2011年5月21日土曜日

和平への可能性を信じたい

イスラエル、パレスチナ、とアメリカ、エジプトさん、何とかならんもんか。

パレスチナ評議会(国会)において、イスラエルとの交渉に前向きなファタハと、イスラエルの生存権を認めず暴力を放棄しないハマスが、連合して政権運営をすると合意した、との報道を耳にした。

和解が実現した背景に、自治区で起こったパレスチナの統一を求める民衆のデモがあった、と聞く。阪神球団の元監督の吉田義男さん流に言えば、一丸となって、イスラエルと交渉してくださいとのことだろう。

このデモに参加した民衆の声を、為政者たちは肝に銘じて欲しい。中東、アラブ諸国、北アフリカでは長年圧政に苦しめられた民衆が、圧政者が牛耳る政権を倒している。「アラブの春」と呼ばれる民主化の風だ。この民衆のエネルギーがこのパレスチナにも伝播したのではと思う。何だかんだと問題はあろうが、自治府の政治体制をしっかり組んで欲しいとの民意の表れなのだろう。

この両者が、統一連合して政権運営を目論むのは、中東地域の安定的な平和に寄与することは間違いない、が、しかし、その道筋は傍(はた)からは、到底、予想が立たない。案の定、イスラエルは、この統一連合政権に強く反発している。

合意の裏舞台では、大国、隣国の何やらが作用しているようなのだ。ハマスに武器や資金を提供していたシリアが、アサド政権に退陣を求める反政府デモが盛り上がっていて、その盛り上がり次第では、ハマスにいい影響が及ぼさなくなってくる可能性を、ハマスは察知したのだろうか。アラブ諸国のなかでも一番イスラエルに友好的だったエジプトのムバラク前政権が倒れて、新しくなった政権が今回の合意を画策した。

イスラエル、パレスチナ、とアメリカ、エジプト。各国の指導者は、この地域と国の、民衆や国民が安らかに過ごせるように叡智を振るって欲しいもんだ。

争点は、国境の画定や聖地エルサレムの帰属、パレスチナ難民の処遇だ。アメリカ・オバマ大統領は、領土確定の原則として、イスラエルによる占領が始まる以前の1967年の境界線を基本に交渉するよう提唱している。加えて、イスラエルは占領地の入植を即時停止、パレスチナ側はテロを完全に放棄することで、和解交渉が始まることになるのだろうが。聖地エルサレムの帰属問題は、頭が痛い。

今までの和平交渉を振りかって見ても、そう簡単には何もかもが上手くいくとは思えないが、門外漢の私には、大国と言われる国や、豊かな国の方から先に、多少の譲歩があってもいいのではないか、と思う。私の生まれながらの判官贔屓(はんがんびいき)だ。

私の頭の上に覆(おお)い被(かぶ)さる、悲観雲、絶望雲を追い払ってくもらいたい。強く賢いリーダーの出現を望む。この合意を足がかりに、イスラエルとパレスチナの和平への一歩にして欲しい。

 

20110517

朝日新聞・社説

パレスチナ  2派合意を和平の力へ

約4年にわたって、分裂、対立していたパレスチナの主要勢力のファタハとハマスが、対立を解消して、統一政権発足に向けて動くことで合意した。

ファタハはパレスチナ解放機構(PLO)の主流派で、故アラフアト議長の後を継いだアッパス議長が率いる。ハマスはPLOには属してはいないイスラム政治組織である。

和解は自治区の正常化に第一歩であり、イスラエルとの和平につながるよう期待したい。

ファタハは長年自治府を主導してきたが、5年前の自治評議会選挙で、ハマスが勝利し、政権をとったことから対立が始まった。ヨルダン川西岸を支配するファタハとガザを支配するハマスに分裂してきた。

和解が実現した背景に、自治区で起こったパレスチナの統一を求める民衆のデモがあった。

中東各地で強権体制に民主化を求める民衆の動きは、パレスチナでは民衆不在で対立を続ける両組織への批判となった。

イスラエルとの和平実現もパレスチナ民衆の願いである。統一政権づくりとともに、中断している和平交渉再開に向けて統一的な立場を詰めて欲しい。

ファタハはイスラエルを認め、パレスチナ国家との二国共存を支持するか、ハマスはイスラエルの存在を認める必要がある。

イスラエルのネタニヤフ首相は、今回の和解を「和平への打撃だ」と非難した。しかし、西岸のファタハとだけ和平を結んでも、ガザのハマスが和平を拒否していては、イスラエルに平和はやってこない。

一方、米国のクリントン国務長官はハマスがイスラエルの承認や暴力放棄などの条件を認めないかぎり連立政権を支持しないという立場を語っている。

しかし、パレスチナの強硬派を代表するハマスに、イスラエルの生存権を認めさせるために和平が必要なのではないだろうか。

PLOがイスラエルを承認したのは、1993年のオスロ合意のときである。イスラエルの強硬派であるネタニヤフ首相がパレスチナ国家を条件付で認めたのは、2年前に首相に就任した後のことだ。

ハマスが政権を担うことを拒否するのではなく、国際社会が関与していく必要がある。

オバマ大統領は昨秋、イスラエルとパレスチナの間で1年以内の和平合意をめざすよう呼びかけた。今回のパレスチナの和解が追い風になってほしい。