2017年9月10日日曜日

ロシアW杯 日本サッカー出場決定②

2017年9月2日の朝日新聞の記事転載第2号だ。
紙上の写真も、後日転載するので、しばらくお待ちください。

サムライブルー 4年で変わった
W杯アジア最終予選 データで振り返る

球際の攻防 勝ちきる強さ
激しいタックル2割増
「厳しい球際での攻防」と「縦への速い攻撃」。この二つを意識して戦ったサッカー日本代表が、6大会連続のワールドカップ(W杯)出場を勝ち取った。バヒド・ハリルホジッチ監督(65)が就任してから約2年半)。指揮官が求める戦い方は選手たちにどこまで浸透し、結実したのか。アルベルト・ザッケローニ氏が率いていた4年前のW杯アジア最終予選と比較しながら振り返った。
(データはデータスタジアム社提供)

W杯行きを決めた8月31日の豪州戦。身長171センチのMF井手口(ガ大阪)は、開始直後から190センチの前後あある豪州の選手たちに果敢に体をぶつけ、彼らの足元から次々と球を奪い取った。「監督の指示。チームの戦術だった」と井手口。W杯予選での対豪州戦8試合目にして、初めて無失点で勝った。

2015年3月に就任したハリルホジッチ監督は、球際の競り合いにひるむことなく挑み、勝ちきる強さを選手に求めた。好んで使う言葉は、フランス語の「デュエル」(決闘)」だ。

それを表すデータの一つが、体を投げ出して相手の球を奪いにいくタックル数。今回の最終予選では、1試合平均23・1回試みており、4年前から約2割増えた。タックルを含めて、相手から球を奪った回数についても4年前の平均69・3回から76・5回に。特に、ピッチをセンターラインで2分割したとき、相手ゴールのある敵陣で球を奪った回数は、平均13・3回から19回になった。31日の豪州戦でもFW大迫(ケルン)やFW乾(エイバル)が、豪州のペナルティーエリア付近まで球を追いかけ、相手が苦し紛れに蹴りだすシーンが何度も見られた。



10秒未満でシュート3倍
縦への速い攻撃 精度に課題
攻撃面で目指したのは、「縦への速さ」。球を奪い、余計な手数をかけず、相手の守備が整わない間にシュートまで持ち込み、得点につなげようとした。今回の最終予選では、球を奪ってからは10秒たたないうちにシュートまで持ち込んだプレーが1試合平均で3回あった。細かいパスをつなぎながらボールを保持し、試合の主導権を握るスタイルだった4年前のおよそ3倍。昨年10月に敵地でああった豪州戦で、FW原口(ヘルタ)が相手DFの裏へ抜け出してGKとの1対1に持ち込み、冷静に蹴り込んだゴールは、ハリルホジッチ監督が理想とする形から生まれたものだった。

「我々はボール保持率が50%以下のときにいい試合ができている」と普段から話しているハリルホジッチ監督。あえて相手に球を保持させ、隙を見て奪っては攻撃につなげるスタイルを好んだ。1試合平均の保持率は、4年前の58・2%から48・3%に下がった。31日の豪州の保持率は38・6%。しかし、相手に打たれたシュート数は5本しかなく、逆に日本が18本放って2点を挙げた。選手たちが攻守にわたって監督の求めるスタイルを実践していたことが分る。

ただし、速い攻撃が必ずしも効果的だったとは言い切れない。FW本田(パチューカ)が「監督がやりたいサッカーがあって、それをストレートに伝える。若手が聞きすぎて消化しきれない」と振り返ったことがあるように、速さにこざわるすぎて攻めが雑になるシーンが少なくなかった。

球を奪ってから10秒たたないうちにシュートまで持ち込んだプレーが、得点に結びついたのは27回中4回で、成功率は約15%。4年前の22%から落ちてしまった。精度の向上が、本大会での1次リーグ突破や初の8強入りを狙うには欠かせない。

前回のザッケローニ氏が最終予選で先発させた選手は19人(全8試合)。主力の固定化が目立ち、ときに批判を浴びることもあった。これに対してハリルホジッチ監督は「その時点でベストと思える、プレーするに値する選手を使う」と繰り返してきた。31日の豪州戦でも乾を左サイドに置くなど、26人(9試合平均時点』を先発で起用した。新陳代謝を活性化させ、若手の成長を促した。
(清水寿之)


本田「僕や真司が出なくても勝てたのは収穫」


サッカーのワールドカップ(W杯)ロシア大会出場を決めた日本代表の選手たちが1日、さいたま市内で報道陣の取材に応じ、アジア最終予選を振り返り、本番への抱負を語った。FW本田圭佑(パチューカ)はイタリア1部ACミランで活躍できなかったことを念頭に「イタリアの人たちの大半を認めさせることができなかった悔しさがある」とイタリアとの対戦を熱望した。

31日の豪州戦ではこれまで日本の攻撃の主軸を担った本田とMF香川真司(ドルトムント)に出番がなかった。今予選で2人に出番がないのは初めてで、本田は「予選の一番の収穫は僕や真司はそこに危機感を持っている」。

今月5日に最終戦が行われるサウジアラビア・ジッダに旅立つ前の練習で、ハリルホジッチ監督は10分余、「今日からはW杯へ向けてのスタート。成長しなくてはいけない」と訓示。W杯1次リーグでアジア勢との対戦はなく、予選以上の強敵と対戦することになる。


生き残りへ「新たな本田見せる」
w杯アジア最終予選、6日未明サウジ戦
サッカーのワールドカップ(W杯)アジア最終予選で、日本代表は5日(日本時間6日未明)に敵地でサウジアラビアとの最終戦に臨む。W杯出場を決め、選手にとっては本大会に向けて自らをアピールする重要な場になる。31歳の本田圭祐も、生き残りをかける一人。
本田は「これまでと努力の仕方も変え、今までと違った挑戦をしていきたい。新たな本田圭祐をみなさんにみせたい」と語る。

W杯出場を決めた8月31日の豪州戦で、今最終予選で初めて出番がなかった。定位置の再奪取は台頭する若手との競争になるが、「それとは少し違った視点でレギュラーを取り戻そうとしている。自分自身に挑戦し、勝ちたい」。豪州戦で抜擢された29歳の浅野のスピードや走力に「刺激をうけた」と話しており、不得手とされてきた運動量などのアップに取り組む構えもうかがえる。

W杯まで約9ヶ月。瀬戸際の立場に追い込まれての「変身宣言」ともとれる。らだ、焦りはないと明言した。「選手としての先が明確に見えている分だけ、劇的に体力が上がるわけではなく、成り上がるためのサッカーキャリアではもうない。考える余裕がある」
(ジッダ=藤木健)