2011年10月10日月曜日

アップル ジョブズ氏死去

 

世界最大の企業を一代にして作り上げた、偉大な経営者だったジョブズ氏の業績をダイジェストに纏めた記事に出くわしたので転載させてもらった。記憶に留めておきたいと思ったからだ。コンピュータ門外漢の私でさえ、氏の業績はかくも創造的で革新的だったのか、と今更ながら驚いている。

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20111007の朝日新聞・朝刊の記事をそのまま、転載させていただいた。

 

創造と変革 カリスマ喪失

ジョブズ氏死去

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5日に死去した米アップルのスティーブ・ジョブズ前最高経営責任者(CEO)は、それまで市場になかった製品やサービスを創造し、既存の産業と社会に変革をもたらし続けてきた。強烈なカリスマの喪失は、絶好調を続けてきたアップルの今後に影響を与える可能性もある。

ジョブズ氏が追求したのは高度な技術を誰もが使えるようにすることだった。昨年発売したタブレット端末iPad(アイパッド)は集大成と言える。キーボードをなくし、タッチパネルを触って感覚的に使え、パソコン並みの作業をこなせる。

iPadが客を奪い始めているパソコン。実はそれもジョブzズ氏が創造したものだった。

コンピューターといえば米IBMなどのビジネス機だった1970年代、共同創業者のスティーブ・ウォズニアック氏とアップルⅡを開発・発売。専門家でなくても使える初の量産機は爆発的にヒットした。

iPadの源流にはスマートフォン(多機能携帯電話)の先駈けとなったiPhone(アイフォーン)があった。2007年に「電話を再利用する」と宣言。パソコンのようなサイト閲覧や電子メール、ゲームなどができ、音声通話が主軸だった携帯電話を一変させつつある。

街からCD店が姿を消すきっかけもジョブズ氏が作った。違法配信を恐れる音楽業界と交渉し、音楽配信サービスiTunes(アイチューンズ)を開始。ソニーのウォークマンに挑んだ携帯デジタルプレーヤーiPod(アイポッド)と併せ、音楽の買い方や楽しみ方を変えた。

高度な技術を素早く市場に浸透させることに成功したのは、ジョブズ氏が神経質なまでに注力した製品デザインも大きい。不必要なボタンなどは極力排除し、手触りにこだわった。

完全主義者のジョブズ氏は、自分の理想が技術面やデザイン面で難しくても、何度も作り替えを命じて完成させた。ジョブズ氏の理想が製品に強く反映されたのは、社内で「専制」が貫徹されていた側面が大きい。

ジョブズ氏なき後のアップルをCEOとして引っ張るのは、実務家として評価されるティム・クック氏だ。今月4日の新製品発表会では、目玉のiPhone4sび発表をマーケティング担当幹部が行なった。「集団指導体制」への移行が印象づけられた。

ジョブズ氏は05年、米スタンフオード大で卒業生に送ったスピーチを「ハングリーであれ、馬鹿であれ」と締めくくった。天才的な先見性と、専制体制を失ったアップルが、既存の枠組みにとらわれない製品を出し続けられるか、注目はなお集まる。(ニューヨーク=山川一基)

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20111008

朝日朝刊

天声人語

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かって、これほど世界中の人々から、死を惜しまれた企業経営者がいただろうか。

アップルの共同創業者で、前最高経営責任者(CEO)のスティーブ・ジョブズ氏が、56歳で死去した。

「 Think different 」 (発想を変えろ)

ジョブズ氏がアップルに復帰し、97年から展開したキャンペーンのコピーである。アインシュタインやガンジーらの映像を使ったCMのナレーションは、こう締めくくられる。「自分が世界を変えられると本気で信じる人たちこそが、本当に世界を変えているのだから」

それは、まさにジョブズ氏の歩みでもあった。

ジョブズ氏は創業翌年の77年にアップルⅡを、84年にマッキントッシュを発売し、世界的にヒットを飛ばす。そこには、大企業のものだったコンピューターの世界を個人の手にもたらすというカウンターカルチャーの気風が色濃く投影されていた。

85年に会社を追放された。

10年余りを経て復帰した後は、iMac、iPod、iPhone、iPadと、新たなコンセプトを持つ製品を送り出し、アップルを復活させただけではなく、人々の暮らしに多大な変化をもたらした。ジョブズ氏は少なくとも世界を2度変えた。

特筆すべきは、そのビジネスモデルだ。「ものづくりではもうからない」と言われる時代にアップルは一貫してソフトとハードを統合した事業を続けた。ジョブズ氏はあらゆる製品で、デザインや使いやすさに徹底的にこだわった。

そのうえで、自社では工場を持たない。少品種の製品に絞り込みつつ、日本を含む世界中の企業から最適な部材を調達することで、メーカーとして極めて高い収益率を維持した。

ものづくりを得意としながら収益悪化に苦しむ日本企業は、改めて商品コンセプトの革新性とデザインへの審美眼を学ぶしかあるまい。

アップルはアップストアのようにソフトを配信する独自のサイトを設け、自社の端末で楽しんでもらう囲い込み型ビジネスで商品の価値を高めてきた。

今後、テレビをはじめとした家電や自動車、オフイス用品など様様な機器がオープンな形でインターネットに接続する時代が到来する。そのとき、アップルは囲い込み型ビジネスモデルからどう発展していくのか。

新しい製品を紹介する際の決まり文句だった「それから、もうひとつ」をもはや聞けないのが、残念でならない。