2013年5月7日火曜日

96条改定、反対54%賛成38%

改憲手続き先行論、これって可笑しくない?

20130502、憲法記念日を前に、朝日新聞が全国郵送世論調査を行った結果の内容が記事になっていた。憲法96条を変え、改憲の提案に必要な衆参各院の議員の賛成を3分の2以上から過半数に緩めようとしている安倍自民党の主張に、反対が54%で賛成の38%を上回ったとのことだ。9条についても「変えない方がよい」が52%で、「変える方がよい」の39%よりも多かった。

私は96条の変更反対、護憲派だ。

絶対、改憲の垣根は高い方がいい。

安倍晋三首相の光と闇。光の部分は、アベノミクスとやらで内閣支持率は空前の高支持率を得ていることだ。これはこれでで大いに結構なことだ。政治主導、関係省庁で議論を尽くした施策に邁進しようとする意気込みが、長年のデノミスパイラル状態から抜け出したいと望んでいる国民に支持されている。目先の成果は兎も角、実のある成果はもう少し時間がかかりそうだ。

が、首相の闇の部分が怖いのだ。この闇というのは、あくまでも私にとっての闇、個人的な見解で批判されることも重々理解している。平成24年4月27日に発表した自民党の(日本国憲法改正草案)の概要に従って、改憲に突き進もうとしているが、その本気が怖い。内容については、自民党が自党のホームページで、詳しくQ&A方式でその意義を説明しているので、その詳細を確認してもらえればいい。

戦後レジームからの脱却だとか言って、生い立ちに疑問を持つ日本国憲法の全面改正、戦争責任を明確に表示した村山談話には、基本的にその精神を引き継ぐと言いながら、A級戦犯に対しては国内法的には犯罪人ではない、と発言。また東京裁判においては、第一政権時代には、「受諾して異議を唱える立場にない」で終わっていたが、今回政権についてからは、「大戦の総括は日本自身の手でなく、いわば連合国側の勝者の判断によって断罪がなされた」と述べ、東京裁判に懐疑的な見方を示した。

それに、河野談話の慰安婦問題は元々存在しないとする立場をとってきた。米国での慰安婦問題批判を受け、ブッシュ大統領には「人間として、首相として、心から同情している。申し訳なかった」と言ったとか言わなかったとか。だが、そんな煮え切らない日本の首相の態度に業を煮やしたのだろう、米下院で慰安婦非難決議が採択された。

戦後生まれの多くの政治家らが先の世界大戦に反省の意識が薄く、対戦国に配慮なく強い姿勢、これらの動きに私はどうしても憂慮、心配する。侵略ではなく、侵攻だったとか。かっての自民党にはハト派と言われるグループがいた。強く反戦・護憲を口にする議員が多かった。印象に残っている政治家は、あのアホな絆創膏農林大臣の父、赤城宗徳議員だ。三木武雄、宮沢喜一。軟弱議員後藤田正純の父、後藤田正晴だ。最近まで議員だった野中広務。この人たちは反戦・護憲の筋金入りだった。

このような安倍首相が率いる自民党や日本維新の会が、現実にどのように条文化しようとしているのか。自称・暴走老人の石原慎太郎共同代表は何を考えているのか?注意しなければいけない、老怪な男だ。

20130504の朝日新聞に、小林節・慶大教授が96条改正を自民党が中心になって進めようとしていることについて話したことを記事にしていた。聞き手は石松恒さんだ。私は教授の意見に全く首肯した。なるほどと思うけれど、そうではないと思う人もいるようなので、ここは、教授の話をここに再現して、よく考えることにしましょ。

以下、新聞記事のまま。

私は9条改正を訴える改憲論者だ。自民党が憲法改正草案を出したことは評価したい。たたき台がないと議論にならない。だが、党で決めたのなら、その内容で(改正の発議に必要な衆参両院で総議員)の「3分の2以上」を形成する努力をすべきだ。改憲政党と言いながら、長年改正を迂回し解釈改憲でごまかしてきた責任は自民党にある。

安倍首相は、愛国の義務などと言って国民に受け入れられないと思うと、96条を改正して「過半数」で改憲できるようにしようとしている。権力参加に関心のある日本維新の会を利用し、ひとたび改憲のハードルを下げれば、あとは過半数で押し切れる。「中身では意見が割れるが、手続きを変えるだけなら3分の2が集まる。だから96条を変えよう」という発想だ。

これは憲法の危機だ。権力者は常に堕落する危険があり、歴史の曲がり角で国民が深く納得した憲法で権力を抑えるというのが立憲主義だ。だから憲法は簡単に改正できないようになっている。日本国憲法は世界一改正が難しいなどと言われるが、米国では(上下各院の3分の2以上の賛成と4分の3以上の州議会の承認が必要で)改正手続きがより厳しい。それでも日本国憲法ができた以降でも6回改正している。

自分たちが説得力のある改革案を提示できず、維新の存在を頼りに憲法を破壊しようとしている。改憲のハードルを「過半数」に下げれば、これは一般の法律と同じ扱いになる。憲法を憲法でなくすこと。「3分の2以上で国会が発議し、国民投票にかける」というのが世界の標準。私の知る限り、先進国で憲法改正をしやすくするために改正手続きを変えた国はない。

権力者の側が「不自由だから」と憲法を変えようとする発想自体が間違いだ。立憲主義や「法の支配」を知らな過ぎる。地道に正攻法で論じるべきだきょうどう96条から改正というのは、改憲への「裏入学」で邪道だ。