読売新聞は20121011日朝刊1面で、「IPS細胞(人工多能性幹細胞)から心筋を作り、患者に移植した」と最初に報じた。
国内では数日前に山中伸弥・京大教授がノーベル生理学・医学賞を授賞したニュースで盛り上がっていた矢先の出来事だ。
ところが、その後、読売新聞は、この移植をしたとする森口尚史氏の主張に疑義が相次いでいる問題で、その発言に基づいた一連の記事は、誤報だったことを認め、おわびと検証記事を、13日付け朝刊に掲載した、と20121013の朝日新聞の記事で知った。
山中伸弥教授は「此の段階で、十分な動物実験なしでいきなり人間というのはあり得ない」と話している。
もう一つ、別件。東京医科歯科大学は12日夕に記者会見を開いて、今回の臨床応用とは別に、森口氏が同大と、IPS細胞を使ってC型肝炎の効果的な治療薬を見つけた、とする2010年5月の読売新聞の記事についても、「東京医科歯科大学で実験及び研究が行われた事実はない」と発表した。こんなところでも、読売は汚点を残している。
この不思議な渦中の人物、森口氏のことについては三面記事的に十分興味を引くが、ここは、そんなショウモナイ人物のことに触れようとしていない。
ここで暴(あば)かれたのは、読売新聞の取材に対する姿勢だ。裏づけ調査をしないまま、上の2件以外にも6件を記事にした。
森口氏自らが売り込んできて記事化を督促、それを鵜呑みにして記事にしたのが読売、共同通信、産経、内容に信頼性が薄く、調査が必要として記事化しなかったのが、朝日、毎日、日経、時事通信だった。
こんな失策を重ねている読売に、尚、鞭(む)を打ちたい。特別、読売を嫌っているわけではないが、下の2件についての調査の結果を報道して欲しい。
それは、読売巨人軍の原監督が、2006年、過去の女性関係を理由に元暴力団員ら2人から1億円を要求され支払っていた問題についての詳細な報道がないことだ。当初、暴力団ではなかったと主張しただけで、疑惑に十分応えていない。
もう一つは「巨人、6選手に破格の高額契約金」、「球界申し合わせ超過」、「複数年に分け支払い」「上原・二岡両選手の覚書判明」の見出して、朝日新聞が報道したことについても調査後の報道がない。
マスコミは民主主義の第四の勢力と言われている。日本で一番売れている日刊紙は読売新聞社だ。読売新聞は報道機関のなかでも最強だ、身内(子会社)のこと故に、毅然とした姿勢を見せて欲しい。納得する記事を書いて欲しい。
読売に君臨するあのドンの存在が気になる。まさか、それが原因で組織全体が疲弊しちまったのではないだろうか。