2014年3月10日月曜日

沙羅、愛子お姉さんに習おう

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20140213 朝日・五輪

決勝2回目のジャンプを終えた高梨沙羅=飯塚晋一撮影

 

今月の8日、スキージャンプ W杯オスロで、個人第16戦が行われ、既に個人総合2連覇を決めている高梨沙羅(17)が、初の5連勝をマーク、今季13勝目、通算22勝目を挙げた。1回目は最長不倒の132メートル、2回目は128.5メートルを飛び合計257.6点で圧勝した。

今シーズン、W杯シリーズでは、落ち着いて勝ち続けてきた。小さな沙羅ちゃんに王者の風格さえ感じられる。それでも、先月のソチ五輪では、優勝候補の最有力にあげられながら、初の五輪出場、平常心で飛ぼうとしたのだろうが、オリンピックに棲む魔物って奴か、重圧に苦しんみ、無念の4位で終わった。気まぐれな風にも影響を受けた。

今大会で女子ジャンプは初めて行われた種目だ。

ラジオで、スポーツ写真家が、飛び出し台にいる沙羅ちゃんが緊張でガチガチ、いつもの高梨選手ではありませんでしたと話していた。

ソチ五輪で4位入賞が決まった直後の記者のインタービューに、「支えてくれた人たちに感謝の気持ちを伝えるためにこの場所にきたので、いいところを見せられなかったのがとても残念、ここ(オリンピックの場)に再び戻ってきて、その時には、いい結果を出したい」と訥々と話していた。この敗戦の悔しさこそ明日への苦い良薬になるだろう。

テレビの前の私は、「沙羅ちゃん、ヨッシャ」と声をかけた。いいんだヨ、現実をしっかり認識することダ、若いんだからサア、これからヤ、と既に次のステージでの活躍に期待していた。私の方が立ち直りは早かった。

沙羅ちゃんは次に向かって往(い)く。そして、果敢に戦っている。平常心を取り戻したのだろう、現在、W杯の転戦では勝ち続けている。

悔し涙を浮かべる沙羅ちゃんを見ていて、頭の隅っこに、開幕一番目に登場したモーグル女子の上村愛子(34)選手のことが過(よぎ)った。テレビに映る沙羅ちゃんに向って、あの上村の愛子姉さんのアスリートとしての気骨を学べ、と叫んでいた

上村選手は、18歳で初出場した98年長野五輪で7位、以後大会ごとに6位、5位、4位と順位を上げて5大会目を迎えていた。今度のソチでは、優勝候補の筆頭、本気でメダルを取ると意気込んでいた。06年トリノ大会では「そろそろ(メダルを)もらえると思っていたのに」と目を腫らし、10年バンクーバー大会では「なんで一段一段なんだろう」と涙した。そして、結果は4位入賞に終わったが、彼女の表情はすがすがしかった。

かって、現役時代には女姿三四郎と言われた筑波大大学院准教授の山口香さんが、20140218の日経新聞に寄稿していた。その一部が、私が応援団長を務める沙羅ちゃんを激励するにふさわしい文章だったので、そのままここに転記させてもらった。

海外の選手はW杯を生活のために戦うが、五輪は人生を懸けて戦うと。今回、W杯では未勝利で金メダルを勝ち取ったドイツのフォクト選手らは人生を懸けた一発勝負に出たわけだ。ちょうど上村選手が競技人生の集大成として、絶対に逃げずに滑りきるんだという決意で攻めたように。

上村選手が示したのはメダルだけではないスポーツの価値。あれだけ重圧がかかる戦いを終えて「すがすがしい気持ち」になれる選手がどれだけいるだろうか。よく聞く「自分のベストが出せればいい」という言葉も、本当にそう思えるのは最善を尽くした人間だけ。努力は結果を保証してくれないが、「これが自分のベストだ」と言い切れるよりどころになる。

自らの限界に近づくには上村選手のような鬼気迫るものも必要。4年後、最高の飛躍を見せてやると目の色を変えた高梨沙羅選手を見たい。