2011年4月5日火曜日

蕗と、蕗の薹(とう)は違うんですか

川崎市宮前区有馬にある弊社が販売中の中古戸建をチェックに行ったとき、物件の傍の草むらに生えているフキノトウ(蕗の薹)を見つめる私に、経営責任者の中さんが、それはなんですか?と問われたので、これはフキノトウですよ、と答えた。

Fuki.jpg

蕗(ふき)

中さんはその答えを聞くや否や、私に思わぬ質問を返してきた。「フキノトウとフキとは違うんですね」。瞬間、私は戸惑った。う~ん、そりゃ、ありゃ、どうしよう。フキとフキノトウは違うことは解っていても、常々、両者は同じ所で寄り添って生えていることから、親戚同士かも? 違うことは違ってもその違いを説明できない。全く別物とも思えない。やっぱり調べておく必要があるなあ、と感じた。

そして、2日後の20110404、今度は横浜市神奈川区三枚町で仕入れて、これからリフォーム工事に入る中古戸建に工事の内容を確認するために行った。空き家になった庭には、痩せていかにも貧相だけれども、フキとフキノトウが密生していた。

蕗の薹(フキノトウ)

本業の仕事に入る前に、先ず、私がとった行動は背が高く伸びきったフキノトウは諦めて、比較的太っているフキを摘むことでした。フキノトウはテンプラにして食べると美味いんだが、食べごろをはるかに過ぎてしまっていた。私の郷里は京都府綴喜郡宇治田原町で、最たる農繁期である茶摘みシーズン中の簡便な食事のおかず用として、春にフキを摘んで、塩漬けにして保存しておくのです。生家は、今でも宇治茶の生産農家です。子供の頃、毎年、母と祖母にフキ摘みにかりだされていたのです。

フキを摘んでみたものの、どのように調理したらいいのか、食ったことは大いに経験あるのですが、よく言われる灰汁(あく)抜きの方法は見当もつかない。それは、人に聞きまくればいいや、と思っていた。

本業の仕事が手につかないまま、フキとフキノトウの根を掘り起こしてみた。これからが、中さんが疑問に持ち、私がきちんと答えられなかったことの本格的学術調査に入ったのです。

同じ根から、フキとして葉を出し、フキノトウとして花を咲かせているのだろうか。それとも種を異にして、別々の個体なのか、この確認をしたかった。

本業の仕事は、ますます遠ざかっていく。寄り添っているフキとフキノトウのそれぞれの茎を左手で握り締め、右手で根を気遣いながらスコップを根の側にさした。スコップもろともゆっくり一緒に引っ張り上げて、奔放に絡んだ根についている土をほぐした。土を慎重に払い落としてみると、フキとフキノトウが同じ根っこから茎を伸ばしていることが判明した。

これで、何もかもがハッキリしたのです。

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上の写真で、一つの根からフキとフキノトウが茎を伸ばしいる状態が確認できる。フキは葉っぱを広げて炭酸同化作用を行い、成長に必要な栄養分を作る。

ここまで、進めてきて気づいたのです。今まで地下に潜っている部分が根だと思っていたのですが、そうではないらしいのです。根ではなく地下茎なのです。根は地下茎の先に細くひげのように伸びているのが、根だ。

上の写真の一番、二番に背の高いのがフキノトウが大きくなったものです。それ以外はフキ。

フキノトウは花茎と言って花と茎がでてくる。葉のように見えるのは、葉が変わったもので苞〈ほう〉と言う。たくさんの苞で花を守っている。まだ花が奥深く見えない状態のときが、テンプラにして頂くのがベスト。フキノトウは大きくなって、花が咲いて、種ができて仲間を増やす役目のようだ。地下茎を伸ばして、仲間を増やすこともできる。

時期的には、フキノトウが先に芽が出て、その後にフキが出るのです。

(下の写真は、上の写真の地下茎、根の部分を接写したものです)

画像 058

私がこんな学術調査をして、本業を疎(おろそ)かにしている間にも、同僚の長さんは、物件の床下を潜って構造的に何か怪しげな箇所はないかと、額に汗流して働いていた。一仕事を終えた長さんに、学術調査の結果を詳しく話して、わが身のサボタージュの後ろめたさを誤魔化した。

長さんは、興味をもって聞いてくれた。中さんにも、調査の結果を話さなくてはイカン。勤務時間中でありながら、貴重な時間ををいただいたのだから。