2013年5月10日金曜日

それは、ドクダミの花だった

どくだみの葉

昨日20130502は、商品開発中の藤沢の中古住宅の家の周りの除草をした。ゴールデンウィークの始まる少し前にギックリ腰になって、1週間ばかりは現場の作業はできなかった。私、生まれは貧乏な百姓の小倅(こせがれ)、草むしりや樹木の剪定や伐採になると俄然、気合が入る。

この物件は長く空家だったので、ドクダミやスギナが繁茂していた。そのどちらの草も私には悩ましい草で、冬には地上の茎と葉は枯れるのだが、地下茎は地中深く横走、網目状に張り巡らしていて、春にはその地下茎から芽を出す、多年草だ。表面の茎と葉を引っ張って、鍬で土を起こしてできるだけ深いところまで地下茎を取ろうとしても、どこまでもどこまでも伸びていて、完全に全てを引き抜くことはできずに、途中で切れてしまう。

私たちの会社の周りの空き地にもドクダミは生えていて、地上の葉と茎を取るだけにして、地下茎のことは諦めている。この作業も、私の担当の仕事になっている。

今日は久しぶりの肉体労働、腰の痛みは大分良くなって、その気楽さが増々仕事に熱が入る。腰痛が全く消えたわけではないが、快方、これだけ働けるのが嬉しいのだ。暑くて汗がシャツに滲んだ。

生薬としての効果は色々あるようだが、生家では、子どもの私のために、このドクダミを虫下しに祖母が煎じて飲ましてくれた。十薬(じゅうやく)とも呼んでいた。名前の由来は、特有の臭いが毒を溜めているようで、毒溜め=ドクダミになったようだ。日本大百科全書には、十薬の呼び名は、ドクダミで馬を飼育すると、10種の薬に相当する効果があることから生まれたと言われている、とあった。

そして夕方、横浜駅近くの居酒屋で、40余年前、学校を卒業して初めて勤めた会社の同期入社の友人と合流。鶏肉が串にくっついて、歯を立てて噛み切ってやっとのことで、舌に乗る、それからおもむろにヤ・キ・ト・リを味わった。以前によく通った五番街の居酒屋だ。冷奴にお新香。厚揚げに焼き魚のホッケ。オーダーする品は相変わらずだ。料金は美味くないだけに安い、理に適っている。気を許した間柄、ゆらゆら泥酔までに時間はかかった。ぬる澗で、鱈腹(たらふく)飲んで、自分のアパートに帰った。

否、そんなに順調にアパートに辿り着いたわけではない。酔っ払って乗り過ごし、終点の駅で駅員さんに起こされてのUターン帰還。アパートに着いたのは、丑三つ時ではなく一つ時、深夜の2時近くになっていた。何処かでロスタイムがあったのだろう、何故、こんなに遅くなったのか解らない。

2階の私の室に上る鉄階段に踏み込んだその足元、常夜灯の弱い明かりに何やら白い小さな花が見えたので、足をコンクリートのたたきに戻し、階段の下を覗きこんで鷲掴みにしてむしりとった。そのまま握りしめて玄関を開け、その花を花瓶に差し込んで、寝たらしい。着の身着のまま。この時期、近所の農道を散歩をしても、やたら花を摘みたくなる。

今朝、酒の残っている頭をこつこつ拳(こぶし)で叩きながら、血走った目で花瓶を凝視、その花がドクダミだったことに驚いた。なんと、こともあろうに、私が日頃悪戦苦闘しているドクダミだったとは。酔っ払っていたのだ。

洗面化粧台を前に、歯ブラシを持つ右手からは微(かす)かなドクダミの臭いがした。