2011年1月16日日曜日

アジア支える大学教育を

下の文章は、朝日新聞の20110111の社説だ。このような動きがあることは知っていても、このように記事になると、襟を正してもう一度確認して、機会があれば、皆に話すことも必要だろうと思って、朝日新聞に無断で転載させていただいた。そっくりそのまま、転載させてもらうんだから、大きな問題はないだろうと、自分勝手に判断している。国境を越える若者たちが、日本でも育ってくれないと、日本の国は立ち行かなくなるのは、私のような視野の狭量な者でも理解できる。

でも、2012の3月に卒業予定の就職希望者を対象に実施した調査によると、「学業より就職活動を優先する」と答えた人が8割に上った、という内容の新聞記事(20110108の日経)を見つけた。日本の今の学生の実態を知るに、この転載させてもらった記事の内容とは余りにも違いが大き過ぎることに、ショックだ。

私の息子のことに触れてみたい。私の息子は約10年前に某理系私大に入学したのですが、1年を過ぎたあたりから大学の就職指導が頻繁に行われて、大学に勉強をしに来たのに、就職、就職とはなんでや、と学校当局の配慮に嫌気が差し、卒業後外国へ留学した。このことは、息子のその後の就職や生活に思わぬ恩恵をもたらした。こういう場合もあるわけで、就職難な時代とはいえ、若者の飽くなき挑戦をオジサンたちは期待しているのであります。

資金が心配?そんな心配をする前に、何かを企ててみろ。お金は企画についてくるもんだ。

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20110111

社説/国境を越える若者

アジア支える大学教育を

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アジアはいま、多くの共通課題に直面している。

国境を越える環境汚染、エネルギーや食糧の確保、急速に進む高齢化、海洋権益や領土をめぐる対立も、空を飛ぶ鳥の目から見れば、アジア諸国が一緒になって、答えを見つけ出さなばならない共通の問題だ。

こうした時代認識を切実に抱えてきた地域がある。欧州だ。

20世紀半ばまで、国々はいがみ合い、戦争を繰り返してきた。停滞から没落への転落をどうしたら避けられるのか。手がかりにしてきたのが、国境の壁を取り払う地域統合である。

欧州27カ国は欧州連合(EU)の旗の下、経済統合を進め、不戦共同体を作り上げた。降りかかるユーロ危機にも、一国ではなく、地域全体の解決策を見つけようと苦闘している。

EUの拠点があるベルギーの首都ブリュッセルから鉄道で1時間。古都ブリュージュにある欧州大学院大学(カレッジ・オブ・ヨーロッパ)を訪ねた。欧州一円から集まった約400人の若者が学んでいる。多くのEU幹部が輩出しており、EU内に太い人脈を持つ卒業生たちは時に「ブリュージュ・マフィア」と呼ばれる。

創設は、第2次大戦直後の1949年。欧州統合の枠組みは何一つない時代だった。統合への一歩として、まず学校を開き、人材を育てる。「欧州合衆国」結成を訴えた英国のチャーチル元首相らはそう考えていたのだろう。

 

「欧州人」意識育む

講義は英語とフランス語で行う。食堂や寮では多くの言語が飛び交い、週末には各国の料理や生活を紹介するパーティーが開かれる。出身国とは別に「ヨーロッパ人」の意識を学生が持つようになるのは、こうした1年間の全寮制教育を経験するためだ。

卒業生の欧州議会職員エドアルド・ディリグ(28)と会った。両親の出身国でる英仏両語に加えて、学校で覚えた独語やイタリア語を駆使して各国の利害調整に奔走する。「国益ではなく欧州のために働くことにやりがいを感じる」と言う。

欧州の多くの学生が複数の言語を話せる背景には、充実した留学制度がある。単位互換制度や奨学金支給によって欧州内の留学を後押しするエラスムス計画には80年代末以来、約220万人もの学生が参加した。

アジアは欧州と歴史的背景や事情は異なる。それでも各国経済の相互依存は欧州並みに高い。地域協力も進み、東南アジア諸国連合(ASEAN)と日中韓3カ国は金融の安定や防災、食糧安保で連携している。

教育でも変化の波が起きている。

 

英語が共通言語に

創設者大隈重信の銅像を見下ろす東京・早稲田大学の11号館。

一帯を歩くと、さまざまな外国語が聞こえてくる。ここにある国際教養学部の約3100人の学生の3分の1強は外国人。その6割以上が韓国と中国から来る。授業は全て英語だ。外国人学生の多くが母国語、英語、日本語のトリリンガルになる。日本人学生は1年間の留学が必修だ。

近くにある独立大学院アジア太平洋研究科は「アジア地域統合のための人材育成」を目標の一つに掲げている。ここの講義も英語が基本。300人を超える学生の多くがアジア出身だ。

英語のみで授業を行う学部が秋田の国際教養大、法政、大分の立命館アジア太平洋大などに広がっているのは当然だ。グローバル化の波は英語をアジア共通の言語にしつつある。

日本で学ぶ外国人留学生は約14万人。9割がアジア出身者だ。英語による授業にひかれて、留学生が増える意義は大きい。海外に向かう日本人留学生もさらに増やしたい。

 

グローバルな発想で

ただ、単に留学生の数を増やすだけでは時代の要請に応えたとはいえまい。中国やインド、ブラジルなど新興国の台頭によって、国際社会の構図は大きく変わりつつある。

いま求められるのは、国境を越えたグローバルな知識を持ち、国と国を結びつけるような発想を持つ人材だ。国家の枠内で内向きな人材を育てる考え方から脱しなければならない。

まずアジア版のエラスムス計画を作り、学生の域内留学を増やす必要がある。日中韓の大学間交流を進めるために一昨年から論議されている「キャンパス・アジア」構想は足がかりになる。早急に肉付けしてもらいたい。

教育改革も急務だ。中韓の学生との討論で日本の学生が力負けしているのを見かける。英語力とともに自分の考え方を深め、、説得する力を強めたい。

欧州大学院大学では毎年秋の開講にあたって、欧州の指導者が演説する。昨年招かれたメルケル独首相は学生を前に、冷戦終結によって起きたドイツ統一の体験を語った。

「自由は突然やってきました。ドイツ統一は欧州統合なしでは考えられません。欧州がもたらすチャンスを生かせるのは、あなたたちなのです」

アジアにはまだ分断国家があり、地域内の不信や疑念も根強い。この厳しい状況をどう克服し、共生と共存の道をいかに切り開くか。その結果は一国にとどまらず、アジアのすべての国々と人々の運命を左右する。

アジアの未来を支える国際人を育てていかなければならない。