2011年8月14日日曜日

日本サッカー、韓国に大勝

20110810 19:00から日韓戦が、札幌ドームで行われ、日本代表は韓国代表に3-0で大勝した。

(下2枚の写真は、朝日新聞20110811のスポーツ面より無断拝借した)

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(前半35分、先制ゴールを決め喜ぶ香川。左は李=杉本康弘撮影)

 

4日に急性心筋梗塞で他界した松田直樹元日本代表DFの追悼試合にもなった。日本選手は上腕に黒い喪章を巻いて戦った。

日本は韓国戦に、ホームでは13年ぶりに勝利、また韓国から3点を取ることも、3点差以上の勝利も37年ぶり。この試合で2点を入れた香川は、韓国戦で2点以上を決めた日本代表の釜本邦茂氏に次いで2人目になった。

この試合は、親善試合だったが、9月から始まるW杯3次予選を前にした最後の実戦だった。双方にとって、その状況は同じだ。それに、日韓の両国にとって、サッカー史上の永遠のライバル同士、宿敵のライバルだ。

両国の誇りを賭けての試合は、いつのどの試合においても、深くて重い歴史を刻んできた。その意味では今回も同じだが、私にはちょっと違う何かを感じていた。

私の中では、韓国と戦うということは、他の国と戦うのとは意味が違うのだ。

世界ランキングでは日本が16位で、韓国が28位と差はついたけれど、そのランク差ほど力に差があるわけではない、と私は考えているし、多くの日本人の実感だろう。

そのように考えていた私にとって、今回の試合は想像以上の結果に終わった。韓国に対して、ちょっとがっかり。日本の大勝をぬか喜びできないでいる。試合前から、日本チームがそれなりにやるだろうとは、容易く予想できたが、結果、余りの韓国の元気なさに落胆した、と同時に心配もしている。韓国が元気でないと、日本の切磋琢磨力が弱まるのでは、と危惧するのだ。若い人は、日本はもっと新しい世界に突入しているんだよ、と言うかもしれないが。

私にとっても韓国は特別、近しいのだ。40余年前W大のサッカー部に所属していた時は、毎年W大と韓国の高麗大学とは定期戦を行なっていた。両校が隔年で、行ったり来たりした。朝鮮大学校ともしばしば試合を行なった。そして、大体がヤラレた。負けた。そんな過去がトラウマになっているのかもしれないが、韓国のサッカーを油断大敵、心のどこかで畏敬している。

だからこそ、韓国は頑張らないとイカンのや。

今回の私の興味は、日本のサッカーが若い海外組とJリーグ組が、ザッケローニ監督の下、どのように機動するのか、それと、いつも感動を与えてくれる韓国の熱い動的なパワーサッカーがどう変わっているのかを見極めたかった。

韓国のKリーグでは、昨年八百長事件が露見、約50人が起訴された。まだまだ残り火がくすぶっているようだ。そんなゴタゴタでパワーまで削がれてしまったのだろうか。

かっての体力をギリギリまで酷使して、タフに走り回るサッカーから、日本と同じ緻密なパスサッカーに切り替えようとしている端境で、混迷しているのだろうか。そんなことを何かで知った。韓国の監督は完敗を認めた。思わぬ怪我で中盤の主力選手が退場して作戦通りにはいかなかったこと、海外組と国内組みが巧く機能しなかったことが、敗因だとコメントした。

私は、我が目を疑った。韓国のチームは最初から動きが鈍(にぶ)かったのだ。試合が始まって、しばらく見ていて、アウエーということもあるのだろうが、余りにも、日本の動きがいいのに比べて、韓国は動きが鈍過ぎた。変だぞ。こんな韓国を見たことはない、ちょっと可笑しいぞ、と思っていた。前半、本来、あんな局面で、絶対怪我などしないチームなのだ。

そんなチームの流れに、孫・晴が気づいたのか、偶然なのか、「ジジイ、韓国は朴智星(パクチソン)がいないから、弱いんだよ」と言うから、「晴、そんなことはないよ、一人のスーパースターだけではサッカーできないのは、晴が一番よく知っているだろう」の返答に彼は納得したのだろう、しばらくテレビ観戦して、それから「ジジイ、水は、炎を消しちゃうんだよ」ときた。ジジイは「でも、少しぐらいの水では、大きな炎を消すことはできない。少しの水なら、逆に炎を勢いづかせることだってあるんだよ」と振り向けた。彼は黙っていた。

この敗戦は韓国側にとって大きな波紋を国内にもたらしたのではないだろうか。今回は分らないが、いつもなら、監督の責任問題は避けられないだろう。国技のサッカーで、隣国、それも何かと気になる(憎っくき)日本、目の上のたんこぶ、に負けたのだから、そのショックは余りにも大きい。

日本が成長の貌を見せて勝ったことは嬉しい、そやけど、、俺には何故か物足りない、、、。韓国の捲土重来(けんどちょうらい)、奮起に期待する。

 

得点は次のように生まれた。

前半35分、遠藤が相手陣内の右サイドでボールを奪うと周りの選手たちが即座に反応した。遠藤のパスはゴール前の李へ。すかさず、ワンタッチで李がヒールパスで中央に流すと、走り込んだ香川が右足でゴールを決めた。この李のヒールパスが絶妙だった。相手ディフェンスはこのワンタッチで、マークの距離を広げた、そこにマークを外して後ろから走りこんできた香川が、スピードに乗ったまま、もう一人のディフェンスを外して、余裕をもって蹴った。

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(後半10分、香川の得点をアシストする清武)

 

2点目、3点目は、初陣清武がアシストをした。ロンドン五輪を目指すU22代表の主力は、前半35分、岡崎の負傷で急遽2列目の右サイドに入った。

後半8分、駒野が左から相手ディフェンスをかわしてシュート。キーパーがはじいたこぼれ球を清武は本田につないで、本田のゴールをアシストした。本田は左インサイドキックで、狙いすましてゴール左隅っこに入れた。本田ならではの力強いインサイドキックだ。本田はゴールしたことを確認した後、両手を広げて大はしゃぎ。指を天に突き上げて、先日亡くなった元日本代表DF松田直樹選手にゴールを捧げた。

その2分後、後半の10分。今度は香川と清武とのワンツーで、香川は右足で左隅に、この試合2点目を決めた。

ザッケローニ監督が選んだシステムの布陣は、3バックを使わないで、慣れ親しんだ4-2-3-1だった。先ずは、来るべきオリンピック予選を前に、このシステムの成熟に努めた。

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以下の資料は20110811のスポーツニッポンの紙面より無断拝借した。

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サッカー評論家の金子達仁氏が20110811のスポーツニッポンに寄稿している文章が、全てを巧く表現されているので、ここでもヤマオカ、お得意のパクリをさせてもらう。

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金子達仁の「春夏シュート」

こんな美しい日本 生まれて初めて見た

人間とは、サッカー選手とは、そしてチームとは、かくも短期間に、かくも大きな変貌を遂げることができるのか。わずか1年と少し前、手も足も出ずに、いや、出そうともせずに敗れた選手たちは、完膚なきまでに宿命を叩きのめした。韓国に勝つ日本を見るのは初めてではないが、こんなにも強く、美しく、翻弄して勝つ日本を見たのは生まれて初めてである。見事な、本当に見事な勝利だった。

何より驚かされたのは、攻撃面における意識の変化である。

思えば、日本のサッカーは長く「アシスト至上主義」に毒されてきた。玄人と言われる層は、ゴールばかりに目を向ける素人を嘲笑い、アシストこそがサッカーの華であるかのように振る舞ってきた。「点をとるだけがストライカーの仕事ではない」という言葉もよく聞かされた。

なるほど、嘘ではない。だが、ストライカーにとって最大の仕事は点をとることにあるのだという点を、長く日本人はボヤけさせてきた。献身的な守備をしていたから、確実にポストプレーをこなしていたからーーーーそんな理由で、ストライカーが点を取れなくても温かい目を向けていた。

だが、岡崎慎司は知ったはずである。点を取れないストライカー、特に外国から来たストライカーにドイツのファンはなんの価値も見いだしてくれないということを。李忠成も痛感したはずである。たった一つのゴールで、人生が激変することもあるということを。

岡崎しかり、李しかり、香川しかり。ゴール前に侵入した彼らがまず第一の選択肢として念頭においていたのは、ゴールだった。仲間のための美しい献身ではなく、自分が輝くためのプレーだった。ボールをもらう瞬間から、いや、もらうためのアクションに入った段階から、彼らはフィニッシュで終わるイメージしたプレーをしていた。そこが、目標なくプレーし、やたらバックパスを連発していた1年半前の日本代表との決定的な違いだった。

しかも、いい意味でのエゴイズムを身につけた選手たちに交ざって清武のような「典型的な日本人」もいた。素晴らしく美しかった本田のゴールは、いわば、欧米と日本の美学が合体したことによって生まれたものだった。なでしこがそうだったように、男子の日本代表もいま、未知なる段階に足を踏み入れようとしている。

いままで、そんなことは考えたことはなかったし、考える日がこんなに早く来ようとも思わなかった。だが、これほどまでに素晴らしい試合を見せられてしまうと、つい考えてしまう。スペインと戦ったらどうなるのだろうか、と。

(スポーツライター)

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