2017年9月9日土曜日

ハリル 1年越しの反撃

2017年9月8日(金)の朝日新聞夕刊、「サッカーのミカタ」を転載させてもらう。
9月11日には、紙上の写真も転載させてもらう。

サッカー狂いのキチガイ頭の私は、日本代表がロシアW杯に出場が決定したときから、何も考えられない程、冷静にして置いて欲しい心境だ。

テレビ中継を観た。
顔面は狂ったようにヘナヘナ形相、凝視は鋭い、肩や腕は相手の攻撃陣の背中にも腹にも回れるよう、腰も相手の腰をやっつけられるように、手は相手の体の一部分を掴み、自由にはさせない。足は四方八方どこへでも早く強く厳しくスタートできる、そんな状態で観た。これって!私の観ている姿、実体だ。
俺って、可笑しくなっているのではと心配した。
これから暫らくは、今までのこと、これからのことを考えたい。
実に難しいことではあるのだが。きっと、ハリルホジッチ監督はさぞかし悩んでいることだろう。
日本のサッカーの輝く未来のために、志ある人は賢いご意見を述べて欲しい。

ハリル 1年越しの反撃
「解任」報道の裏であったこと

1年越しの反撃だった。8月31日に豪州を破ってワールドカップ(W杯)ロシア大会出場を決めた直後、記者会見室で拍手に迎えられた日本のハリルホジッチ監督が言い放った。

「ジャーナリストのみなさんの中には、一部の人かもしれないが、私がここから出ていくことを望んでいる人がいるかもしれない。
私はここに残るかもしれないし、残らないかもしれない」。
翌日、日本サッカー協会の田嶋幸三会長を伴って改めて記者会見を開いて辞任を否定し、「昨日の発言は、私を批判していた方々、私に敬意を払っていなかった方々、私の仕事を評価していなかった方々へ向けたもの」と説明した。

「批判」とは昨年10月、敵地の豪州戦の結果次第で「解任」と報じられたこと。
フランス1部のパリ・サンジェルマンなど政財界につながる名門を率いた監督が、批評の裏に何もない、と思うはずがない。

実際に昨秋、日本協会のある幹部は、ハリルホジッチ監督の「後任」に声をかけ、敵地の豪州戦で負けた場合の準備をした。
その豪州戦で引き分けると、田嶋会長はハリルホジッチ監督を支える考えを本人に伝えた。
その後の連勝で「解任話」は立ち消えになった。

ピッチ上では、日本協会とハリルホジッチ監督の方針は一致している。
2014年W杯ブラジル大会の惨敗後、日本協会は、指導者や若手選手の育成で、個人の強化の重視を明確にした。
連係や戦術では個人の非力を補えないという考えだ。
1対1の戦い「デュエル(決闘)」に重きを置くハリルホジッチ監督も、同じ方向を向いている。
良いことのようだが、問題もある。

現在の選手は、連係や戦術を重視する環境で育ってきた。
たとえばハリルホジッチ監督は、FWがMFにバックパスすることを半ば禁じ、個人の力で攻勢を維持するよう求めている。
しかし、選手の中には、FWがMFと連係し、戦術的に不利な状況を避けるのが当然という考えも根強い。
W杯出場の23人が絞られる過程で、監督と選手、または選手同士の、せめぎ合いがあるかもしれない。
そこを発端に、批判の声が再び生まれるかもしれない。

ブラジル大会では、シンプルに攻撃したいザッケローニ監督と、パスワークにこだわる選手との溝が理まらなかった。
大会中、主力選手に近い関係者が「監督の指示を無視して、選手が勝手にプレーしている」と証言した。
チーム関係者によると、試合の終盤に敵陣ゴール前にロングパスを蹴るよう求めた監督の指示に従わなかった選手が、「そんな練習はしていなかった」と言い訳した。

当時の選手がよく口にした「自分たちのサッカー」には、「監督のサッカー」と対立する意味があった。

ザッケローニ監督の采配も選手を信頼していないものだった。
初戦の前日に先発組で練習させた遠藤保仁を当日になって外した時は「試合会場に向かう直前に知らされ、選手たちは動揺した」(チーム関係者)。
第2戦で同じように、香川真司が先発から外された。

本番まで順風満帆に見えたブラジル大会。
すでに波風が立っているロシア大会。
監督が権威を保ち、チームを掌握しているなら、後者の方がいい。
(忠鉢信一)