20101224 朝日新聞の朝刊、天声人語をここにそのままゲットさせていただいた。この記事に、最大の興味が惹いた。モナリザの目の中に文字が書き込まれていたそうだ。
天声人語
わが身が没するほどの愛を例えて、目に入れても痛くないという。砂粒ひとつ受け入れない急所なのに、かわいい子や孫なら中で転がして一体化したい。そんな思いだろう。
どんな溺愛と同化の痕跡か、レオナルド・ダビンチの代表作「モナリザ」の目の中に、微細な文字が書かれていることがわかった。右の目に画家のイニシャルとおぼしき「LV]、左にも「CE」か「B」と読める字が確認された。
外電によれば、ルーブル美術館に出向いて発見したのはイタリアの文化遺産委員会。50年前の本に〈モナリザの目は暗号に満ちている〉という記述を見つけ、高度の拡大鏡で調べてみたという。委員長は「500年前の筆致は不鮮明だが、さらに謎を掘り下げたい」と語る。
ルネサンスの巨匠は、フランス国王の招きで渡仏した晩年まで、この絵を手元に置いて筆を入れ続けたとされる。微笑むモデルは豪商の妻と伝わるが、「女装の自画像」とする説もある。
天才は科学にも通じていた。解剖学への興味から目の研究も怠りなく、角膜の表面にたっぷり水をつけると視力を矯正できる、と考えていたらしい。『人工臓器物語』(筏義人著)にある。今のコンタクトレンズにつながる発想だ。眼中に忍ばせたサインは、後世の発明を見越した「特許願」にも見えてくる。
ダビンチの時代、魔法のルーペがあったとは思えない。では、肉眼で見えない字をいかにして書き入れたのか。一部始終を見届けたはずの瞳は、防弾ガラスの向こうから謎めいたまなざしを返すばかりである。