2011年12月3日土曜日

朝日の世情記事、4編

現在の世情についての、朝日新聞の記事だ。切り抜きにしておいたものをここにファイルした。なかなか、いい記事なので、読んで欲しいと思った。

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①資本主義の「限界」

20111201

経済気象台

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米国や欧州で、若者が格差是正を求めるデモを繰り広げている。

格差を生む源となっているのは、資本主義社会だ。経済成長で国民の生活水準は高まった反面、もともと社会的、経済的格差を生む構造もはらんでいた。

若者たちの叫びは、従来の資本主義の「限界」を警告しているように思えてならない。

考えてみると、これまでの欧米の経済成長は、実は「幻影」だったのではないか。米国では、多くの中間層がローンで住宅を手に入れた。所得の低いサブプライム層も証券化でその恩恵にあずかった。年収の10倍もの住宅ローンは、年収増と同じ心理効果をもたらした。

だが、このからくりには確実な雇用と不動産価額の上昇という条件が必要だった。リーマン・ショックで住宅バブルは崩壊した。

欧州連合はユーロの誕生で経済力が高まり、急成長を遂げた。だが、内実はベルリンの壁崩壊で生まれた統一ドイツの勢力拡大に、他国が歯止めをかけようとした政治の産物だった。2001年には放漫財政のギリシャが加わり、堅実財政のドイツと同じ通貨を使うようになった。矛盾が今、欧州債務危機という形で噴き出している。

「幻影」に気づいた欧米の国民は、身の丈に合わない借金生活から身を引き始めた。超高齢化が進む日本の国民は老後の不安もあるうえに元々、預貯金に熱心だ。

借金をやめた国民の国では需要は拡大しづらい。借金まみれの政府も需要を生み出しにくい。低金利にしようが、通貨供給を増やそうが、効果は薄い。

経済成長もなければ、インフレもない。これが新しい資本主義社会だ。個人も企業も政府も、この構造の認識が必要だ。

 

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20111201

私の視点

②死刑/執行停止して徹底議論を

英上院議員=アルフレッド・ダブス

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私が死刑反対を訴える主な理由は四つある。まず高度な規範を持つべき国家が人命を奪うのは正しいことではない。次に誤審の可能性が常にある。死刑執行後に無実がわかっても元に戻れない。1949年にロンドンで起きた妻子殺人事件は夫の死刑執行後に真犯人が判明し、英国が死刑廃止に向かうきっかけになった。

三つ目として、だれにも更生機会は与えられるべきである。英国人女性リンゼイ・アン・ホーカーさん殺人事件で無期懲役を言い渡した判決が「(被告に)更生の可能性がないとはいえない」と述べたのは全く正しい。

最後に死刑廃止は文明社会の潮流だ。2010年12月に国連総会で採択された死刑執行停止決議は賛成109カ国、反対41カ国、棄権35カ国。予断は許さないが、中東の民主化「アラブの春」で賛成国が増える可能性がある。独裁からの脱却と民主化に伴って死刑が廃止される傾向があるからだ。

死刑が犯罪を抑制する確たる証拠はない。全てではないが死刑残置国は 概して殺人事件が多い。国が人を殺すという事実が、人命に対する感覚に影響を与えている可能性はある。死刑に頼らなくても、刑事司法制度を整備し、犯罪を断固許さない姿勢を政治が示せば安全な社会は実現可能だ。

死刑廃止の道に踏み出す第一歩として、モラトリアム(刑の執行停止)が検討に値する。一定の時間をかけて、犯罪が増えたかどうか検証しつつ、徹底的に議論すれば良い。死刑制度に関する情報がより一般に公開されれば、国民も議論に参加できるだろう。

英国にも「目には目を、歯には歯を」といった応報的な考え方がかってはあった。下院を中心とした議論を経て(65年に)死刑執行を停止した。その後も法律としては海賊行為などの罪に死刑が残った。正式に廃止されたのはずいぶん後のことだ。

ただ、私は死刑の存否を国民投票にかけるのは賛成しない。意見が沸騰し、落ち着いた議論ができなくなる。十分な情報も議論の積み重ねもなく、いきなり死刑の賛否を問われれば人は賛成するかもしれないが、議論を経ればより複雑な意見を示すはずだ。議論は政治家が先導すべきだと考える。

近年、日本の法相が「国民的な議論が必要」という考えを示していることに期待したい。私は多国の制度を非難したり、指図したりするつもりはない。英国の経験や英国政府が乗り越えてきた課題を日本と分かち合いたい。

死刑廃止に関する英国超党派議員団のメンバー。

(構成・沢村 亙)

 

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20111201

社説余滴

③民主主義のもろさ、危うさ

政治社説担当・松下秀雄

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欧州の政府債務危機を眺めて、うなってしまった。危機そのものよりも、民主主義のもろさについてである。まず、イタリアとギリシャで、政治家以外から首相を選んだことだ。危機を乗り越えるには歳出を切りつめ、増税するしかない。厳しい役回りを、落選を恐れる政治家たちは経済専門家に丸投げした。

ギリシャでは国民投票で民意を問おうとして、かえって危機を深めた。緊縮を強いられるのが嫌だからと、国民が各国からの支援を拒めば、自分たちの経済だけではなく、世界中を揺るがしかねない。もし、国民がそれを選択したら?不安が広がり、他国の国債の信用まで損なわれた。

民主主義は、有権者に痛みを強いる決断を迅速に下すのが苦手だ。それは、民主主義に権力の横暴を抑えるブレーキが組み込まれているからで、当然のことだ。

ただ、痛みから逃げ続ければ、より深刻な事態を招く場合でも、やはりブレーキが働く。この弱点を克服できないから、非議員の首相など「民主度」の高くない態勢を敷くほかなかったのだろう。

翻って日本政治をみると、民主主義の弱点が、まさに遺憾なく発揮されている。

いま消費増税の必要性が叫ばれるのは、高齢者が増えるのに、支える世代が減っていくからだ。このままでは国の借金の風船は破裂し、大増税や急激なインフレを招きかねない。そうなる前に負担を分かち合おうというのである。

風船を破裂させて、ひともうけを狙うハゲタカがうごめく時代、いつ日本が標的になるかわからない。

なのに、増税反対派はもちろん、増税を掲げる自民党までもが、「民主党は任期中は増税しないと公約したではないか」と歩み寄らない。

税に限らず、最近の政治は衆参ねじれのもとで、ブレーキが利きすぎ動かない。

停滞へのいら立ちは世にあふれている。大阪ダブル選で「橋下旋風」が起きた理由の一つは、それかもしれない。

ただ、いらだちが極端に高じるのは危うい。動かぬ政治より ましだと、ブレーキの利かない政治を生み出すことのないよう、注意が必要だ。

歴史をひもとけば、政治が争うばかりで動かなくなったとき、人々は民主主義や政党政治に見切りをつけた。日本では軍部が台頭し、ドイツはナチスの独裁を許した。

いま必要なのは、適度に動く民主政治なのだ。

 

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20111125

記者有論

④リベリア大統領選 ノーベル賞と「金権」の溝

ナイロビ支局長・杉山 正

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ノーベル賞のイメージが吹っ飛ぶ場面に出くわした。

西アフリカ・リベリアで今月、大統領選挙を取材した時のことだ。今年の平和賞受賞が決まった現職エレン・サーリーフさん(73)の故郷で本人を待っていると、彼女は多くの住民に囲まれながら現れた。一緒に居た陣営関係者の手には、ピ札の50リベリアドル(約50円)の束が握られている。何をするのかと見ていると、近づく住民に1,2枚ずつ渡して歩いていた。

日本で事件記者を長くやった。っしかし、「買収」の現場を目撃したのは初めてだ。

聞けば、リベリアでは選挙に際し、候補者が地方に行っては、現金や食料を渡して支持を求めるのはよくあること。記者が買収され提灯記事を書くのも一般的だという。だが、ノーベル賞をもらう人まで「金権選挙」に染まっているとはーー。本人に会って、直接聞いた。

「将来的には禁止すべき風習だ」。サーリーフさんも非を認めた。だが、「今やめることはできない」とも。失業率は8割を超え、1人当たりの国民総所得は約170米ドル(約1万7千円。選挙期間中、人々には施しへの期待が高まってしまうのだという。

サーリーフさんは2006年、大統領に就任した。03年まで14年続いた内戦で27万人が死に、荒廃を極めていた。国の立て直しとともに、女性の社会進出などさまざまな改革を推し進めた。

米国での生活が長く、国連開発計画などで活躍した人だ。しかし、米国流をそのまま持ち込んでも立ち行かないことを熟知しているのだろう。急激な変化は反発を招きかねない。サーリーフさんは、汚職の役人らの刑事訴追を避け、決選投票前には、内戦中の拷問で悪名高い元武装勢力指導者まで陣営に引き込んで物議を醸した。

いずれも、国家再建を果たすための必要悪ということなのだろう。その手腕にはしたたかさや、しなやかさとともに、リベリアが抱える問題の闇の深さがうかがえる。

アフリカには、内戦などから立ち直れない「失敗国家」と呼ばれる国が多い。リベリアもそこから抜け出す戦いを始めたばかりだ。この挑戦の成否はアフリカ各国にも影響する。ノーベル賞は、サーリーフさんに対してだけではなく、アフリカの将来に希望を込めて贈られるのだと私は考えている。真のモデルになりうるよう彼女の2期目に期待したい。