2011年4月26日火曜日

蓬(よもぎ)を食べる

先日は、春を代表する料理の品、伽羅蕗(きゃらぶき)を作り、それから2,3日して筍ご飯を作った。両方とも、灰汁(あく)抜きに課題を残したものの、まあまあの出来だった。それぁ、美?味!かっ?た!

料理は、どうしても旬のものを扱ってこそ、その醍醐味が増すものです。

今回は、蓬(よもぎ)がテーマです。

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生まれ故郷(京都府綴喜郡宇治田原町)での子供の頃は、この時期になると祖母が蓬団子(よもぎだんご)を作ってくれた。祖母と連れだって、よもぎを摘みに野原に出かけた。同じ時期に土筆(つくし)や蕗(ふき)もあっちこっちで背伸びをしていた。子供の私は、少しは手伝ったが、原っぱで腹這いになったり、斜面をうつ伏せのまま滑り下りたり、横回転しながら転げ下りた、飽きたら、両手を頭の後ろに組んで仰向けに寝転んだ。青い空に白い雲。俺は一体、どんな大人になるのだろう、と、そんなことは考えもしなかっただろう。祖母は、背を丸めた格好で、摘む手を休めては、遊ぶ私を確認するかのように優しい眼差しで見つめた。優しいおばあちゃんだった。タモツ、よもぎは薬草と言うてなあ、体にいいんだよ、祖母は毎年のようにそんなことを言っていた。

できるだけ若い葉を、先から4、5枚までを摘むのです。摘んだ葉を整理して洗って茹でて、ゴマすり鉢に入れてすりこぎ棒で細かくすりつぶした。それらに、上新粉ともち米粉と砂糖を混ぜたものに熱い湯を加えて、今度は練った。この練ったものを適度に千切って、手のひらで広げ、そこにあんこを詰めて蒸し器に、蒸しあがれば出来上がり。今回、ネットで調べた作り方と我が家の家伝の作り方とは違うようです。私の祖母の場合は簡略風だったのだ。このように祖母が作るのを、側で見ていたので、このように今でも間違いなく説明できるのです。

でも、今の私の環境では、このよもぎだんご作成はどうしても無理だ。

この時期、子どもの頃、いっつもそうだったように、よもぎを摘み取って手に取らないと気がすまない。そして、小学校用地予定地の草むら、やっぱり、知らず知らずのうちに、もう摘みだしていたのだ。両の手のひらで持てるだけ摘んで、兎に角、持って帰ることにした。テーブルの上に広げて、暫らく眺めた後、意味もなく、あてもなく、蕗を茹でたときと筍を茹でたときと同じように茹でてみた。茹でておけば、時間の猶予がもらえて、その間に何か料理のヒントが見つかるかもしれない。茹で上がったよもぎを皿に盛って、それから、、、、、、冷蔵庫に仕舞った。

そして翌々日、朝飯に夕べの残りご飯をチャーハンにしようと思いついて、準備に入った。卵と、葱(ねぎ)か玉葱のどちらを入れるか、魚肉ソーセージも、それに、そうだこの茹でたよもぎを入れてみようと思いついた。こまかく刻んだ。大胆かつ不敵に料理は楽しみましょ、これが昨今の私のスローガンだ。

その結果は、如何にあいなりましたか、というと、、、、、、、

心配はいらなかった。美味かったのです。よもぎだんご並みに、十分、昔、懐かしいよもぎの香りと味は楽しめた。チャーハンの具に、よもぎとは、余人は思いつかないだろう。

沖縄でも田舎の方に行くと、ラーメン屋さんではテーブルの端(はし)っこに笊(ざる)によもぎが山のように盛られていて、お客さんはそれを自由に取って、ラーメンの上にふりかけて食っていた。食材として、よもぎが豚肉と同じように大切にされている。そんな風な食べ方も、最初のうちは、私には奇天烈、珍妙、奔放過ぎる食べ方だと驚いたが、その後、そんなに驚くこともなく、沖縄に行ったときは、麺は普通盛りでもよもぎを大盛りにして食うようになった、このような有様です。

解ったか!! 決して、よもぎチャーハンが常軌を逸した、変チョコリンな食い方ではなかったことを実証して見せたから、皆さんも安心してお試しください、最高の取り合わせだとは思わないが、よもぎの香りや味を、この時期に楽しみたいと思う人には、特ダネ情報ですぞ。

ここまで読んで、よもぎ摘みを本気でやろうとする紳士淑女に注意を促したい。よもぎによく似た危険な植物があることを知らせないと、私が恨まれる羽目になりかねない。葉や茎はそっくりなのですが、葉の裏に産毛のようなものがないのがあって、それは名前を知らないのですが、毒を持っているのです。死にたくない人も、死にたい人も、産毛を探すことですよ。春のうららかな陽気のなかで、産毛を確かめるのってちょっとエロい気分? それは私特有の感性のようだ。

都会暮らしをして、菖蒲湯を知ったのですが、私の実家ではそんなヤワなものではなく、菖蒲の代わりによもぎを使った。浴用に関して、野趣に強弱があるとすれば、菖蒲よりもよもぎの方に軍配だ。菖蒲は上品過ぎる。祖母のお灸の後が残っている老いた背中をよもぎでこすって、喜ばれたことを思い出した。よもぎは布の袋に詰めて浴槽の湯に浸した。よもぎの香が浴室を満たし、神経を鎮めてくれた。よもぎを少し乾燥させてから使ったようだ。もう少し、よもぎが大きくなったら、これも試してみたいと思っている。50年前の記憶が蘇るだろうか。

ワンポイントレッスン=よもぎの乾燥させた葉の裏の綿毛はお灸のモグサになる。

突然、我が家に訪れた友人に、よもぎチャーハンをどうやと進めたのですが、逆に、どこで採ってきたんだと強い口調で問い詰められた。犬のおしっこぐらいはかかっているかもしれませんが、放射線よりも安全だよ、と再三進めても、相手に見向きもされなかった。