2011年5月15日日曜日

原子力発電も地産地消だ

(3月20日、「エア・フォート・サービス」の無人飛行機によって撮影されたもの。左が4号機、右にあるのが3号機)

東日本大震災の津波で甚大な被害を被った東京電力福島第1原子力発電所は、2ヶ月経っても未だに鎮まるどころか、今日0515現在、まだ最悪の状態から脱出できていない。20110512の朝日新聞によると、東京電力は、3号機でも取水口付近の汚染水を防ぐために設置されたシルトフェンスの外側の海水から、海洋に排出できる国の基準の濃度の1万8千倍のセシウム134を検出したと発表した。2号機からは高濃度の汚染水が漏れ出たことはあったが、3号機で確認されたのは初めてだ。

今回の事故で、つくづく原子力発電所が摩訶不思議な代物だということが、国民全ての人が全身で理解した。摩訶不思議というのは、一つ間違えれば、人間の叡智で制御できないからだ。原子力発電の安全神話は崩れた。今月の11日の朝日新聞・天声人語で紹介されていたものをここに加える。ある科学者はかって、放射能を撒き散らす核実験について「地球の一点から全世界が汚染できるとは誰も考えつかなかった」と語ったそうだ(武田徹{私たちはこうして『原発大国』を選んだ」より)。

20110513の朝日新聞で、社会学者のウルリッヒ・ベックさんが、近代社会が生んだ限界のないリスクに関して、原子力だけではないが、気候変動やグローバル化した金融市場、テロリズムなども同じような性格のリスクにさらされていると言い、そのリスクのことを次のように語っている。「人間自身が作り出し、その弊害の広がりに、社会的、地理的、時間的に限界がない大災害です。通常の事故は、たとえば交通事故であれ、あるいはもっと深刻で数千人がなくなる場合であれ、被害は一定の社会グループに限定されます。しかし、原発事故はそうではない。新しいタイプのリスクです」。

政府もここに至って、今後の原子力発電行政の見直しを始めたらしい。検討する内容は、決まっている。先ずは、今稼動している原子力発電所が安全かどうかの点検だろう。その後、点検や改善や、改良、新技術の開発 が試みられるのだろうが、それよりも何よりも、絶対安全な原子力発電が可能なのだろうか。本当に想定外だったのかという論議はさておき、(想定外のことが発生しようが)どうにでも、コントロールできるものでないと、不安だ。その不安が払拭されて安全が保証されないようでは、原子力発電所は、作ってはいけないのではないか。

国策として、原子力発電に頼るという今までの行政の見直しが必要だ。国民投票で国民の意思を確認することは必至だ。

近年、食物や衣料その他で、地産地消運動が盛んだが、原子力発電を真に望むなら、絶対地産地消でなければならないのではないか。住まいの近くに原子力発電所があるべきだ。たとえ東京といえども、人口が集中していようが。そのためには、大気を汚さない、住民を危険に絶対さらさない。当然、発生した廃棄物もその近くで処分されなくてはならない。

その使用済み核燃料廃棄物の処理場、それから再処理技術の確立や再処理場の確保もできないまま、原子力発電に猛進した結果が、こうだ。福島第1原発の貯蔵プールには事故時、4546本の使用済みの核燃料があった。東芝、日立、三菱らの原子力発電施工会社と各ゼネコンだけが、巨利を得てきたのではないか。虚構の安全神話を振り回しながら。

そんなことを雑感する日々だった。

ところが、どっこい、変なことが起ころうとしていることが判明した。そのことが、今回のこの稿のメインテーマだ。

私が最近の日々思っていたこととは全然逆のことが行われようとしている。モンゴルに日米が、核廃棄物の処理場を作るというのだ。モンゴルには行ったことがないので、本当のモンゴルの素晴らしさを知らないのですが、あの奇麗な青い空、緑の草原をイメージすると、なんだかイヤな話題だなあと思う。日米が、自国内では処分場が確保できないので、他所の国に捨てるというのだ。その昔、首都圏では住民から集めた糞尿を近海に投棄していたことを思い出した。ただ、糞尿は化学物質ではなかった。

内容は、毎日新聞の記事に頼ろう。

核処分場・モンゴルに計画ーーー日米、昨秋から交渉

【ウランバートル会川晴之】経済産業省が昨年秋から米エネルギー省と共同で、使用済み核燃料などの世界初の国際的な貯蔵・処分施設をモンゴルに建設する計画を極秘に進めていることがわかった。処分場を自国内に持たない日米にとって、原子炉と廃棄物処理とをセットに国際的な原子力発電所の売込みを仕掛けるロシアやフランスに対抗するのが主な狙い。モンゴルは見返りとして日米からの原子力技術支援を受ける。だが、東日本大震災による東京電力福島第1原発事故で日本政府は原子力政策の抜本的な見直しを迫られており、「核のゴミ」を第三国に負わせる手法に批判がでそうだ。

ここまでキーを叩いてきて、ふと思いついたことがある。今後、実用化を目指している「高速増殖炉」のことだ。これは、どんなもんなんだろう。まだまだ、心配の種は尽きない。