2014年1月29日水曜日

名護、辺野古反対の市長再選

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20140120 朝日新聞・朝刊 1面記事より

 

米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設計画への賛否が最大の争点となった沖縄県名護市長選は19日、投開票され、同市辺野古への移設に反対する現職の稲嶺進氏(68)が、移設推進を掲げた新顔の前自民県議、末松文信(ぶんしん)(65)=いずれも無所属=を破り、再選を果たした。

この選挙の結果の新聞報道に各紙、大きく違いが出た。私は6紙を読み比べた。朝日が一番強く、東京が二番、三番は毎日の順で、辺野古移設を再考することを主張した。また、粛々と辺野古移設を進めるべきだとの論調では、一番が産経、二番が読売、三番が日経の順だった。私は、国策としての事業といえども、地元の民意を踏みにじってまでも進めるということについては、どうしても同意しかねる。日米安全保障問題も重要な問題ではあるだろうが、やはり、民意は尊重されるべきだ。

市街地にある普天間飛行場は世界で一番危険な基地で、その危険を回避するがために浮かび上がった移設だが、、、、今後、どのような進展を見せることになるのだろうか。政府は、それでも、計画通りに着手するという。

 

選挙に絡めての移設問題の記事を20140120の朝日新聞・朝刊から拾った。後日のためにダイジェストさせてもらった。

辺野古反対の現職再選

名護市長選 政権、推進変えず

 

那覇総局長・谷津憲郎

《解説》

米軍普天間飛行場を名護市の辺野古へ移すという計画に、市民は「NO」をつきつけた。稲嶺進氏は、その先頭に再び立つ。

カネと引き換えに米軍基地を押しつけようとする政権への「NO」であり、埋め立てを承認しながら「県外移設の公約はやぶっていない」とする仲井真弘多知事への「NO」である。

ここ数ヶ月を振り返ってみよう。政府・自民党は、辺野古容認に党県連を転じさせ、末松文信氏に市長選候補を一本化。応援演説では500億円の「名護振興基金」も表明した。知事も一体になった。思惑通りだったはずだ。

それらへの民意を示す初めての機会が、この市長選だった。結果は、見ての通りだ。移設問題が浮上してから計5回の市長選で、容認候補が連敗するのは、これが初めて。市民の意向は明らかだ。

だが稲嶺氏の当選で、辺野古への移設計画がついえたとは、残念ながら私には思えない。沖縄の問題ではない。私たちの政府が、そういう政府だからである。菅義偉官房長官は16日、BS番組の収録で、市長選の結果について、移設には「全く影響ない」と言った。末松陣営も「稲嶺氏が反対しても、移設は止まらない」と繰り返した。止まらないのではない、止めないのである。

私たちの民主主義社会は、投票で意思を示すというルールで動いていると教えられてきた。

しかし稲嶺市政の4年間に政府がとった態度で分かるように、沖縄の基地問題に限れば、このルールは通用していない。では、と違う道を選ぶと「結局はカネの問題か」と揶揄される。

そういう苦しみの中で、名護市民はそれでも「移設NO」を選んだ。実現させるかどうか。今度は本土が意思を示す番だ。

 

天声人語

17世紀末というから江戸の元禄時代、琉球からの僧を迎えた江戸の僧が、その帰郷に際して贈った漢詩が、「琉球は遥(はる)かな大海原に浮かぶ」と書き出し、〈其(そ)の民、天性礼譲に狥(したが)い/古(いにしえ)より未だ甲兵を用うるを聞かず〉と続いていく。礼儀正しく、武器をとって戦ったことがない、と。

その「武器なき島」が、19世紀の初めに「ナポレオンを驚かせた話は前にも書いた。英軍艦が琉球周辺を航海した帰途、セントヘレナ島に流されていた元皇帝に艦長が会って話した。ナポレオンは、武器を持たぬ民の存在を信じかねたそうだ。

それから60年ほどたって、明治政府は琉球王国をとりつぶして日本に組み入れる。沖縄県が誕生し、太平洋戦争での地上戦の悲劇に至った。それにしても、日本への併合措置をさす「琉球処分」は、何と酷薄な響きだろう。

この言葉は戦後、本土が沖縄に難儀を強いるたびによみがえった。講和条約による切り離し。米軍基地を残したままの復帰。そしていま、普天間飛行場の県内移設にも、その言葉が重ねられている。

沖縄基地の多くは米軍の「銃剣とブルドーザー」で有無を言わさず造られた。だが建設を容認した基地となれば違ってくる。何か起きたときに確固たる声を上げられるかーーそんなことも沖縄に住む知人は憂えている。

移転先の名護市民は市長選挙でノーの意思を示した。それは政府自民党のあからさまな「札束とブルドーザー」への軽蔑でもあったろう。押しつけはもはや限界である。

 

社説

名古屋市長選  辺野古移設は再考せよ

名護市辺野古への基地移設に、地元が出した考えは明確な「ノー」だった。

米軍普天間飛行場(沖縄市宜野湾市)の移設先とされる名護市の市長に、受け入れを拒否している稲嶺進氏が再選された。

沖縄県の仲井真弘多(ひろかず)知事は辺野古沖の埋め立てを承認したが、市長選の結果は移設計画や政府の手法への反発がいかに強いかを物語る。強引に事を進めれば大きな混乱を生む。政府は計画を再考すべきだ。

名護市長選で基地移設が争点となるのは5回目だ。

昨年末の知事の承認によって、日米両政府の合意から18年間進まなかった移設計画は一つのハードルを越えた。今回の市長選ではこれまで以上に「基地」が問われた。

移設反対派地元の民意を示す最後の機会ととらえた。一方、推進派の末松文信氏側には連日、大臣や知事、自民党国会議員が応援に入り、国や県とのパイプを強調。基地受け入れの見返りに国から交付される米軍再編交付金などを使った地域振興策を訴え続けた。

しかし、振興策と基地問題を結びつけて賛否を迫るやり方には、名護市だけでなく、沖縄県内全体から強い反発がある。当然だろう。

知事が承認にあたり安倍首相と振興予算の確保などを約束したことに対しても、「カネ目当てに移設を引き受けた、という誤ったメッセージを本土に発信した」と批判が上がった。知事は県議会から辞職要求決議を突きつけられる事態となった。

極めつけは自民党の石破幹事長の発言だろう。市長選の応援で「500億円の名護振興基金を検討している」と演説し、その利益誘導ぶりは有権者を驚かせた。稲嶺氏は「すべてカネ、権力。そういうことがまかり通るのが日本の民主主義かと痛烈に批判した。

この選挙をへてなお、政府は辺野古移設を計画どおり推進する方針だ。

稲嶺市長は、作業に使う海浜使用許可を拒むなど、市長の権限で埋め立て工事の阻止をめざす考えだ。政府が立法措置や強攻策を用いて着工することなど、あってはならない。

「普天間の5年以内の運用停止」という知事の求めを、国が約束したわけではない。普天間の危険性を考えたとき、辺野古移設が最善の道なのかどうか。政府は県外移設も含め、もう一度真剣に検討し直すべきだ。同時に、オスプレ配備の見直しや米軍の訓練移転など基地負担軽減を急ぐ必要がある。