いつも朝日新聞の天声人語を読んでは、勉強させられている。
今回の文章には、私の出た学校の創立者が登場してきたので、ひときわ注目して読んだ。内容が実に面白かったが、時節柄、やはり、お金の話三昧(ざんまい)になってしまったようだ。
野田佳彦首相は、政府・与党がまとめつつある社会保障と税の一体改革実行への前提として、増税へ向かおうとしている。少子高齢化がますます進む中で、財政立て直しは待ったなしの状況にある。このままでは、国家が破綻すると言われている。
欧州連合(EU)では、ギリシャからイタリア、スペイン、他にも幾つかの国が、国家財政の危機に瀕死寸前。あの世界の最強国家アメリカでさえ、もたもたしているようだ。ドイツとフランスの首脳が、政府債務(借金)の解決に向けて、各国の財政規律を高め、金融市場の不安を取り除くために、EUの基本条約の改正を検討しだした。
EU基本条約では、財政について各国の財政赤字が国内総生産(GDP)の3%を超えた場合、改善がないときにはEUが是正を勧告できると規定しているが、今回、危機に瀕している国はこの3%に抑える規定を破っていた。
改正案はまだ明らかにはされてはいないが、EUの欧州委員会が各国の財政を監視したり、予算編成に介入したり、また規則を破った国を無条件で制裁できるようにする。EUの司法(最高)裁判所に各国に借金を減らすように命じることができる権限を与える、とか。
このようにEUでは検討されているが、これをこのまま、日本でも見習ってはどうだろうか。極東の借金大国だ。財政の最高規律として国の赤字を、国民総生産の何%以上は超えないようにするとか、現在の状況を直視するならば何%まで減らすとか、国債発行の上限を規定する。EUでは、この規定を憲法に既に織り込んでいるとか、織り込もうとしているとか、そんな国があるように聞いた。
でも国によっては、そんな厳しい基準を守れないと思う国だって現れるだろう。リードするドイツやフランスとの間に相互不信が広がりかねない。EUから離脱したいと思う国が発生したら、それはEUの弱体化につながる。
私は、小さな会社の経営者の一人だ。業種、業態によってそれぞれに違いはあるのだろうが、弊社の財務諸表においても流用できるな思っている。遅くはない。
ふと、来年の初詣は鎌倉の銭洗弁天で、お金でも洗ってこよう、と思いついた。当然、自宅からは願をかけながら、歩いて行く予定だ。孫も参加するという。
20111207
天声人語
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短日にして多忙。慌ただしさの極まる師走が、1872年(明治5年)はたった2日で終わった。旧暦が新暦に改められ、12月3日が明治6年の1月1日になった。前にも書いたが、急なお触れには人々はてんわやんわだったそうだ。
唐突な改暦にはわけがあった。大隈重信の明かすところでは、新政府の財政は火の車だった。だが明治6年には閏月(うるうづき)があり、官吏の月給を13回払うことになる。太陽暦なら12回ですむと気づき、慌てて変えたのだという。
2日だけだった12月分も切り捨てたそうだから、都合2か月分を節約した。巧みな歳出カットと言うべきか。いささか乱暴だが、知恵は出るものだ。
ひるがえって今の国会である。復興財源にあてるため国家公務員給与を減らす法案の成立が、どうも難しいらしい。いまの時代に鶴の一声とはいかない。それにしても、国会議員の定数や歳費も含めて、「身を削る決意」が伝わってこない。
震災後、月50万円減らしていた国会議員の歳費は、半年で元に戻った。明後日のボーナス291万円は去年より9万円多い。先の小紙世論調査で消費増税に反対した4割強は、まず身を切れという民意とも取れよう。首相自ら語った「春風(しゅんぷう)を以(もっ)て人に接し、秋霜(しゅうそう)を以て自ら粛(つつし)む」を、よもや忘れていませんね、と。
そういえば「血税」の語源も明治5年にさかのぼる。もとは税ではなく兵役義務をそう称した。時をへて意味は変わっても重荷は変わらない。永田町が春風に座していては、賛意は遠い。