2009年9月28日月曜日

安藤忠雄さんは闘う建築家だ

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2016年の夏季五輪の開催地が来月2日に決まる。鳩山首相は、国連総会からの帰りの機中でも、デンマークで開かれる国際オリンピック委員会の総会に出席すると意気込んでいたらしい。オバマ米大統領もシカゴ招致で参加するとか。石原慎太郎東京都知事は、本日(090927)デンマークに到着、これから総会開催までロビー活動を行う。

東京都民は、盛り上がっていない。一次選考では、最も高い評価を受けたものの、2日に、国際オリンピック委員会が公表したデーターでは、都民の支持率は55,5%、不支持率は23,3%で、支持率は他の候補都市に比べて低い。この支持率の低さが、今後の選考過程において、どう評価されるのか、これからが山場だ。

実は私も、今回の東京招致には、興味が湧かないでいた。五輪の陽の当たる世界と、陰の世界を少し知ってしまった私には、もろ手挙げての賛同は無理だった。いつも、誰よりも、世界のトップアスリートの競技を、目の前で見たがる私が、どうでもいいやと思っているなんて、不幸な状態だ。最悪の気分だ。石原東京都知事の方は、自分が音頭をとって立ち上げた新銀行東京の赤字が膨れ上がり、この赤字の穴埋めにでもしょう、との魂胆が見え見えで、いやらしい。また当社はこの不況の中、そんなことにウツツヲを抜かしている場合ではない、そんなこんなで、私も盛り上がっていなかった。

でも、だ。この安藤忠雄さんの話を聞いて、本当は読んだのですが、私も、ちょっとは頑(かたく)なになっていた頭が、緩(ゆる)んだような、ちょっぴり幸せな気分になりだした。

招致委理事の安藤忠雄さんは、さすが闘う建築家だけあって、仰ることが違うわ、と感心させられた。

090919の朝日新聞「オピニオン、異議あり」で、安藤忠雄さんと記者との談話を記事にしたものが載っていた。闘う建築家らしく、建築家の視点で熱く招致を語っていた。このように相手に伝わる言辞で語ってくれれば、気分もなんとなく盛り上がるのに、招致委員の誰もが何のために招致しているのか、誰も語っていない。

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その記事をダイジェストしました。

安藤さんは何のために日本で五輪を?

「オリンピックをきっかけに日本に新しい目標を作りたいという思いで引き受けました」。

どんな目標ですか?

「日本は技術は高いけれど、何のために技術をレベルアップするのかという哲学がありません。地球のために、世界の平等のために使うんだ、ということを掲げたい」

「私の考える2016年の東京五輪は、炭素排出ゼロを目指す。地球環境に配慮した大会です。メーンスタジアムから始めて、施設の大半を太陽エネルギーを使ったものにしたい。現在の技術水準では難しいかもしれませんが、オリンピックという大きな目標を掲げてみんなで頑張れば、日本の技術力ならば出来るんじゃないですか」

東京に決まった場合、施設の設計はどうしますか?

「私はやりません。すべての設計を世界中からのコンペ、公募による競争にしたらいい。日本は世界から『チャンスのない国』『アクセスできない国』と思われている。コンペをして世界中の建築家に開放したらずいぶん変わる」

「残念ながら今の日本は発信するものがほとんどない。世界のなかで宙に浮いているんです。だれも目標にしなくなった。これでは困る。私は日本が注目されていないことが問題だと思っているんです。日本人の多くも、このままでまあまあやっていけるんじゃないかと思っている。それを変えたい」

東京五輪が実現したら、どうなりますか?

「オリンピックを目の前で見たら、みなさん、すごいと感動するはずです。選手の活躍を見て、よし、自分も何かに賭けてみようという人が10人に1人でも出てきたらいいなと思いますね。その人はいずれ何かの分野のリーダーになりますから。オリンピックでもなんでも、輝いた人間をみて『自分も』と思う、そういう機会を与えたい」

「私は人の心を呼び起こすものが欲しいんです。これはすごいと感動すること。それが人間、生きていく力になります。テレビやインターネットを通してではなく、ナマでないといけません。これはぜひ、訴えたい。それが今の日本の国民に生きる力を与えてくれる。非常に楽天的に、そう思っています」

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「取材を終えて」の記者の短い文章にもサンショウが効き過ぎていた。首肯させられた。

安藤さんは常に戦ってきた人だ。相手は常識であり、権威であり、時に体制だった。

その安藤さんが今、日本に目標を作りたい、子ども達の目を輝かせたい、という。だが、それがどうにも広まらない。もし、盛り上がらないのは、私たちのエネルギーが枯れてきたためだとしたら。

今度の対戦相手は過去最強かもしれない。