2010年11月23日火曜日

「はやぶさ」 大金星

はやぶさが持ち帰った物質は、正にイトカワで採取したものだった。これに関する朝日新聞の20101116の夕刊と17日の朝刊の記事をここに転載させていただいた。社説も転載した。記事の内容に重複することがあるが、それは、それ。記事を保存することに専念した。

MX-3500FN_20101123_103817_001 MX-3500FN_20101123_104219_001

MX-3500FN_20101123_104459_001

(豪州の砂漠地帯に落ちていた回収カプセル=宇宙機構提供)

小宇宙探査機「はやぶさ」は、20030509に打ち上げられ、2005の夏イトカワに到着、60億キロの旅を終えて、今年20100613に地球に還ってきた。イトカワでは移動しながら、岩石質のものを採取してくる予定だったのですが、故障があって、十分な採取はできなかったようだが、それでも1500個の微粒子を持ち還ってきた。一時は通信が途絶えたり、イオンエンジンにトラブルが発生したりしながらも、堂々と帰還した。大気圏に再突入の際、はやぶさは赤く燃えて消滅したが、回収カプセルはオーストラリアにパラシュートで落下、回収された。一仕事を終えたはやぶさが赤く燃えて消滅した光景は多くの人を感動させた。

今の世の中、リストラにもめげず、不況風にも耐えながら頑張っている、ちょうど私の年頃の人たちには、このはやぶさの健闘に涙ながらに声援を送り、その奮闘する姿が我がごとのように思われた。まるで、同志だと。元気をもらい、どれほど勇気付けられたことか。

これから書き込もうとしている内容は、不確かな情報によるもので、客観的に調べたわけではないので、注意して読んで欲しい。間違っていたならば、即訂正したいのでお気づきの方は早い目に教えてください。それはこんなことです。二つのエンジンがあって、もしかどちらかのエンジンが壊れたならばと心配した研究員は二つのエンジンに連結する導線を配線しておいたらしい。そこで、案の定二つのエンジンが停止したのですが、その導線が二つのエンジンの壊れていないところを稼動させ、一つのエンジンとして発動させることができたらしい。この導線を結びつけたのは、当初からの設計に基づいて行なわれたのではなく、研究員がその場で思いついたらしい。それも故障して初めてそのように仕組んでいたことが判明したらしい。このことも、運がいいだけではすまされない。研究員のすばらしい叡智だった。このことは、何かで聞き取ったような気がするのです。

MX-3500FN_20101123_104642_001

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

はやぶさ 大金星

イトカワ粒子、太陽系の起源照らす

数々のトラブルを克服して60億キロの旅を成し遂げた探査機「はやぶさ」が持ち帰ったカプセルに、小惑星「イトカワ」の微粒子が入っていた。初の成果に世界の研究者も分析結果に注目する。はやぶさが使った新型のイオンエンジンは燃費がよく、耐久性も裏づけされた。さらに応用が期待され開発したNECは新たな市場開拓をねらう。

カプセル内から見つかった約1500個の微粒子。イトカワのものと判断できたのは、多くを占めたかんらん石と輝石の成分だった。

これらの鉱物に含まれる鉄の割合は、地球上にある同種の鉱物の5倍もあった。差が大きく、地球で混入した可能性が否定された。はやぶさが観測したイトカワの表面物質の成分とも一致した。

最終的な決め手となったのは、微粒子の中に硫化鉄の一種が見つかったこと。隕石(いんせき)は普通にあるが、地表には珍しい。彗星(すいせい)や隕石に詳しく分析に加わった東北大の中村智樹准教授は「この結晶が見えたとき、心の中でガッツポーズした」と話す。

微粒子は今後、兵庫県にある大型放射光施設「スプリング8」や米航空宇宙局(NASA)など、国内外の機関に配られ、詳しく分析に入る。

わずか0,01ミリほどの粒子を薄くスライスして結晶構造を顕微鏡で観察したり、スプリング8で3次元構造を調べたり、宇宙線などによって結晶が変化する「宇宙線化」も見えそうで、宇宙線にさらされた期間、つまりイトカワの年齢が推定できる。小天体の衝突など、衝撃を受けた経歴などもわかる可能性がある。微粒子を蒸発させたガスなどを分析すれば、イトカワはどれだけ熱を受けたかがわかる。

イトカワは太陽が誕生したころにできた姿をとどめている「太陽系の化石」のような存在。イトカワがどんな時期にどうやってできたか。太陽系の成り立ちの解明にもつながると期待されている。(東山正宜)

ーーーーーーー

日の丸エンジンに脚光

NEC米大手と新型開発

はやぶさは、新型のイオンエンジンの性能や、内臓のコンピューターで状況を判断して着陸する技術などの確認のために打ち上げられた。

イオンエンジンは、ロケットのように燃料を燃やすのではなく、電気の力で進む高効率のエンジン。NECが開発した。推進力は弱いが、燃費がいい。大型の太陽電池と組み合わせることで、原子力電池を持たない日本でも、木星など遠い場所の探査ができるようになると期待されている。

耐久性に難があった。宇宙機構宇宙科学研究所の国中均教授らが新たなエンジンを開発。小惑星を往復して技術を裏付けることになったが、はやぶさにトラブルが相次ぎ、帰還が3年延びたことで、逆にイオンエンジンの耐久性が示された。

NECは16日、人工衛星のエンジン製造で世界首位の米エアロジェットと提携し、新エンジンの共同開発に着手したことを明らかにした。はやぶさ用に開発したイオンエンジンを、ほかの人工衛星でも使えるように見直すとともに、推進力も20%向上させる。衛星ビジネスは実績が次の受注を大きく左右する。エアロジェットはNECへの納入で高い実績がある。NECは今年度からの3年間で累計20億円の売上をめざす方針だ。

はやぶさの微粒子がイトカワのものだったことを受け、NECの遠藤信博社長は「日本の技術力の高さが示された」とコメントした。(野村周)

MX-3500FN_20101123_110241_001

はやぶさ 挑戦の系譜

探査機「はやぶさ」が持ち帰った微粒子は、小惑星「イトカワ」のものだった。地球外の天体に着陸して試料を採取したのは米アポロ計画や旧ソ連のルナ計画以来、微粒子は国内外の研究機関に配られ、詳細な分析に入る。一方、宇宙航空研究開発機構は今回の成功を追い風に、後継機「はやぶさ2」の予算化に期待をかける。

はやぶさ計画で、日本は科学的成果だけでなく、新型エンジンや探査機が自ら考えて航行する技術も得られた。カプセルを大気圏に再突入させた耐熱カバーの技術は、国際宇宙ステーションから試料を持ち帰る補給船や、将来の有人宇宙船の開発につながると期待される。

成果を踏まえ、宇宙機構は、後継計画の「はやぶさ2」で、生命の起源につながる炭素など有機物の多い小惑星を目指す、表面の砂の採取だけでなく、はやぶさができなかった内部の試料の採取にも挑む。もしアミノ酸が見つかれば、生命の起源にも迫れそうだ。

打ち上げ目標は2014年。目標としている小惑星の軌道から、15年までに打ち上げられないと、地球に近づく次のチャンスは10年後になる、と宇宙機構は訴える。

文部科学省は来年度予算の概算要求で、開発費148億円の一部を「元気な日本復活特別枠」で要望した。現在、政策コンテストで審議の渦中だ。18日には、事業仕分け第3弾で宇宙開発予算も取り上げられる。

そんなさなかとあって、成果を高木義明文科相みずから記者発表した。宇宙機構の研究者らは「この時期になったのはたまたま」と強調するが、パフォーマンスではないかとの質問が相次いだ。国民的人気と世界初の成果を背景に「はやぶさ2」の優先順位は来月初めに決まる (東山正宜)

ーーーーーーーーーーーーーーーー

はやぶさ試料

生命の卵あるかな

アミノ酸の分析が可能 大粒子50~60個

電子顕微鏡を使った測定はまだだが、イトカワの粒子の可能性が高い。すでに見つかった約1500個の微粒子の10倍の大きさで、わずかしか入っていない成分も検出しやすく、アミノ酸を作る炭素や有機物を調べるのに、十分な大きさという。

アミノ酸は、地球に落ちた隕石や米航空宇宙局(NASA)の探査機が接近した彗星でも検出された。イトカワで見つかれば、太陽系の至る所に生命の卵があることになり、火星の地下や、地底に海がある木星の衛星に微生物がいる期待が広がる。宇宙機構の藤村彰夫教授は「大きいものは貴重で人類の宝。どう分析するか、1500個の微粒子とは別に検討した」と話した、〈東山正宜)

ーーーーーーーーーーーーーーーー

20101118 朝日新聞の社説

イトカワの砂

あっぱれを、次の宇宙に

日本の小宇宙探査機「はやぶさ」が持ち帰った微粒子が、小惑星イトカワのものであることが確認された。

月より遠い天体に着陸し、採取した物質を人類が手にするのは初めてのことだ。宇宙探査の歴史に残る快挙といっていい。

イトカワまでの距離は、地球から太陽までの距離の2倍に当たる約3億キロもあった。はるか遠来の使者は何を語ってくれるだろうか。

小惑星は45億年前に太陽系が誕生したときの名残をとどめているとされ、太陽系の化石ともいわれる天体だ。

微粒子はこれから、日本国内だけでなく世界中の研究者に分配されて詳しく分析される。イトカワの生い立ちはもちろん、それを通して太陽系の起源に迫る成果を期待したい。

今回、はやぶさのカプセルから見つかったのは細かな砂のようなもので、0,01ミリ以下の微粒子約1500個に加え、やや大きいものもあった。

弾丸を発射してイトカワの表面の物質を飛ばす装置は動かなかったが、着陸の衝撃で舞い上がった砂粒がカプセルにうまく入ってくれたようだ。

目には見えない物質を分析チームの研究者がていねいに集めて分析した。鉱物の組成は地球の物質と異なって隕石に似ており、イトカワの観測から予想された成分とも一致することを確かめた。量はごくわずかだが、最新の装置を使えば、ほぼ予定通りの分析ができそうという。

道のり60億キロに及ぶ旅の途中で交信が途切れ、エンジンも故障した。南天を赤く燃やした、この6月のはやぶさの奇跡的な帰還は記憶に新しい。

プロジェクトを率いた宇宙航空研究開発機構の川口淳一郎教授が「帰ってきただけでも夢のようだったのに、さらにその上」というように、ちっぽけな「はやぶさ君」は今度もまた、うれしい方へ予想を裏切ってくれた。「あっぱれ」というしかない。

はやぶさの構想は四半世紀前、若い研究者の挑戦から始まった。計画の着手から15年かかった。川口さんは更に「宇宙科学研究所として40年以上に及ぶ積み重ねがあってこそです」という。加えて、野心的な目標と、高い技術力、研究者たちの献身的な努力が「オンリーワン」の成果を生んだ。

野心的な計画は、若者たちにとって多くを学ぶ場にもなったことだろう。だが、アジア諸国が研究に力を入れる今、日本の科学は陰りも言われる。

私たちはなぜ、自然科学の探求を続けるのか。すぐに実利に結びつくわけではないが、知を求める不断の情熱が人類を進歩させてきたことは疑いない。時代に応じた予算のバランスをとりつつ、若者が研究に打ち込み、存分に独創性を発揮できるような研究環境を整えていく必要がある。