8月29日、民主党の代表選の投開票があり、決選投票で野田佳彦財務相(54)が海江田万里経済産業相(62)を破って、新代表に選ばれた。そして、30日の国会で、第95代の首相に指名された。
この代表選には海江田万里、野田佳彦、前原誠司、鹿野道彦、馬渕澄夫の5氏が立候補した。
私には、海江田氏が立候補して投票日までの、小沢一郎元幹事長との打ち合わせの内容が、マスコミから漏れ聞こえ、とても面白く思っていた。あなたがたが志向しているようには、政治は動きません。鳩山由紀夫前代表は、いっつもは何だかんだと出しゃばる癖に、今回はむっつり、小沢氏の提案を待つばかり。定見を持たない元代表なのだ。
刑事被告人で党員資格停止中の小沢氏も、失政の総括をしないまま、一旦公表した議員引退を撤回した鳩山氏も、この党には百害あって一利なしのご存在。無用の長物ってことだろうか、余計者なんだ、その理由は以下の如し。小沢グループも時間の問題で雲散するだろうし、鳩山グループは既に霧消している。
小沢氏は、自分が勝ち馬に乗るための候補者を、見つけることができなかった。早くには、野田財務相、仙石前代表代行にも話を持ちかけていた。その後、なりふり構わず探したな、と思われるのは、輿石参院議員会長や西岡参院議長に声をかけたことだ。その前には田中真紀子氏にも本気でアピローチしたと聞けば、尚更だ。西岡氏は、その後、記者に向かって候補者になるように勧められたことは事実で、その気にもなった、と詳述している。それって、嘘、と常識では思う。これらの候補者の名前を聞いただけで、小沢氏は当て馬が定まらないで、終始、周章狼狽していたことが、ありありや。
その後も、小沢氏が望む候補者を見つけられないうちに、候補者が次々に名乗り上げ、各候補者は、小沢グループからの支援欲しさに、小沢詣を始めた。
否、此の時に小沢詣が始まったわけではなく、外国人献金問題で外相を辞任した前原氏が、5月に小沢氏、最高顧問の渡辺恒三氏の誕生会に出席した時から始まっていた。
小沢グループの議員数は、他グループを圧倒して120人前後、全民主党議員の3分の1に近い。このグループは、票割れしない鉄の結束を誇る。小沢氏の声掛りで公認を受け、党のカネを貰って当選した若い議員が多いのだ。義理を欠いたら、小沢親分にこっぴどく叱られる。
全ての候補者が小沢詣のなかで、支援を求めながら、自分の考えている政策や党の運営について、説明し理解を求めた。
ところが、海江田氏の場合は、支援を求めに行ったら小沢氏に抱き込まれてしまった。小沢氏にとっては、ヘイ、カモンか、いやカモンではなく、いい鴨(かも)が網に引っかかった、ってなもんだ。こいつが党の代表ならば、俺か俺の分身が、党のカネを自由に使えて公認権も大いに奮えるワイ、しめしめ、これがオイラが支持する交換条件だ。わかったか。みくびられたものだ。今のところ、この男しかいない。そして、俺の立場は温存、復権して、次期の首相になる、とよんだ。
小沢氏は、俺たちが支持すれば、君の首相は間違いないよ、と励まし、決選投票までもつれ込まないように、1回目の投票で過半数を獲得するよう陣営に発破をかけた。
そこで、海江田氏の政治家としての拙(つたな)さが露見した。海江田氏が、小沢詣の後に今までの考えを、余りにも唐突に変節してしまったのだ。小沢氏の悪あがきに乗せられた。
これが、私には面白かった。こんな馬鹿が本気で、日本の首相になろうと思っていることに、笑止千万だった、その後、悲しくなった。
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この海江田氏の摩訶不思議な言動を、20110828の朝日新聞・社説/「代表選告示 海江田さん説明不足だ」でとりあげた。以下、この社説の一部を丸々転載させていただいた。
民主党代表選が告示された。ここは候補者同士が政策論争の真剣勝負をしなければならない。
その際に、とりわけ立ち位置を問われるのは、菅内閣の重要閣僚でありながら、菅路線を否定する小沢氏らのグループに推される海江田氏だ。
菅内閣は東日本大震災の復興財源を賄う臨時増税と、社会保障を維持するための消費税率の引き上げの方針を決めた。その内閣の一員だった海江田氏は共同責任を負っている。にもかかわらず、公約に「増税なき復興」や消費増税の先送りを掲げているのは、どうしたことか。
政府・与党で厳しい議論を重ねて、やっとまとめた方針を白紙に戻すつもりなのだろうか。
政権公約の見直しについても、しかりである。
海江田氏は、菅政権で「マニフェストが弊履(へいり)のごとく捨てられている」と批判する。それでは「子ども手当て」の見直しなどで、自民、公明両党と交わした3党合意を反古(ほご)にしてしまいたいのだろうか。
そんな対応をすれば、両党の協力を得られず、何より急がれる復興のための第3次補正予算の成立に支障がきたすのは明らかだ。
エネルギー政策でも、海江田氏はきのうになって突然、「40年以内に原発ゼロをめざす」と表明した。菅首相の「脱原発」路線に疑問を呈していたのに、なぜ一変したのだろうか。
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上の社説では触れていなかったが、海江田氏が経産相に就任したときには、環太平洋経済連携協定(TPP)に、菅首相ともども積極的に参加しなくてはと言っていた。菅首相は第3の開国だ、と述べていた。ところが、どっこい、小沢氏の顔色をうかがってからは、慎重な姿勢をとりだした。これも変節の一部だ。
結果、1回目では、海江田氏は143票で、2位野田氏は102票で(3位前原氏、4位鹿野52票、5位馬渕24票)、1位になったものの、決選投票では、野田氏に圧倒された。反小沢票の大半が、野田氏側にまわったのだろう。
話は変わりますが、代表選の投票を前にしての各候補者の演説で、野田氏の演説の巧さが評価されたが、私には、鹿野氏の昭和の時代を髣髴させる復古調の演説が気を引いた。懐かしかった。このような演説をする人も、そろそろいなくなるのだろう。