回でも3回でも、トータルの所要時間は5分以上は磨きましょう。私は一日1回、朝風呂の中でだ。風呂では新聞を40分ほど昨日の朝刊と昨夜の夕刊の読み残しを読む、そして体を洗うのが5分、それから歯を磨くのです。大きく口を開けること。大きく口を開けると、歯ブラシの角度に充分変化が与えられるからです。洗面化粧台などでは、大きく口を開けていると、大いに下品であるので、誰にも見られない浴室内がおすすめです。歯茎、歯茎と歯の間も、充分時間をかけて磨くというか、擦(こす)ることです。ハイカラに言えば、マッサージ。それから肝腎の歯本体の磨きに入るのですが、まずは気合を入れること。気合の入ってないブラッシングは、意味ない。

 

⑩歯ブラシは剛毛であること。

歯を歯ブラシで擦ることなのですが、歯ブラシが新品のうちはそんなに強く押し付けなくてもいいのですが、歯の刷毛が腰砕けになってくると、これからが大事なのです。力任せに強く歯に押し付けるのです。腕の筋肉が攣(つ)るほどに力を入れて、疲れたら休んで、また強く押し付けて磨くのです。刷毛が完全にヘタレコンデしまっても、横に広がった刷毛が歯の裏などを磨くのに丁度都合がいいのです。知恵です。

我が家では、歯ブラシの交換は頻繁に行います。家人が新しい歯ブラシに変えますよ、と言うと、これからが歯ブラシと私の一騎打ちが始まるのです。歯ブラシとのお別れバトルの突入宣言です。使い果たした歯ブラシはどうせ捨てるのですから、今までの感謝を込めて、これからの数日間を大事にするのです。歯が勝つか、私の腕が勝つか。それほど、真剣に歯ブラシと歯の格闘をするのです。私を媒介にして。そのときに、念じるのです。虫歯になんかならせねえ、と。

新しい歯ブラシの使い始めは、歯茎を傷めて血が出ることがありますが、口の中の血は直ぐに止まるので、血を見ただけで怯(ひる)んで、磨くことをストップしてはいけません。(注)です=個人差はありますので、よく考えてやってください。責任は負いかねますサカイに。

私は学生時代はサッカー部に所属して、そこで私が見出したのは走ることにしても筋肉トレーニングにしても、たまには極度に体にストレスをかけることが必要だということです。1週間の何曜日と何曜日とか、月に何回とか、半年に何回とか、通常の練習ではなくて、極度に体を追い込むことが必要だと体得してきたのです。そんな経験から、歯磨きにも言えることなのです。

社員旅行などで、旅館で泊まる際、3~4人で1部屋をあてがわれるのですが、朝、私の歯磨きの強烈さに同じ部屋の者は肝を冷やします。その激しさは、私にとっては日常的なのですが、他人には理解できないようです。用意された歯ブラシは1回きりでポイ捨てです。どうせ、1回で捨てるならばここまで酷使しないと、私は不満足なのです。

 

⑪練り歯磨きの効能は、解らない。

私はチューブに入った練り歯磨きを使っていますが、果たしてそんなに効能があるものかどうか解っていない。練り歯磨きメーカーの宣伝文句に惑わされないことです。メーカーはいつの世も過大に、誇張して広告するものです。過去の歴史からも、多少の効果があることは証明されているのでしょうが。

練り歯磨きを歯ブラシにつけて磨きだします、その後、うがいをして口の中を綺麗に洗い流します。そして、綺麗になった歯を今度は水で濯(すす)いだ歯ブラシで、もう一度磨くのです。冷たい水で濯いだ歯ブラシは、口の中でとても気持ちがいいのです。歯と歯ブラシの接する触感が、直感的で、清清(すがすが)しくて気持ちがいいのです。この気持ち!! 気持ちいいと感じることが大事なのです。くどいようですが、この気持ちよさを感じることが、歯の衛生管理の基本です。

核

⑫あなたが歯と闘う戦意を、常に高揚させていることが一番大事なのです。サボろうかとか、今日は疲れているから、なんて気を緩めたら必ず虫歯のばい菌マンがやってきます。隙を相手に見せないことです。

 

ここまで、「歯と私の暮らしぶり」を得意満面に書いてきたのですが、実は私にも悩みが生まれてきたのです。最近、上の前歯2本の間に隙間ができてきたのです。以前にも隙間があったのですが、段々その隙間が大きくなってきたように思われるのです。その隙間が段々広くなったらどうするの ? と娘から言われているのです。仕事仲間に前の二本の歯の間が、1センチも空いている人がいて、私はその人の歯を夢見て体が凍りついたことがあるのです。また、昔、大阪の漫才コンビに平和、ラッパ・日佐丸が人気を博していたことがあって、そのラッパさんの前の歯が、私の仕事仲間と同じ程隙間が空いていたのです。天王寺の亀の話をし出すラッパさんの顔も私を苦しめるのです。

それを聞いた長男は、お父さん、元(長男の嫁)が歯並びの矯正をしていたやつがあるので、それを貸してもらったら、ええよ、とぬかしやがる。

もう一人、嫌な奴が傍にいるのです。私が歯について、他人に誇らしげに喋ることに皮肉な視線で眺めている奴がいるのです。私の三女・苑です。彼女は、私の歯にはいっぱい歯垢があって、そんなに自慢しているうちに、ガッツウ~と虫歯になるからと、冷ややかなのです。この身内の敵のためにも、私は頑張ります。

本当は私も、不安を抱えているのですよ、わっ歯っハっ歯です。

 

虫歯予防は、歯とあなたのバトルです。