先日、三浦市初声町下宮田に中古住宅の調査に出かけた。弊社の長さんが担当して商品化を検討している物件だ。
この日は、暑い日だった。
この三浦に着くまでに、会社を出て、横浜市の保土ヶ谷区、瀬谷区、旭区、川崎市の麻生区、宮前区にある中古住宅を見てきた。車の走行距離は、今日は100キロになるだろう。8物件を見てきたのだ。到着したのは午後の4時だった。
弊社の経営責任者の中さんから、京急電鉄の子会社が運営しているホテルの、日帰り風呂の利用券を貰っていたので、この風呂行きを突然思いついたのだ。
しめしめ、なかなかいい思いつきだワイ。
確か、そのホテルがあるのは城ヶ島だから、車なら10分もあれば行ける。思いついただけで、胸がワクワクした。でも、ちょっと待てよ、私以外の社員は、今頃それぞれの場所で、それぞれの仕事に精励しているんだぞ。そのことを思うと、後ろめたくなって、急にワクワク感が萎(しぼ)んでいく。でも、一たび思いついた誘惑から逃れられない。
スタッフの皆さん、たった1時間だけの休憩をさせてくださいな。諸君、許せ、と腹を決めた。
国道134号線の突き当たりに、ホテルの駐車場があって、そこに車を停め、タオル1本と利用券をもって、ホテルに向かった。土産物屋さんが並んでいる所を歩いて、その3軒目を右に入ると、視界が急に開けて全面大海原だ、ホテルまでの細い道のすぐ側まで、波が打ち寄せてきた。満ち潮だ。間近に大きい波を見ると、胸がキュンとなって足が竦(すく)む。掬(すく)われる感じだ。3・11の東日本大震災の津波で味わった恐怖が、頭の中に生きているのだろう。
ホテルの館内外には、夏休みを楽しむ家族連れや夫婦連れが、パラパラと居るだけだった。帰る準備なのか、来たところなのか。そろそろ、夏休みも終わろうとしている、そんな雰囲気が感じられた。
この風呂行きに、秘密の異性を連れ添っているとしたら、なんてインモラルな白昼夢は見ませんでした? いつまでも生臭い! 恥ずかしい限りだ。
このホテルは、三浦半島の最南端にある。晴れた日には、富士山が真正面に見えて、夕日が奇麗なんだろうな。生憎(あいにく)、今日は曇り空なのだ。このホテルには始めてきたが、私の子どもが小さい頃には、葉山にあったソニーの保養所をひと夏に何度も利用していたので、このホテルからの眺望は大体想像がつく。
受付を済まして、「男」と書かれた暖簾をくぐった。屋内用の風呂と露天風呂があって、露天風呂に1人、屋内の大浴場に1人の先客が居た。私は、迷わず露天風呂に入ったが、湯温がヌルイので、屋内の大浴場でゆっくり、時間をかけて、このひと時を楽しんだ。
湯船の横から湯が勢いよく噴射してくるところで、腰をひねりながら、水圧をあちこちに当てた。疲れた体に、心地よかった。目を瞑って、色んなことを考えた。今見てきた物件の一つ一つの個人的な所見を纏めて各担当者に、今後の仕事の進め方を詰めなければならない。
この1年間の会社の状態を振り返ってみた。大変だった。今後はどのように推移するのだろうが、必ず復活しなければならない、と思う。素晴らしい、スタッフに恵まれている。この俺は今後、何を、どうすれば? そしたら、どうなる?納得、なっとく、ナットクするまで頑張らないと、気がすまない。
心ゆくまで、時を忘れてゆっくり温(ぬく)もりをお楽しみください、と頂いたパンフレットには書いてあったが、今の私には、そこまでの余裕はない。
湯船の中に45分は居ただろう。いつまでも、サボっているわけにはいかない、スタッフのことが頭をかすめる、えいっと声をかけて、惜しみながら湯船を出た。そして、冷たい水でシャワーをしたが、熱(ほて)っていて、いつまで経っても体が冷めない。それでも、冷たい水をかけ続けた。体を洗ってないことに気付いたが、別にそんなに汚いわけではないから、まあ、ええか!
浴室を出て、扇風機の風を受けながら、体重計にのった。この半年間で6キロ痩せたことになる。体はすこぶる快調だし、食欲は衰えていない。ただ、以前程、食べる量が減っただけだから、心配はいらないと思う。
それにしても、有り難い1時間だった。